ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP001

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ポスティング

「なあ、雪峰。この書類は、これでいいか?」
「ああ、OKだ。倉崎さん、一応目を通して置いてください」
 事務所に入るなり、慌ただしい会話が聞こえて来る。

 そう……デッドエンド・ボーイズは、河川敷の練習場の近くに、事務所を手に入れていた。

「お、一馬が来たぜ」
 ベージュ色のソファーに寝そべって、マンガを読んでいる黒浪さん。
事務所は、廃業した印刷会社だった3階建てのビルの3階にあり、地下には駐車場もあった。

「来たじゃ無ェよ、お前も手伝え」
「オレさま、そーゆーの、マジ苦手なんだケド」
「書類の作成なんざ、オレだって苦手だ。時間無いんだから、早くしろ」

 紅華さんにマンガを取り上げられる、黒浪さん。

「イソギンチャクのヤツは、下で千鳥さんと一緒なのにな。オレさまも、下で作業したかったぜ」
「金刺は、動画編集ができるだろ。お前はせいぜい、荷物運びだろうが」
「ウッセー。動画編集さえ覚えれば、オレさまだって千鳥さんと……」

 建物の1階と2階には、動画制作会社である、サーフィス・サーフィンズが入っていた。
デッドエンド・ボーイズは、空いていた3階を使わせて貰うカタチになる。

「しっかし雪峰。こんな調子で、今年のリーグ戦参戦に、ホントに間に合うのかよ?」
「加盟申請の書類は、全て整えて送ってある。後は、許諾を待つだけなんだが……」
「中々、認可が降りないのですよ、紅華くん」

 ウチの有能なブレーンでもある、雪峰さんと柴芭さんが言った。

「でもさあ。4月の後半には、地域リーグも始まるんだろ?」
「お前のマジックで、なんとかならないのかよ、柴芭ァ!」

「なんとかしたいところですが、こればかりはどうも……」
 チラリとチームオーナーの方を見る、占い魔術師。

「デッドエンド(行き止まり・行き詰まった)・ボーイズと言う、名前通りになって来たな」
 他人事のように、椅子の背もたれに伸びをする倉崎さん。

「……倉崎さん、それシャレになってないですよ」
 呆れる、紅華さん。
他のみんなも、似た顔を浮かべていた。

「オレも黒浪と同じく、事務作業はどうも苦手でな」
「倉崎さんの場合、経理から他企業とのコンタクトから、ホームページの制作やSNSでの宣伝まで、全て雪峰か柴芭任せっスからね」

「イ、イヤア、優秀なスタッフが居てくれて、助かってるよ」
「逆に2人が居なかったらと思うと、ゾッとしますって。しっかりしてくださいよ、倉崎さんがオーナーなんスから」

「わかってるよ。ここを借りるだけでも、けっこう借金してるんだ。もう後戻りは、出来んさ」
 ため息交じりに、社長のデスクに突っ伏す倉崎さん。

 事務所やマイクロバスの経費は、高校生である倉崎さんの財布から出ている。
Zeリーグ期待のスーパースターと言えど、チームオーナーって大変なんだなあ。

「一馬、ビラ配りに行こうぜ。事務所作業より、マシだろ?」
 黒浪さんが、大量のチラシの束を持って来て言った。

「しかし、カラープリンターが使えたのは幸運だったな」
「だよな。だってこれ、メッチャ綺麗にプリント出来てるぞ」
 雪峰さんに言われ、デッドエンド・ボーイズの宣伝チラシを1枚取って眺める黒浪さん。

「元は、前の印刷会社でも使われていた、高性能レーザープリンターですからね。流石に輪転機まではムリでしたが、パソコンなども数台引き継がせて貰いました。せっかくのご厚意です。有難く、活用して行きましょう」

 柴芭さんの話では、廃業した印刷会社から、プリンターやパソコンを数台、譲り受けたみたい。

「一馬も、半分持ったな? んっじゃ、ちょっくら行って来るぜ」
「お前たち、少し待ってくれ。実は、ポスティングの仕事も引き受けていてだな……」
「ふェ、どゆコト?」

「つまりはだな。近所の会社や店舗からも、ポスティングの依頼を受けている」
「1枚配るも、5枚配るも変わらないですからね。こうやってチラシを折って、あらかじめ5枚で1セットにして置くんです」

「なんだか、折り紙みて~だな。よし、オレさまたちもやってみようぜ」
 ボクは、コクリと頷く。
やってみると、確かに折り紙みたいだ。

「今日は、初日だからな。事務所近辺のこのエリアに、チラシを投下して来てくれ」
「なるホド、まずは肩慣らしってトコだな」

「そうだ。いずれは自転車を使って、遠方まで行って貰う。人の家やマンションに、無断で入る場合もあるんだ。くれぐれも、失礼の無いようにな」

「わ、解ってるケドさ。もし相手が切れまくって来たら、どうすんだよ?」
「現場でなんとも出来ない状況になったら、事務所に振ってくれ。なんとか、謝って収めるから」

 や、やっぱ仕事となると、厳しいよね。
ボクは戦々恐々としながら、チラシを抱えて事務所を出て行った。

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