ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第11章・66話

f:id:eitihinomoto:20190914042011p:plain

龍天降下(ドラゴンバースト)

『グハハ、我の配下を討たせはせんぞ。我が、息子たちよ』
 2人の王子たちの前に飛来し、鋭利な牙の並んだ口で豪快に笑う、大魔王ダグ・ア・ウォン。

「コウモリの嬢ちゃんは、やられちまったか……」
「兄上。父上の左上の腕を」
 ギスコーネの指摘した、大魔王の4本ある腕の1つには、漆黒の髪の少女の頭が握られていた。

『この小娘も、我と我が軍隊を前に良く戦った。ガハハ』
 ルーシェリアを、地面へと放り投げる大魔王。

 その背後に、城の残骸で構成されたゴーレムが飛来し、上空ではウォータードラゴンやクラウドドラゴンの群れが、黒雲の中を悠然と飛び回っている。

「ク……うう」
 天空都市の地面に転がった少女は、全身が紅い血に染まっていた。

『かつては、冥府の魔王にして暗黒の魔王と言われた、ルーシェリア・アルバ・サタナーティアが、赤い血を流すとは皮肉なモノよ……』
 大魔王は爪の生えた巨大な脚で、漆黒の髪の小さな頭を踏み潰そうとする。

「ギャッ……カハッ!!?」
 天空都市の地面が陥没し、ダグ・ア・ウォンの周囲に土煙が巻き上がった。

「オヤジ……なんてコトを!」
「いえ、見て下さい。兄上!」
 再びギスコーネが、兄のバルガ王子に催促する。

「ヤラセ ハ シナイ……」
 そこには、ルーシェリアを抱えた舞人が立っていた。

『なるホド、大した身のこなしよ、小僧。我が、直々に相手をしてくれようぞ』
「待て、アンタの相手はオレたちだぜ」
「父上、刃を向けるコトをお許し下さい」

 それを阻むかのように、実の父親へと斬りかかる2人の王子たち。
けれどもその進路を、城の形をしたゴーレムが塞いだ。

「ジャマしやがって。城のゴーレムたァ、ふざけた趣味をしてやがる!」
「ですが兄上、相手は強敵です」
 2人は、巨城兵を仰ぎ観る。

 ルック・ゴーレム(巨城兵)は、両肩から腕にかけてがタレットと呼ばれる塔になっていて、背中にも2基の小堡(バービカン)が貼り出していた。
胸壁からは6門の大砲が顔を出しており、王子たちに向かって火を噴く。

「グォ、撃ってきやがたぞ!?」
「これでは迂闊に、近づけません」
 王子たちは、動く巨城を前に苦戦を強いられ、舞人たちに近づけなかった。

「ス、スマンな……ご主人サマよ。妾としたコトが……情けない限りじゃ」
 舞人の腕の中で呟く、漆黒の髪の少女。

「グルルゥ……」
 ルーシェリアを抱く力を強め、喉を鳴らし警戒する舞人。
その紅き瞳は、蒼き龍の姿を捉える。

『これで未熟な邪魔者は、いなくなった。まずはキサマのその力、見極めてやるとしよう。龍天降下(ドラゴンバースト)ッ!!』
 4本の腕を組んだまま言い放つ、ダグ・ア・ウォン。

「ご主人サマ……上……じゃ……」
 ルーシェリアが言い終わる前に、天空から水の龍と雲の龍が舞い降りて来て、舞人たちを襲った。

「ガアアアアアアーーーーーッ!!」
 紅の剣が、襲い来るウォータードラゴンの1匹を、縦にスライスする。
けれども水の龍は、瞬時に元の形状を回復した。

『キサマの剣は、魔族を少女に変えると聞くが、ウォータードラゴンの正体は海水よ。斬れは、すまいて。クラウドドラゴンとて、然(しか)り!』
 水の龍と雲の龍は、舞人がいくら斬っても直ぐに元の姿を回復し、再び攻撃を仕掛けて来る。

「ムダじゃ、ご主人サマ……よ。なにか、方法を考えねば……」
 闇雲に龍を斬る舞人の胸に抱かれながら、漆黒の髪の少女は打開策を考える。
けれども、朦朧とする意識の中では、良い考えは浮かばなかった。

『所詮は、獣か。この程度の智謀と力とは……失望したぞ』
 自ら生み出した魔物たちを従えて、舞人に近づくダグ・ア・ウォン。

「グルル……」
 すると舞人は、白い靄(モヤ)の中へと消えた。

「オイ、ギスコーネ。ずいぶんと、霧が出て来やがったじゃねェか」
「ええ、兄上。どうやら彼は、水の龍や、雲の龍を、無作為に斬っていたワケでは無いようです」
 ギスコーネが言った通り、天空都市を覆うように白い霧が立ち込める。

『ヌ、これは……!?』
 大魔王が自身の身体を見ると、無数の亡霊たちが纏わり付いていた。

 前へ   目次   次へ