ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第8章・EP001

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てりやき弁当

 ボクは、オリビさんの家に外泊をした。
静岡県出身のオリビさんが言うには、静岡県と言うのは東西にやたらと長いらしい。

「一馬、キミには迷惑を、かけっぱなしですまない」
 オリビさんは静岡県にある実家から、かなり離れた県内のアパートに暮らしていた。

「……」
 4畳半の部屋に置かれたちゃぶ台の前で、ボクは顔を横に振る。
昨日からオリビさんは、まるで自分が問題を起こしたかのように、何度もボクに謝ってくれた。

「ロランのヤツと来たら、昔から思い込みが激しくてね。一旦こうと決めたら、周りを見ずに突き進むんだ。お陰でなん度も、尻拭いをさせられてさ」
 そう言うとオリビさんは、ちゃぶ台の上にコンビニ弁当を置いた。

「悪いが、あまり料理は得意でなくてね。こんなモノで、申しワケ無いんだが……」
 20歳のオリビさんが、まだ高校1年のボクに気を遣ってくれる。
有難く手を合わせて、弁当の包みを開けた。

 中身は鳥のてりやきで、タルタルソースがタップリと乗っている。
オリビさんは、インスタントのみそ汁も淹れてくれた。

「昨日、倉崎 世叛と、連絡を取ったよ。なんでも、ロランはもう少しだけ名古屋に居座るみたいだ」

 ……そっか。
相手が倉崎さんなら多少は喋れるケド、ボクなんかより、大人でしっかりしてるオリビさんとやり取りした方が、確実だよね。

「その間なんだが、しばらくロランの振りを続けていてくれないだろうか?」
 ボクが1口目のご飯を口に運んだタイミングで、オリビさんが言った。

「ムグゥ!?」
「わ、悪い。大丈夫か?」
 500ミリリットルの、ペットボトルのお茶を差し出してくれる、オリビさん。

「プハァッ……ゲホゲホ!」
 ご飯が、ヘンな方に入っちゃった。
でも、それどころじゃない!

「そりゃ、驚くよな。キミはまだ高校1年生で、授業だってあるんだ。本来であれば、こんなコト頼める立場じゃないコトくらいは、理解しているつもりだ」
 ちゃぶ台の上にこぼれたご飯を、布巾で掃除しながら、オリビさんが言った。

「キミには、ロランがどうしてあんなバカげた行動をしたのか、ちゃんと話してなかったね」

 そう言えば昨日は、オリビさんと2人になるときなんて無かった。
名古屋からバスに揺られて静岡に来る間も、ボクはロランってコトになってたし。
練習試合だって、ロランさんの替わりに出て、あんな結果に……。

「アイツが、キミを代役に立ててまでチームを抜け出したのは、新人アイドルだったアイツの姉さんが、自殺した事件が原因なんだ」

 オリビさんの言葉に、ボクは思わず口を開けたまま箸を降ろす。

「いきなりハードな話で悪いんだが、そう言うコトなんだ。アイツは姉の死に不審感を抱き、それを調査するためにチームを抜け出した」
 オリビさんはそれから、ロランさんと亡くなったお姉さんの話をしてくれた。

 ロランさんは、お姉さんの死の真相を知るために、ボクと入れ替わってまで名古屋に残ったんだ。
そう思うと、名古屋に帰りたいなんて言っていいのか、躊躇(ためら)ってしまう……。
美味しかった弁当も、すっかり冷たくなっている。

「やはり、止そう。無関係のキミに、これ以上迷惑はかけられない……」
 オリビさんは、なにかを復吹っ切るように言った。

「悪かったな、ヘンな話をしてしまって。キミの弁当も冷めたから、もう1度温めよう」
 オリビさんは食べかけの弁当にフタを被せると、電子レンジの中に入れる。

 オリビさんは、どうしてボクに代役を続けるように言ったんだろう?
ホントはもう1度ロランさんに、チームに戻って来て欲しいんじゃ……。

 クルクルと周る、電子レンジの音だけが聞える。
しばらくすると、『チン』と音が鳴った。

「少し鶏肉が頑くなったかも知れないが、許してくれ」
 オリビさんがちゃぶ台に、再び熱くなった弁当を置いてくれる。

「ネットで、名古屋までのチケットを取っておくよ。ここからだと、けっこう乗り継ぎが面倒になるが、夕方くらいには向こうに着けるハズだ」
 パソコンでも置いてあるのか、隣の部屋に行くオリビさん。

「ま……って……ボ、ボ……」
 ボクは必死に、口を動かそうとした。

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