ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第07章・33話

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水の力と風の力

 目の前に築かれた、破壊したアーキテクターのスクラップによるバリケード。
その向こう側まで迫って来ている、アーキテクター部隊の行進音。

「あの……ここって、水が通ってる配管、ありますか?」
 メイリンがオドオドしながら、皆に質問している。

「あの右端のがそうだが、水でヤツらの動きを止めるってか。残念ながらヤツらも、耐水防御くれェはしっかりとだな……」

 ギムレットさんがゴタクを並べている間に、黒乃が配管を撃ち抜いた。

「うわッ、水がハデに噴き出したぞ!?」
「だがよ。アイツらは、気に世せず向って来てやがる。こっちだけが、視界が悪くなっただけだぜ!」

「そうでも無いわよ。メイリンは、水を操れるみたい」
「そんな魔法みたいなコト……アッ!?」
 そう言いかけて、ハッとするボク。

 メイリンが手の平をかざすと、水はまるで生き物のように動き周り、アーキテクターを包み込んでは、ボディの隙間から内部へと染み込んで行く。
やがてアーキテクターたちは、内部から噴水のように水を吹き出させて破裂した。

「そう言えば、似た能力のデバイスを使っていたコを、知っていたな」
 ボクは、3人のオペレーター娘の1人である、ヴァルナ・アパーム・ナパートを思い出す。

 彼女のチューナー『アクア・エクスキュート』は、アクアマリン色の水に見えるが、正体はナノ・マシーンの集合体だった。

「『チューナー』を、知っているのね。そう言えば火星では、けっこう流行っていたと聞くわ」
「ええ。他に2人の女のコの、チューナーを見ましたよ。知らなかったんですか?」
 ボクは、ミネルヴァさんの名前を伏せて、聞いてみた。

「あんな組織の、トップをやっているとね。世情には疎くなるものよ」
 あんな組織とは、ディー・コンセンテスのコトに違いない。
組織のトップともなると、いつの時代も束縛されてしまうモノなのだろう。

「だがこれで、活路が開けたぜ。向って来たヤツらは、水で内部破壊されてほぼ全滅だ」
「ですがまだ、相手が築いた巨大バリケードが残ってます!」

 要塞のようにうず高く積まれた、防護シールドの山。
緻密さは無いものの、その防御力は厄介だった。

「あそこにゃ、まだかなりの数のポンコツ機械が詰めてやがんな。オイ、お前。水で流したりはできねェのか?」

「お前じゃない、メイリンだリン!」
「なんだァ。今は名前なんざ、どうだって……」

「よくない……名前、大事リン!」
 下半身が魚のような女の子は、向きになって怒っている。

「わ、わーったよ、メイリン。あのバリケードを、水で流して退けてくれ」
「ムリリン」
「ハアッ!!?」

「わたし、少しの水しか操れないリン。それにアソコ、少し高くなってるから余計、ムリリン」
「なにがムリリンだ、ふざけやがって。できねェなら、最初っから……オワッ!!」
 ギムレットさんの目の前を、レーザービームがかすめ飛ぶ。

「気を付けて。一歩ズレてたら、死んでるところよ」
 クールに黒乃が、ギムレットさんを狙撃したアーキテクターを撃ち抜いた。

「でもどうする、黒乃。バリケードの突破方法が、無いんじゃ……」
「今度は、わたしがやるラビ」
 ボクの背中から、額に角の生えた少女が現れる。

「ラビリア……キミも、チューナーが使えるのかい?」
「わたし達は、チューナーってデバイスが無くても、似たような能力が使えるラビ」
 そう言うとラビリアは、背中の小さな羽根を広げた。

「ラビリアに、アイツらのレーザーが当たらないように、援護よ!」
「了解、黒乃!」
「ヤレヤレだぜ!」

 ボクたちは弾幕を張って、ラビリアへの攻撃を阻止する。

「わたしの能力は、風を操る力ラビ。行っちゃえラビ!」
 背中の翼が、渦巻く風を生み出す。
やがて風は、竜巻となって巨大バリケードへと向って行った。

「スゴイ……あれだけ頑強だったバリケードが、一瞬で消し飛んだ」
 突然に巻き起こったつむじ風は、バリケードを構築していた防護シールドを、軽々と吹き飛ばした。

「大したモノね。ここはクリアよ」
 撃ち漏らしのないように、飛ばされたアーキテクターにトドメを刺すと、ボクたちは上の階へと向かって行った。

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