ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP020

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ロランとスーパースター

「なるホドな、一馬。お前は、詩咲 露欄(しざき ロラン)だったと言うワケだ」
 ロランの向こう側のソファーに座った、倉崎 世叛が言った。

 背後(バック)の薄型テレビでは、エトワールアンフィニーSHIZUOKAの選手紹介が終わった後、記者会見も終わりを迎えている。

「Zeリーグ1部に君臨するスーパースターが、詩咲 露欄なんて男をご存じは無いでしょう?」
 ロランは、自分に向かうであろう質問の矛先を変えようと、逆に質問をした。

「イヤ、知っていたさ。オレの弟が、キミをリストにピックアップしていたからね」
「ピックアップ……貴方の弟は、スカウトでもやっているんですか?」

 ロランの質問に、倉崎は苦笑いをする。

「スカウトの真似事をやっていた……と言うのが、正しいな。好きなサッカーもできないくらいの、難病でね。もう、この世界には居ないんだ」

「そ、そうでしたか。すみません、オレ……」
「本来の1人称は、オレなワケだ?」
「時々で、使い分けてるんです。こっちも、色々とありまして……」

「なるホドな。器用な万能選手だってのも、頷ける」
「え?」
「オレの弟の、スカウトノートに書いてあったのさ」

 倉崎は、一馬に預けていたスカウトノートと同じ表紙のノートを、テーブルに置いた。

「これは……?」
 ロランは、ペラペラとノートをめくる。

「生前、弟が作っていたノートの1冊さ。自分が気になる選手を見つけると、そうやってピックアップしていたんだ」
 古びた大学ノートには、色々なプレーヤーと共に、詩咲 露欄の名も刻まれていた。

「今だって有名で無いオレに、こんな前から目を付けていたんですか?」
「オレの弟の審美眼も、まんざらでも無かったと思っているよ」

「オリビや、日高グループの他のチームの選手名まで挙がっている」
「そうだ。それにさっきまで応接室に居たメンバー全員が、弟のノートに書いてあったヤツらさ」

「それじゃあ、貴方がこのチームを作った理由は……」

「ああ。弟との約束なんだ。オレがチームの中心となったチームを、アイツが作るって」
 そう言うと、倉崎は立ち上がる。

「だが、アイツは少し早く旅立ってしまった。アイツの夢は、オレが引き継ぐコトにしたんだ」
「そう……ですか……」

 注いでもらった目の前の緑茶は、すでに冷めていた。
ロランはそれを、気にせず飲み干す。

「サッカー1つやるにしても、色んな場所に色んな理由があるんですね」
「そうだな、ロラン。ところでキミとオリビは、オレと同学年だ。敬語なんて使う必要は無いだろう?」

「いえ、今のボクは『カズマ』です」
「つまり……もう少し一馬で居る必要が、あるんだな?」
「はい。理由は、まだ話せません。ですが、もう少しだけ時間をください」

 ロランは立ち上がって、デッドエンド・ボーイズのチームオーナーに頭を下げる。
倉崎は、深いため息を吐き出した後、口を開いた。

「わかった。だが、本物の一馬の方が、心配だ」
「それについてですが、オリビが上手くやってくれると思います。記者会見でも、カズマのコトを見抜いた上で、なんとか誤魔化してくれてましたから」

「キミは、オリビのコトを信頼しているようだね」
「アイツとは、子供の頃からのサッカー友達ですから。まあ、迷惑かけっぱなしですケド」

 その間に倉崎は、スマホを取り出しロランに手渡す。

「わかりました」
 倉崎の意図を察したロランは、倉崎のスマホにオリビの電話番号を打ち込んだ。

『誰だい。キミか?』
 スマホのスピーカーから、ロランが最も聞き覚えのある声が聞こえる。

「人のスマホなのに、よく出てくれたな、オリビ」
『それくらいのアクシデントは、想定内だよ、ロラン。まったく、キミってヤツは……』

「小言は、後だ。今、サッカー界のスーパースターに代わるから」
『オイ、ロラン。また何かの悪戯か?』

「イヤ、悪戯では無いよ、オリビ。オレは、倉崎 世叛だ」
 サッカー界のスーパースターは、そう名乗った。

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