ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・57話

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対峙する者たち

「パレアナを……返してもらう!」
 ジェネティキャリパーを構える舞人の顔は、苦痛と焦りで歪んでいた。

「そんなに大事な女なのかい。だったら、尚さら渡したくなくなるね」
 対するサタナトスは、余裕の表情でプート・サタナトスを身構える。

『ガハハ。小童が、大魔王たるこのダグ・ア・ウォンが居るコトを忘れたか?』
 サタナトスの前に立つ、蒼き龍の大魔王。

「無粋なヤツじゃのォ。お主は海皇でありながら、場の空気が読めんのか?」
「ナマイキな小娘よ。このお方は、大魔王ダグ・ア・ウォン様であらせられるぞ」
 蒼き龍の傍らに立つ、アクト・ランディーグが反論する。

「それがどうしたのじゃ。つい数刻前に、大魔王となったに若造に過ぎぬわ」
 少女の漆黒の髪がフワリと広がり、ワイン色の瞳がより一層紅く輝く。

「この冥府の魔王にして暗黒の魔王・ルーシェリア・アルバ・サタナーティアに対し、無礼であろう?」
「フン、身の程を弁(わきま)えぬのは、キサマの方だ。今はただの小娘に過ぎぬキサマの相手など、このわたしで十分だ」

「いいや、アクト。テメーの相手は、オレがしてやるぜ」
「……なッ、バルガ王子!?」
「海底神殿で戦ったときの決着が、まだだったよな」

「大魔王様に叩きのめされたボロボロの身体で、このアクトの相手が務まるとお思いか?」
「こっちも多少は、修羅場を潜り抜けて来たんだ。試してみる価値はあると思うぜ」
 黄金色の長剣を抜き、紫色の海龍と切り結ぶバルガ王子。

『グクク、アクトのヤツめ。我が息子を相手に、熱くなっておるわ』
「ではこちらも、そろそろ始めようとするかの?」

『良かろう。おのれの力が解らぬ小娘など、瞬殺してくれるわ』
 紅とも黄金ともつかない色で輝く宝剣を手に、蒼き龍は縦方向にトルネードを創り出す。

「デカい図体のクセしおって、なんとも器用なマネをするではないか……じゃが!」
 ルーシェリアが剣を振りかざすと、その身が上空へと跳ねあがった。

『フム、重力を操る剣か……面白い!』
 蒼き翼を大きく広げて、空中へと飛翔する大魔王。

「妾たちは、空中戦と洒落こもうではないか」
 漆黒の髪の少女も蝙蝠の翼を展開し、空中を軽やかに舞う。

『愚かな、我が力を存分に発現できる空を選ぶとは……一瞬で、後悔させてくれようぞ!』
 蒼き龍の周囲に、海から立ち昇った渦巻きが幾筋も伸びていた。

「海皇風情が、なにを言うか。お主に真の空中戦のなんたるかかを、教えてやるのじゃ」
 渦巻きの間を搔い潜りながら、攻撃の機会を伺うルーシェリア。

「へえ、海皇のヤツも場をわきまえて、空中戦を選択してくれたようだね」
 蒼穹の空を見上げる、サタナトス。

「行くぞ、サタナトス。今のお前なら……ボクが……勝てるハズだ!」
 ジェネティキャリパーで強化した肉体に黒いオーラを纏わせて、攻撃を仕掛ける舞人。

「ヤレヤレ……わかって無いねェ、キミは」
 サタナトスは、舞人の強化された肉体が繰り出す一撃を、アメジスト色の剣で完全に受け切った。

「な……なんで!?」
 一端、後ろへと飛び退く蒼き髪の勇者。

「言わなかったかな。プート・サタナトスのもう1つの能力は、魔族を強化できる能力なんだ」
 金髪の少年の剣を握る右腕が、筋肉で膨らみ金色の鱗を帯びている。

「グッ……ま、まさか……」
「そう、ボクにも半分は、魔族の血が流れているからね。こうやって、自分の肉体を強化できるのさ」
 サタナトスの身体が、黄金(こんじき)に光輝いた。

「それにしても、やはりボクとキミの剣はよく似ているね。まるで、双子の兄弟みたいだ」
 舞人に近づくにつれ、全身が金色の鱗に覆われたマッシブな身体へと変化して行く。

「そ、それが……なんだ……パレアナを……!」
 舞人は、ジェネティキャリパーから溢れだす禍々しい暗黒の力に、飲まれそうになっていた。

「ククク、ずいぶんと苦しそうじゃないか。キミの剣の本来の能力は、魔王を小娘の姿へと変えるのだろう。恐らく、その時に奪った闇の力で肉体を強化するのが、キミの剣のもう1つの能力だと推察するね」

 サタナトスは、苦痛に悶える舞人にゆっくりと語りかけた。

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