ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第07章・31話

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ラビリアとメイリン

「ボクの生まれた時代じゃ、コスプレにしか見えないな。でも、そのコたちの羽根やウロコは……」
 黒乃の両脇にへばり付く2人の少女たちは、怯えた目をしていた。

「ええ、本物よ。色々な動物の遺伝子や万能細胞を使って、このコたちは生み出されたの」
 黒乃の瞳が、憂(うれ)いている。

 額に角のある少女は、紅い瞳に真っ白な肌で、背中の小さな羽根をパタパタさせている。
下半身が魚みたいなコは、よく見るとウロコに覆われた脚として2つに別れており、足先がシュノーケリングのフィンのようになっていた。

「ここの研究所長だった男の、娯楽的な研究によって生まれたコたちよ。彼はファンタジーの世界の住人を、遺伝子操作やバイオテクノロジーなどの技術を使って、生み出そうとした」

「そんなコトが、許されるのか?」
 倫理とか常識だとか言う言葉は、毛嫌いしていたボクも、流石に研究者の心根を疑う。

「誰かに許されるとか、そんなコトを考える男では無かったわ」
「そうか。会ったコトも無いヤツだケド、人間としては最低だな」

 テレビ画面やネットを通しての情報であれば、そこまで気にはしなかったかも知れない。
……とは言え、目の前に大量のカプセルがあって、中には身体のパーツが欠損した子供たちが浮かんでいる光景を目撃すれば、世間に無関心なボクでさえ、憤(いきどお)りを感じざるを得なかった。

「それより、ソイツらを連れて行く気なのか?」
 ギムレットさんが、重厚なレーザー銃のマガジンを交換しながら問いかける。

「ええ。このコたちは、体調も比較的安定しているわ」
「でも、この部屋に居るから安定しているとも、考えられない?」

「確かに、可能性はあるわ。選択は、本人たちに任せましょう」
 黒乃はしばらくの間、2人の返答を待っていた。
けれども2人は、互いの顔を見合わせたり黒乃の顔色を伺ったりで、返事が返って来ない。

「ところでキミたちに、名前はあるの?」
 ボクは会話のきっかけを作り出そうと、話しかけてみた。

「わ、わたしは、ラビ0916」
「わたしは、メイ1010」

 予想通りと言うか、無機質な返事が返って来る。

「2人の名前は、研究所が管理目的で付けた名前よ。ラビやメイがシリーズ名、次に来る09や10は生まれた年号、その次の数字は……」
「その年の何番目に、生まれたかってコトか」

「ええ、そうよ」
 黒乃は申しワケ無さそうな顔で、2人を自分の身体に引き寄せた。

「それじゃあ、2人の他のラビ・シリーズや、メイ・シリーズはみんな死んでしまったんじゃ?」
「いいえ、そこまで酷い成功率では無かった。もちろん、全員が生き残ったワケでも無いケドね。成功したコたちは、ここの主だった男が宇宙へと連れ去ってしまったわ」

「この2人は、どうやらあの男が去った後に誕生した、成功例みてェだ」
「そうですか……」
 ボクはしばらく、思案する。

「このコたちに、名前を付けてもいいかな?」
「え、別に構わないと思うケド、どうかしら?」
 クワトロテールの少女は、両脇の女のコに確認すると、2人はコクリと頷いた。

「よし、キミの名前は、ラビリアだ」
「ラビ……リア?」
 オドオドしながらボクの言った名前を復唱する、一角で背中に翼の生えた少女。

「キミは、メイリン……どうかな?」
「メイリン……メイリン!」
 下半身が魚のような少女は、気に入った様子だった。

「名前を付けるなんざ、アンタ意外にエゴイストだな」
「ですね。もしくは60人もの娘の名前を付けたんで、慣れたのかもです」
「ハ?」

「ボクには、娘が60人居るんですよ。それよりエゴイストって言うんなら、もう少しハデにやらかしましょうか」
「なにを、やらかすって言うの?」

「キャラ設定だよ。ラビリア、キミは今から、語尾に『ラビ』と付けるんだ」
「わ、わかったラビ」
 意外にも、ラビリアは一瞬で従った。

「よしよし、次はメイリン。キミは語尾に、『リン』と付けるんだ」
「りょ、りょうかいリン」
 2人は元々、命令に従順なのかも知れないと思うと、ボクのふざけた提案が申しワケ無く思えた。

「用が済んだなら、長居は無用だぜ」
「ですが、まだ2人の返事を聞いていません」

「モチロン、問題ないラビ」
「早く、ここを出るリン」
 2人は、自分の意思でそう言った。

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