ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第12章・07話

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王と女王

「ス、スゲェな、キティ。巨大な城壁が、何重にも張り巡らされているぞ」
「見ろよ、ベリュトス。壁の向こうに、また壁があるぞ!」
 2人の従者が、馬車の窓から見える景色に夢中になっている。

「2人とも、あまりはしゃぐなよ。一応はお前ら、王の護衛なんだからよ」
「わ、解ってますって、バルガ王」
「外交官ってのも、意外と大変だなあ」

 蒼き騎士団に護衛された、カル・タギアの国王ら一行は、その巨大過ぎる城郭に入って行った。

「どうやら、無事に到着されたようですね」
 その様子を、破壊を免れた城門塔から見ていた、レーマリア女王。

「ヤホーネスとカル・タギアは、これまであまり外交関係を持って来ませんでしたが、かの国の窮地に蒼き髪の勇者やルーシェリア様が手を貸したコトで、良好な関係に発展して行けるでしょう」

 ヨナ・シュロフィール・ジョが、窓際の女王の背中を見ながら言った。

「貴女の自慢の2人のお弟子さんも、活躍を感謝する報がありましたよ、ヨナ」
「リー・セシルとリー・フレアは、元々の素質が桁違いでしたからね。子供の頃は魔法を教えましたが、後は勝手に育ってしまって、あまり弟子などと言った感覚では無いのですが」

「それならウチのヤツらも、商売でカル・タギアとの関係を強化してるぜ」
 ヨナと同じく5大元帥の、ラーズモ・ソブリ―ジオが腕を組んで頷く。

「ええ。ヤホッカ、ミオッカ、イナッカも、良くやってくれておりますわ」
「ガッハッハ、アイツらは頭の方はアレですが、商売に関しちゃ獣人の気質を継いでますからな」
「商売では、蒼き勇者の旗下にある、マンモーンたちとも取引があるとか?」

「ああ、ヤツらですか。なんでも商売の元手が要るとかで、大量の武器を持ってやって来ましてな。おかげで部下たちの装備も、かなり強化出来ましたぜ」

「それは朗報です。サタナトスも、新たなる戦力を手に入れたようですからね」
「オレもあれから、随分と鍛え直しているんでね。今度は、遅れは取りませんぜ」
 ワイルドなオレンジ色の長髪の獣人は、巨大な拳を打ち鳴らした。

「バルガ王らご一行、到着なされました」
 3人の少女騎士が、内側からドアを開ける。

 オレンジ色の髪をしたバルガ王が、2人の従者を伴って現れた。

「遠路はるばる、ようこそお越し下さいました、ファン・二・バルガ王」
 レーマリアはすでに、女王の椅子に座っていた。

「こちらこそ、招待いただき感謝する。神澤・フォルス・レーマリア女王陛下」
 王は王族同士の礼をし、2人の従者はヒザを折って傅(かしず)く。

「このような狭き場所にての出迎え、心よりお詫び申し上げます」
「本来の城であるヤホーネス城とエキドゥ・トーオの王宮は、サタナトスとかの者が呼び寄せた魔王ザババによって、崩壊してしまったのです」

 レーマリアが詫びると、ヨナもその経緯を説明する。

「先王もサタナトスらとの戦闘のおり、崩御なされました。後継者となるべき皇太子様も亡くなっていたため、レーマリア様が女王として即位されたのです」
 後から入ってザバジオス騎士団長の、ジャイロスが言った。

「そうかい。ソイツは、気の毒にな。女王陛下が、まさかここまで若い少女だったとはな……」
 バルガ王も、自身よりも若くして王の座に就いた、少女の苦労を慮(おもんばか)る。

「ですが、誰かが王を継がねばなりません。バルガ王も、ご苦労が絶えないのでは?」

「まあな。カル・タギアは、オヤジ……先王がサタナトスの剣で、大魔王にされちまってよ。女王も戦いの果てに亡くなっちまって、大変ではあるが……」

「海皇と女王が失われても、カル・タギアの泡のドームを維持できているのは、一重にリー・セシルさまと、リー・フレアさまのお陰でして」
「お2人以外にも援軍を送っていただき、か、感謝いたします」

 ベリュトスとキティオンも、慣れない外交官としての仕事をこなした。

「お疲れでしょうが、バルガ王。今後の戦略にも関係して参りますので、情報の擦り合わせをするべきかと考えれます」
 ヨナが、提案した。

「そうだな、双子司祭も借りっぱなしだしよ。こちらの持ってる情報は、全て提供するぜ」
「有難うございます。こちらも、持っている情報をすべて開示致しましょう」

 2つの国の王と女王の許諾によって、それから直ぐにサタナトスらに対する情報の擦り合わせが開始され、作業は深夜にまで及んだ。

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