ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP009

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有葉 路夢(あるば ロム)

「倉崎さん、マジで言ってるんスか。相手は、巨大資本っスよ!?」
「しかも3チームもあって、それを差し置いて上に上がるなんて、出来るのかァ!?」

 1年で地域リーグの1部に上がると言う宣言に、クレハナとクロナミが目を丸くしていた。

「当然だろう。オレたちは、プロだ。そしていつまでも、地域リーグに留まっているつもりも無い」
 倉崎 世叛は、ヒョイっと応接室のソファの背もたれを飛び越えると、ロランの隣に着席する。

 テレビで見てはいるが、相変わらずの凄まじい身体能力……うわ、ヤバ!
ロランは目立たぬよう、より一層息をひそめた。

「もしかして倉崎指令、日高オーナーの持っているトップチームである、クラウド東京スカーフェイスに、ライバル心を燃やされているでありますか?」
 まるで軍隊みたいな喋り方で、屈強な身体の男が言った。

「確かにライバル心はあるがな、杜都。クラウド東京と美堂 政宗を倒すのは、オレの役割りだ。だが、今回東海・中部リーグに加わった4チームは、お前たちに倒して貰わなければならない」
 倉崎は、ロランの方に腕を回しながら宣言する。

「だ、だからって、ウチは殆どの選手が高校1年なんスよ」
「相手の戦力も解らないのに、よくそんな自信が……」

「どうやらその、選手たちの紹介が始まるぞ」
 クレハナとクロナミの反論を、ユキミネと呼ばれたキャプテンが遮った。

 応接室に集った、倉崎、紅華、黒浪、雪峰、杜都、柴芭、そして……一馬とそっくりなロラン。
彼らの視線は、部屋の角に置かれた薄型テレビに集中する。

『なんとか最後の1人も、間に合ったようですな。では皆様に、この度立ち上げる3つのサッカーチームのオーナーから、キャプテンと主要メンバーを紹介して貰いましょう』

 一馬の姿がカメラに映ったのは、ほんの一瞬であり、デッドエンド・ボーイズのメンバーは誰1人として、気付いてはいなかった。
……1人の少女を、除いて。

「い、今のって、ぜったいカーくんだったよね。なんでカーくんが、テレビに出てるワケェ!?」
 御剣 一馬の自宅で、さっきまで一緒にいた幼馴染みがテレビに映ったコトを不審がる、板額 奈央。

「記者会見場って、名古屋のホテルだから近いっちゃ近いケド、でもどうして!」
 少女はテレビに問いかけたが、返事を返す機能など備わってはいなかった。

『まずは、三重を本拠地とするフルミネスパーダMIEの代表、有葉 路夢(あるば ロム)に、チーム紹介をお願いしましょう』

『えっと、オーナーは日高氏ではないのですか?』
『わたしは、シャイ・ニーグループと、クラウド東京のオーナーです。これ以上は、厳しいですよ』
 オーナーの真っ当な指摘に、記者席からも笑いが漏れる。

『ただ今、日高オーナーより紹介いただきました、フルミネスパーダMIEの代表、有葉 路夢です。ボクは元レーサーなんで、気軽にロムと呼んでやって下さい』
 お洒落な赤いスーツに身を包んだ、黒い清潔な髪の青年がニコッと微笑む。

「うわァ。オーナーってもっと、渋いオジサンかと思ってたケド、どう見ても30歳も行ってないよね。この人だけでも、女性ファンが殺到しそう」
 テレビを挟んでも、ロムに魅了されてしまう幼馴染みと同じ質問が、会場でも飛んだ。

『いやァ、ボクもそう思っていたんですケドね。どうやらボクたちと同じく、今年参戦するチームのオーナーは、まだ高校生だって言うじゃありませんか?』

「ガハッ、それ完全に、倉崎さんのコトじゃん!?」
「まさか、ウチの話になるとは仰天であります!」
 別のテレビの前でも、関係者が騒然となっている。

『そうですね、日高オーナーのチームの他にも、まだ1チーム参戦があるとか……』
『えっと確か、名前はデッドエンド……なんでしたっけ?』
『そのチームのオーナーも、若いんですか?』

「クッソー、オレたちだって記者会見を開いてるのに、この扱いの差はなんだ!」
「ウチんときは、殆ど記者なんて来てなかったかんな」
「仕方あるまい。巨大資本が動かなければ、地域リーグにスポットは当たらない」

 クロナミとクレハナの愚痴を、ユキミネキャプテンがバッサリと斬る。

『オーナーの名は、倉崎 世叛』
 ロムが、悪戯っぽく微笑みながら言った。

『高校生にして、Zeリーグの新人王候補の男ですよ』
 その言葉に、会場が騒(ざわめ)めいた。

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