ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP028

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正体を明かす

「ナイスシュート、クレハナ!」
 さわやかな笑顔のカズマが、大きく手を振りハイタッチを要求している。

「アホ。一馬はゼッテー、そんなコトしねェよ」
「ガハッ!?」
 紅華はカズマの溝落ちに、軽くパンチを入れて通り過ぎた。

「イッテー。それにしてもカズマは、随分と消極的なヤツなんだな」
 ロランたち蒼いビブスのチームが、2点を取って有利な状況のままホイッスルが鳴る。
ハーフタイムになって18人の選手たちが、荷物が置いてあるだけのベンチへと引き上げて来た。

「なあ、カズマ。お前、本物なのか?」
 黒浪がロランに問い掛ける。

「ウチのチームで一番バカな、コイツに気付かれてんだ。そろそろ正体を明かしたらどうだ?」
「そうだね、紅華。オレも限界だと、思っていたところだよ」
 カズマはあっさりと、了承した。

「では御剣隊員は、本物の御剣隊員では無いのでありますな?」
「なんだ、杜都。お前も気付いていたのか?」
「薄々ではありますが、違和感がやはり……」

「そうだよ、モリト。オレは、ロラン。詩咲 露欄(しざき ロラン)だ」
 蒼いビブスの背番号10は、自分の本名を名乗った。

「ロラン……聞いたコト無い名前だな?」
「ああ。一馬じゃ無いコトは解ったが……」
「何処の誰とまでは解らないな」

 ロランと同じ蒼いビブスを着た、汰依(たい)、蘇禰(そね)、那胡(なこ)の3人が、口々に呟く。

「そっか。オメーら、海馬コーチと練習場に直接来たから、テレビ見てねーんだな?」
 3人を始めとした紅華の旧チームメイトたちは、バスで河べりの練習場までやって来ていた。

「テレビ……なんのコトだ、トミン?」
「やはり、秘密結社の陰謀か?」
「そんなワケ無いでしょう、龍丸」

 野洲田(やすだ)、龍丸 (たつまる)、亜紗梨(あさり)の3人のセンターバックも、息の合ったボケとツッコミで疑問を提示する。

「実はよ。ここに来る前に、事務所やってたテレビで、チームの記者会見が開かれていてだな。しかも紹介されたチームは、3チームもあって……雪峰、頼むわ」
「了解した。そこからは、オレが説明しよう」

 雪峰は紅華からバトンを受け取ると、テレビの内容を端的にわかりやすく説明した。

「ま、まさか地域リーグに、3チームも強豪が参入するなんて!」
「マジかよ。しかも相手は、巨大資本の日高グループだろ?」
「一流の外国籍選手まで取ってるだなんて、ウソだろ?」

「ホントだ、那胡。それでコイツが……」
 紅華が、ロランを見た。

「エトワールアンフィニーSHIZUOKAの、エース……」
「背番号10を背負った、司令塔だと言うのか?」
「まったく、驚かされますね」

 黒井ビブスの3人のセンターバックも、再び息の合った連携を披露する。

「あのさ、疑問なんだケド?」
「ン。どうした、クロ。なにが疑問なんだ?」

「ホンモノの一馬は、今どこに居るんだ?」
 黒浪が珍しく、核心を突く。

 他のメンバーも、互いに顔を見合わせながら、答えを探っていた。

「そりゃ、オメー。エトワールアンフィニーSHIZUOKAの記者会見のときに、ちゃんと詩咲 露欄は出席してただろ?」

「ヘ……言われてみれば、出てたような……?」
 頭を抱える、黒浪。
「アレ。でもロランは今、ここに居て……それじゃあ、まさか!?」

「ああ、そのまさかだ。一馬は今、静岡に居る」
 倉崎が、衝撃の真実を告げる。

「な、なんでェ!?」
「彼とオレとは、顔がそっくりだろう。それで、咄嗟に替え玉にするコトを思い付いたんだ」
「それじゃあ、記者会見に出てたのが……」

「ああ。本物の、カズマさ」
 ロランはヤレヤレとした顔で、微笑んだ。

 ~その頃~

 エトワールアンフィニーSHIZUOKAの、豪華で真新しい練習グランド。

『な、なんで、こんなコトにィ!?』
 背番号10の蒼いユニホームを着た男が、センターサークル上で悲嘆にくれていた。

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