ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・25話

どうしようも無い道楽者

 その日、復興途中の海底都市カル・タギアの中央広場にて、同国と地上の国ヤホーネス王国との同盟締結と、航路開設の調印式が行われた。

「海皇さまが居なくなって、海の女王さままで亡くなられちまって、不安だったケド……」
「これで少しは、復興に弾みがつくってモンよ」
「バルガ王も、若いのによくやってくれてるね」

 5つの国が同盟して造られたヤホーネスでの調印式に比べれば、集まった観衆も少なかったが、それでもカル・タギアの人口よりも多くの観衆が、周辺の海底都市からも集っていた。

「繫栄を誇ったカル・タギアも、こんなにボロボロになっちまったがよ」
「ヤホーネスって言やあ、地上の大国だろ?」
「そこと同盟にこぎつけるなんざ、カル・タギアの新しい王サマも大した外交手腕だぜ」

 ステージの壇上にて、調印を行うバルガ王と、ヤホーネス大使であるリュオーネ・スー・ギル。
王の後ろにはベリュトスとキティオンが控え、リュオーネの背後には因幡 舞人とクーレマンスが立っていた。

「ヤホーネスの大使が従えてるのって、蒼き髪の英雄と、覇王パーティーの1人だろ?」
「それに比べて、バルガ王が従えてるのは……」
「でもよ。王はあの2人を、それだけ信頼してるってコトかもな」

 それぞれの前に置かれた、同盟締結と航路開設の条項が記された分厚い本に署名し、それが終わると本は恭(うやうや)しく取り換えられる。

「まったく、面倒なコトだな」
「そう言うな、バルガ王。これだけの文章を編纂(へんさん)したあの2人こそ、面倒と言う資格があると言うモノよ」

 本を編纂し、取り換える作業を行った、シドンとギスコーネを労(ねぎら)う、ヤホーネス大使。
2人は、小声で会話をしながら、取り換えられた本に署名した。

「やったぞ。これで、サタナトスってヤロウだって、迂闊(うかつ)に手が出せないぜ」
「新たな航路が、開設されるってか。とんでもねェ商機だ、こうしちゃ居られねェ」
「地上の建材さえてに入りゃあ、復興だって加速するぜ」

 広場に湧き上がる、大歓声。
2つの署名が添えられた本を、それぞれが持ち帰るコトで、同盟締結と航路開設の式典は終了する。


 カル・タギアの政治中枢は、城と呼ばれるものは存在せず、代わりに御殿のような建物がその役目を果たしていた。

「バルガ王、お疲れでしょう」
「大使殿、お役目ご苦労さまにございです」
 シドンとギスコーネが、ソファでくつろいでいる2人の前に、飲み物を置く。

「お前らの方こそ、これだけの文章を編纂するなんざ、かなりの作業だっただろ?」
「まあ、それはそうですが、文章の編纂は日々の仕事でもありますからね」
 若き海洋生物学者でもある、シドンが返した。

「おや、王の優秀な頭脳(ブレーン)殿は、もしや化学者の類(たぐい)かね?」
「ええ、リュオーネ様。ですが大魔導士としてご高名な大使殿に比べれば、個人的な趣味としての研究に他なりません」

「化学者なんてヤツは、みんなそんなモンさ。わたしだって、国の血税を使って道楽な研究をする、どうしようも無い探究者でね」
 2人の道楽者は、互いに笑みを浮かべる。

「確かリュオーネが大使に立候補した目的も、自分の研究に関してだったよな?」
「まあね、バルガ王」
 シャポーで顔を隠す、大魔導士。

「リュオーネ様は、なにの研究をされているのですか?」
「機構人形だよ。魔力を動力源として動く、金属の人形さ」
 大魔導士の腕に、いつの間にか金属の鳥が止まっていた。

「こ、これは……リュオーネさまが、造られたのでしょうか?」
 もう1人の頭脳である、ギスコーネも質問する。

「ああ、そうだよ」
 フワリと宙に浮く、大魔導士。

「わたしがここに来た、もう1つの目的はね。重機構天使(メタリエル)とやらを、この眼で拝むためなんだ」
 どうしようも無い道楽者は、言った。

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