ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・65話

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覚醒のジェネティキャリパー

「こ、このアクト・ランディーグが、こんな小僧を相手に遅れを取るなど……あり得ぬ!」

 身体に纏わり付く白い靄(モヤ)たちが発する、耳障りな悲鳴のような声。
紫色の海龍は、自らの身体を縛る亡霊たちを振り払おうと、全身の筋肉を膨張させる。

「ムダ ダヨ。ソイツラ ハ、オマエ ノ カラダ ヲ シバッテ イルンジャ ナイ」
 獣の声の舞人が、ジェネティキャリパーを高く掲げた。

「ヲマエ ノ タマシイ ヲ クラッテ ヤガル ノサ」
 剣に貼り付いていた無数のパーツが外れ、刀身の周囲を不規則に回り始める。

『よもやこの時代に、科学者共の創ったあの剣を、使いこなす者が居ようとは……な』
 黄金の戦士ラ・ラーンは、その様子を確認し呟いた。

「な、一体ヤツの剣に……なにが起きている!?」
『解らぬか、小僧。あの者は己が剣の力を、再び解放しようとしておるのだ』
 傷付いたサタナトスの傍らに、黄金の戦士が歩み寄る。

「そんなコトは、解ってる。だが、そんなコトが可能なのか!?」
 金髪の少年の問いに、ラ・ラーンは答えなかった。

「ち、力が……サタナトス様より与えられし力が……抜けて……!?」
 片膝を付くまでに衰弱する、アクト・ランディーグ。

「ソコ ヲ ドケ。ボク ガ コロシ タイ ノハ オマエ ジャ ナイ」
「退きはせぬ。たとえこの身果てようと、サタナトスさまには指1本、触れさせね!」
 群がる亡霊に纏わり憑かれながらも、弱った身体を起こす海龍。

「クソ、なんでだ、アクト。そんなヤロウのために、お前ホドの男がどうして忠誠など誓う!?」
 3体の魔王と交戦中のバルガ王子が、叫んだ。

「無駄ですよ、兄上。サタナトスの剣であるプート・サタナティスによって魔王とされた者は、なんの疑いもなく、剣の主に絶対的な忠誠を誓うのです」
「だが、スプラやガラ・ティアも救えたんだ。アクトだってあるいは……」

 けれども3体の魔王の猛攻は激しく、舞人とアクトの戦いに介入するどころか、反撃の糸口さえ見い出せないでいた。

「ソレ ナラ シカタ ナイ。マズ ハ オマエ カラ アノヨ ニ オクッテ ヤル」
 ジェネティキャリパーの周囲を覆っていたパーツが外れて、その刀身が剥き出しになる。
舞人さえ見たことが無い、鮮血色の刀身が顕れた。

『ほほう。あの少年、剣の制御装置(リミッター)を、解除しおったぞ』
 しゃがれ声の、マ・ニアがほくそ笑む。

『あの剣は、聖王の剣でしょう。天に上がったアト・ラティアにて、このような光景を目にするとは驚きです。ラ・ラーン、あの者にも恐らくは………』
 柔和な声のトゥーラ・ンも、舞人に興味を示した。

『ウム。我らが主たちの血が、流れているのであろう』
 腕を組み、舞人の顔を観察するラ・ラーン。
3体の鎧姿の古代兵器たちは、戦いの行く末を見守った。

「グオオォォ、こ、この程度の低級亡霊が……このアクトをいつまでも、縛れると思うなッ!!」
 アクト・ランディーグの覇気が、纏わり憑かれた死霊たちを蒸発させる。

「ソウカ。デモ、モウ ソロソロ ゲンカイ ジャ ナイカナ?」
 再び、真紅のジェネティキャリパーを天に掲げる舞人。
今度は更に多くの亡骸から白いモヤが顕れ、疲弊した海龍を襲った。

「ツイデ ニ ソッチ モ カタヅケテ ヤルヨ」
 白いモヤは、バルガ王子たちが戦っていた、3体の魔王にも襲い掛かる。

「な、なんだ……か、身体が……動かねェ!?」
「ウウ、ウソォ……これじゃ……やられちゃうっしょ!?」
「マ、マズイんだな……」

 蒼玉の魔王メディチ・ラーネウス、黄玉の魔王ペル・シア、橙玉の魔王ソーマ・リオも、白いモヤによって身体の自由を奪われ、身動きが取れなくなった。

「これは好機ですよ、兄上。今なら、ヤツらを討てます」
「戦いに、公正(フェア)なんて無ェのは判っちゃいるが、どうもこう言うのはな……」
「では、見過ごしますか?」

「そうも行かんだろう。さっさと決着を付けて、アイツをどうにかしてやらねェとな」
 王子の視線の先の、漆黒の髪の少年は、口元に悦楽の笑みを浮かべていた。

「悪いがお前ら、オレの黄金の長剣『クリュー・サオル』で、再び黄金像に変えてやるぜ」
 意を決し、3体の魔王に向けて金色に輝く長剣を振りかざす、バルガ王子。

 そのとき、蒼き龍が王子たちの前へと舞い降りた。

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