ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・04話

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同盟調印式

 サタナトスの襲撃によって傷付き、先王を始めとした多くの人々が命を落とした、ヤホーネス王国の王都エキドゥ・トーオ。

 家族を失った哀しみを忘れようとするかのように、生き残った民たちは日々を必死に働く。
崩れた城壁や倒壊した家屋も、少しずつではあるが再建されつつあった。

 そんな人々も、今日この日ばかりは働く手を止め、中央広場へと足を運ぶ。
ヤホーネス王国と、海底都市カル・タギアの同盟が締結されるという、久方ぶりの吉報がもたらされたからだ。

「なんでもウチと、海の底にある国が同盟を結ぶってんだろ?」
「ああ、そうだよ。カル・タギアって国らしいね」
「こないだからウチに来てる、イケメンな若い王さまの国だってよ」

 普段なら人もまばらな広場に集った人々は、見ず知らずの隣人と噂話をかわす。

「実はオレら獣人は、ケッコウ前からカル・タギアと商売してんだぜ」
「マジか。そう言えば王都の食料不足も、多少は改善された気はするな」
「王さま自ら、大量の魚を運んで来てくれたし、それからも船で交易してっからよ」

 国民たちの騒(ざわ)めきは、レーマリア女王の登場と同時に大きな歓声にへと変わった。

「親愛なる、国民の皆さま。日々の生活も大変な中でお集まりいただき、感謝いたします。今日この日、我らがヤホーネス王国は、海底都市国家カル・タギアと、正式に同盟を結びたいと考えております」

 神澤・フォルス・レーマリア女王の宣言と共に、歓声は一層大きく広がる。
女王の立つ城壁の張り出しの上に、オレンジ色の長髪をした勇壮な男が登った。

「ヤホーネス王国の国民たち。オレは海底都市カル・タギアの王、ファン・二・バルガだ」
 2人の従者を引き連れ、女王の隣に立つ王。

「オレたちの国も、サタナトスっていけ好かない野郎の襲撃を喰らって、今は大変な状況にある。カル・タギアも酷く荒らされちまったが、ヤホーネス王国の助力もあって、なんとか再建計画を推し進めているところだ」

 政治的な駆け引きなどどこ吹く風のバルガ王は、国の窮した内情も隠さない。
ひれ伏しながらも、冷や冷やしながら見守るベリュトスとキティオン。

「我がカル・タギアとしても、ヤホーネス王国との同盟は願っても無いコトだ。どうか共に助け合って国を立て直し、サタナトスのヤロウをブッ倒そうじゃねェか」

 海底都市の王の破天荒な演説に、ヤホーネスの国民は失笑するとともに大歓声を送った。

「なんだか、まっすぐな王サマじゃねェか。オレァ、嫌いじゃねェぜ」
「どことなく、シャロリューク・シュタインベルグに似てるしねェ」
「これで少しは、希望が見えて来たってモンだ」

 歓声の中でレーマリア女王とバルガ王は、ブックスタンドに置かれた同盟締結文章に、ペンを走らせそれぞれのサインを書く。
政治的なパフォーマンス色の強い演出ではあったが、今のヤホーネスはそれを必要としていた。

「これで我がヤホーネスと、カル・タギアは、同盟国となりました。まずは交易によって、互いに不足している物資を補い合い、国を立て直す必要があります」
 女王の言葉と同時に、ヨナとラーズモの2人の元帥が左右に立つ。

「同盟による法的な事柄はヨナ元帥、交易に関してはラーズモ元帥を責任者として任命いたします」
「謹(つつし)んで、拝命致します」
「商売によって発展した獣人国家だ、任せてくれ」

「早速ですが、ラーズモ元帥。ヤホーネスとカル・タギアの間には、広大な海洋があります。多少は遠回りの航路になりますが、中継基地を整備したいのですが……」

「なるホドな。双子司祭の魔法の船や、バルガ王の波沈め号(ウェーブ・スイーパー)でも無い限り、大洋を直接行くのは厳しいからな」
 女王の議案に、少しだけ思案する獣人の王。

「2箇所ホド、候補地があるぜ。例のアト・ラティアが天空都市になったときに起きた、大津波の被害を受けて壊滅した漁村なんだが、天然の入り江になっている」

「場所は大体、想像が付きますぜ。オレや兄貴が、魚を売りに行ってた漁村だと思います」
 漁師としても名を馳せた、ベリュトスが言った。

「交易ルートの確保は、重要だ。ベリュトス、お前に任せられるか?」
「はい、兄貴の分まで仕事をしますぜ」

 ヤホーネス国民の前で、新たなる交易ルートが提案され、獣人を中心に大いに歓迎れた。

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