ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第12章・06話

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波鎮め(ウェーブスイーパー)

 バルガ王は、ベリュトスとキティオンを伴って、大海原に船を走らせていた。

「バルガ王。護衛ってんなら解らなくもないけどよ。今回は地上のレーマリア女王と遭う、重要な会談なんだろ。シドンかギスコーネさまの方が、適任じゃないか?」
「そうだな。少なくともアタシより、ガラ・ティアの方が向いていると思うぞ」

「なんだ、2人とも。ここに来て、怖気づいたのか?」
「そ、そうじゃ無ェケドよ」
「だ、誰が怖気付くものか!」

 王の指摘に、反論するベリュトスとキティオン。

「確かにシドンとギスコーネは、優秀な政治家だ。王であるオレなんかより、カル・タギアにとって無くてはならない存在だろう。7海将軍のガラ・ティアも、内政官としても優秀だからな」
 バルガ王は、巨大魚を釣り上げながら言った。

「それでなんで、お供がオレとキティなんですか。心もとないでしょうに」
 ベリュトスも負けじと、大きな魚を釣り上げる。

「お前らにも経験を積んで、カル・タギアを支える人間になって貰いたいんでな……オット!」
 バルガ王が、特大の巨大魚を釣り上げた頃、水平線の向こうに陸地が見えて来た。

「まったく、これから女王との会談だってのに、なんで王さままで釣りなんかしてんだよ」
 キティオンが、木製の舵輪を回転させながらボヤく。

「外貨獲得ってヤツだ。船倉には海産物を積んで来てはいるが、新鮮な方が良いだろう。ま、今釣ったヤツは、女王陛下に味わって貰うとするがな」

 バルガ王らを乗せた船は、ヤホーネスの近隣の港に接岸した。

「これはこれは、バルガ王。よくぞ我がヤホーネスに、お越しくださいました」
 タラップの先では、黄色のエングレービングが施された蒼い鎧の騎士団が、一行を出迎える。

「出迎え、かたじけない。貴公は……」

「ザバジオス騎士団の団長、ジャイロス・マーティス。以後、お見知りおきを」
 騎士団の先頭に立つ、灰色の髭を蓄えた中年の男が、下馬をして王に挨拶をした。

「ヤホーネス元老院の、5大元帥の1人にお出迎えをいただくとは、恐縮にございます」
 王の傍に控えていたベリュトスが、頭(こうべ)を垂れる。

「ヤホーネスでは、大魔王による首都の破壊や、津波による洪水被害で食料が不足していると聞く。僅かじゃあるが、魚を大量に積んで来たぜ」
「誠にございますか。これで、腹を空かした者たちも救われるでしょう」

 ジャイロスは、策謀を好むため生粋の武人では無かったが、バルガ王とはナゼか気が合った。

「あ、バルガの王さまだ!」
「久しぶりィ。こっちはけっこう、儲けさせて貰ってるぞ」
「へー、これが王さまの艦か。すっげえな」

 噂を聞きつけた、ヤホッカ、ミオッカ、イナッカの3人の獣人娘たちが、王の元へとやって来る 。

「波鎮め(ウェーブスイーパー)の異名を持つ、スグアバ号だ」
 王が降りて来た船は、中央から後部にかけては円筒形に近い形状で、トビウオのようなヒレが翼のように船体から飛び出ていた。

「ほう、これがかの有名な、スグアバ号ですか。ヤホーネスの軍艦と比べても、勇壮で変った形をしておりますな」

「騎士団長殿に、お褒めに与るとは光栄だぜ。コイツはデカいだけじゃなく、海の上を飛ぶように航行し、海中をも潜航できちまうからな」

「ホ、ホントか、王さま」
「この船、海の中まで潜れちまうのか!」
「なあなあ、今度アタシらも乗せてくれよ」

「ああ、構わないぜ。帰りにでも、乗せてやる」
「わーい」「やったー」「王さま、気前いい!」

「よろしいのですか、バルガ王」
「なあに、構わないさ。アイツらには、カル・タギアを復興する資材を、運び込んで貰ってるんだ。それより、レーマリア女王陛下をこれ以上待たせるワケにも、行かんだろ」

「心得ました、こちらへ」
 ジャイロスが馬の手綱を打つと、騎士団全体が整列した長蛇の陣形を取って進み始める。

 港町の隣を流れる河の河口から続く道を、1刻ほど遡ると巨大な王都が見えて来た。

「ア、アレが、地上の人々の暮らす王都……」
「ヤホーネスの都。まさか、これホドのモノとは……」
 用意された馬車の中で、ベリュトスとキティオンが感嘆の声を漏らす。

「確かにこりゃあ、ガラ・ティアにコーディネイトを頼んで正解だったのかもな」

 バルガ王ら一行を乗せた馬車を護衛する騎士団の列は、復興途中のヤホーネスの門へと吸い込まれて行った。

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