ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・63話

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激闘(フィアス・ファイティング)

「ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい……目の前が真っ暗だ!?」
 まだ微かに残る意識で、舞人が思った。

 けれどもそれは、最後の意識となる。
目は真っ赤に燃え、全身は黒い毛と皮膚に覆われ、背中からは6枚の漆黒の翼が生え始めた。

「イ、イカンのじゃ、ご主人サマのヤツ、完全に自我を……のわッ!?」
 宙を飛ぶルーシェリアに向け放たれた雷撃が、彼女の翼に直撃する。

『小娘風情が、この大魔王ダグ・ア・ウォンを相手によそ見などと、笑わせてくれるわ』
 大魔王は、4つの腕それぞれに雷球を生成し4方へと放つ。
雷球は、辺りにあった雲を纏い、巨大な龍の姿へと変貌を遂げた。

「水の龍(ウォータードラゴン)に、城のゴーレム(キャッスルゴーレム)の次は、雲の龍(クラウドドラゴン)じゃと。海底都市の王だった男が、節操がないのォ」

 襲い来る4体のクラウドドラゴンに対し、イ・アンナによる重力攻撃で、対処を試みるルーシェリア。
けれどもクラウドドラゴンは、重力攻撃で四散したかと思うと、再び別の場所に実体化して見せる。

『巨大な嵐とは、巨大な大洋が生み出すモノよ。故にこの3又の槍は、天候をも支配できるのだ』
 ダグ・ア・ウォンの持つトラシュ・クリューザーが、大海原の上に巨大な積乱雲を生み出し続けた。

「これはまた……厄介じゃのォ」
 当初は4体だったクラウドドラゴンは、今や無数に増えて黒雲の中を駆け巡っている。

『言ったであろう、我は大海原の大魔王にして、地震と軍隊の大魔王ぞ』
 その言葉通り、ルーシェリアの目の前にはクラウドドラゴン、ウォータードラゴン、キャッスルゴーレムが立ちはだかっていた。

「クッソ。オヤジのヤツ、とんでも無ェ能力を身に付けやがったな!」
 3体の魔王を向こうに回す激戦の中で、バルガ王子が言った。

「どうします、兄上。今のところ、優勢なのはあの少年くらいですが、あの力は……」
「ああ、もはや暴走状態だ。完全に、自我を失ってやがるぜ!」
 弟のギスコーネすら危惧する舞人の暴走に、手をこまねくコトしか出来ないバルガ王子。

 けれども暴走した舞人によって、サタナトスは確実に危機を迎えていた。

「まさか、これホドまでとは。魔王や邪神どもから奪った力を、完全に侮っていた……」
「ガアアアァァァーーーーーーオ!!!」
 激しい咆哮を上げ、舞人の漆黒の爪がサタナトスを捕らえる。

「グハッ!?」
 胸に4筋の傷が付き、血飛沫を上げて吹き飛ばされるサタナトス。

「お、おのれ……人間風情が。このボクに、傷を付けるな……にィ!?」
「お、お前を倒せば……パレアナがァァァーーー!!」
 舞人の脚の爪が、金髪の少年を蹴り飛ばした。

『ククク、余裕ぶっていたクセに、随分と苦戦をしておるではないか。小僧よ』
 黄金の戦士、ラ・ラーンが、サタナトスを皮肉る。
けれども、返答は返って来なかった。

『フッ、やはり彼奴(きゃつ)は、覇王の器では無かった様だな』
 瓦礫に埋もれたサタナトスに背を向け、クシィ―の元に歩み寄る黄金の戦士。

『どうじゃろうな、ラ・ラーンよ。王とは、個の武勇のみ優れていれば良いと言うワケでは、無かろうて。匹夫の勇など、部下が持っていれば事足りるのじゃよ』
 ハスキーな少女の声が、ラ・ラーンを引き留める。

『なにを言っておる、マ・ニアよ。彼奴の命運は、あの少年によって絶たれ……ム?』
 振り返ったラ・ラーンの金色の兜の先に、倒れたサタナトスの前に立つ紫色の龍の姿があった。

「そこを……どけ。そいつを殺して……ボクは……」
 魔力を全開にした為か、僅かに自我を取り戻す舞人。

「残念ながら、そうは行きませんな。このお方は、我が王が傅(かしず)く主。討たせるワケには、参りませぬ」
 紫色の海龍は、深紅に輝く槍を構えた。

「それならまず……お前が死ね!」
 暗黒のオーラを纏った舞人が、紫色の海龍に襲い掛かる。

「フッ、いくら強大な魔力を振りかざそうと、このアクト・ランディーグは抜けはせぬ!」
 深紅の槍が、舞人の心臓に狙いを定めた。

「ガハッ……グウウァ!」
 舞人は咄嗟に両腕で、深紅の槍を握り受け止める。
けれども神速の槍は腕をスリ抜け、舞人を吹き飛ばす。

「ほう。我が一撃の急所を外すとは、中々に面白い」
 アクト・ランディーグは、再び槍を身構えた。

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