ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・43話

闘技場での舌戦

「因幡 舞人と、言ったな」
 黄金の鞭を振るいながら、舞人に向って1歩1歩み寄る女将軍。

「この国に置いては、強者はたとえ敵国の者や犯罪者であったとしても、尊敬が与えられる。まず、戦う前に聞いて置きたい」

 防護する部分の少ない黄金の鎧から見える褐色の肌に、フワリとした真っ白な髪。
ほとんどが男の観客で埋め尽くされた闘技場が、ミノ・アステ将軍の言葉を聞こうと静まり返る。

「わたしの部下となる気は、ないか。もし、女であるわたしの下に付くのが嫌なのであれば、ミノ・ダウルス将軍直属の部下に、推薦してやらんでも無いぞ?」

「ありがたい申し出ですが、お断りします。ボクはこのクレ・ア島に、戦争を止めにやって来ました」
 舞人は、剣を次元の狭間に納めた。

「ほう、おもしろいコトを言う少年だな。我らがラビ・リンス帝国が現在、戦争の準備をしていると言うのは周辺諸国にも知れていようが、お前はヤホーネスの出身なのだろう?」

「はい。ニャ・ヤーゴが、ヤホーネスの地方都市なのを、ご存じなのですね」
「将軍と呼ばれる地位にある者は、地理を軽んじるコトなど出来んよ」
 微笑を浮かべる、女将軍。

「ヤホーネスでは老齢の王が亡くなり、新たにお若い女王が即位されたと聞くが誠か?」
「即位されたレーマリア女王は、若くても聡明なお方です」
「それではお前は、レーマリア女王の意向を受けて、我が国に潜入したのだな?」

「素性を偽り、申し訳ありません」
 丁寧に頭を下げる、舞人。

「ヤホーネス王国と我が国は、地理的に言ってもかなりの距離がある。レーマリア女王陛下は、関係の無い国の内情に首を突っ込まれるおつもりか?」

「そ、それには、深い理由が……」
「ご主人サマよ、もう1つの依頼主も、明らかにした方が良いのではないかえ」
 2人の会話に、ルーシェリアが割り込んで来た。

「ルーシェリア、余計なコトは……」
「余計では、あるまい。むしろ最初に依頼して来たのは、彼奴(きゃつ)らの方じゃろうて」

「なんだ。レーマリア女王の他にも、依頼主がいるのか?」
 ミノ・アステ将軍も、舞人を問い詰める。

「はい。海底都市カル・タギアの王、ファン・二・バルガ王です」
 仕方なく、舞人は依頼主の名を打ち明けた。

「なんだと。バルガ王まで、お前たちの背後にいるのか?」
「ヤホーネスも、カル・タギアも、共通の敵に攻められ、多大な被害を被(こうむ)りました。2つの国は、同じ敵に対抗するために、正式に同盟を結んだのです」

「ヤホーネス王国は、大陸でも有数の規模の大国であるし、カル・タギアも、フェニ・キュア最大の都市ではないか。2つの敵を向こう回し、甚大な被害を与える敵とは一体……?」

「サタナトスと言う名の、少年じゃよ。彼奴は、ヤホーネスの王都を半壊させ、海底都市カル・タギアにも甚大な被害をもたらしたのじゃ」

「サタナトスの部下によって、シャロリュークさん……シャロリューク・シュタインベルグが討たれました。カル・タギアの女王も、彼の策謀によって亡くなられ、海皇以下七海将軍の大半も、今や彼の軍門に降ってしまったのです」

「赤毛の英雄が、死んだだと!?」
「彼奴を討ったのは、ケイオス・ブラッドと言う魔王での。時空を切り裂く剣(バクウ・プラナティス)も、ケイオスに奪われてしまったのじゃ」

「お前たちの言葉が、真実などとは到底信じられん。だが、偽りと決めつけて良いモノか」
 舞人とルーシェリアの口からもたらされる様々な情報に、麗しの女将軍はしばらく長考する。

「良かろう、因幡 舞人よ。お前の望む通り、ミノ・リス王への謁見を手配しよう」
 女将軍の黄金の鞭が、ヘビのように大きくうねる。

「ただし、このわたしを倒してからの話だ。お前たちの言葉が正しいかどうか、その武勇を以(もっ)て証明せよ!」
 ミノ・アステ将軍と、その親衛隊である少女たちが、舞人たちの前に立ちはだかった。

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