ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・64話

慟哭(どうこく)のミノ・テリオス

「キ、キサマは、因幡 舞人だな……」
 鏡の世界から現世に舞い戻った、魔王ケイオス・ブラッド。

 ミノ・テリオス将軍の背中を狙った、刻影剣バクウ・プラナティスは、舞人の持つガラクタ剣(ジェネティキャリパー)によって阻まれていた。

「お前が、魔王ケイオス・ブラッド!?」
 様々なパーツがゴテゴテと張り付いた剣を構える、舞人。

 ケイダンこと、魔王ケイオス・ブラッドと、蒼き髪の勇者となった因幡 舞人。
2人が出会ったのは今回が初めてであり、互いに知り得る情報だけで互いを判断していた。

「魔王ケイオス・ブラッド。お前が、自らの流した血だまりに異次元への突破口を開き、わたしを狙ってくるコトは予期していた」
 重傷を負っていたミノ・ダリウス将軍が、魔王に話しかける。

「賢(さか)しいな。オレの行動を読み、因幡 舞人を呼び寄せていたのか?」
「フッ。その通りだよ、魔王。我が剣ジェイ・ナーズは、自身が生み出した鏡でなくとも、近くにある鏡や反射する物に、干渉ができるのだ」

「そうだ。ボクは、牢屋の鏡に映ったミノ・テリオス将軍に呼ばれて、ここにやって来たんだ」
 鏡を通って、次元迷宮に足を踏み入れた舞人。

「魔王ケイオス・ブラッド。お前が、シャロリュークさんを殺ったのか?」
 カーデリアから聞いた情報を、本人に確認した。

「そうだと言ったら、どうする?」
「容赦はしない……それだけだ!」
 舞人は、ジェネティキャリパーの身体強化の能力を開放し、魔王に突っ込む。

 ミノ・テリオス将軍の鏡の剣によって、かなりのダメージを負っていた魔王は、防戦を強いられた。
強化された身体能力で、一方的な攻撃を続ける舞人。

「その剣が、サタナトスの言っていたジェネティキャリパーか。本来の能力は失われているとは言え、大したモノだな」
 バフのかかった舞人の攻撃を、何とか防ぎ切るケイオス・ブラッド。

 けれども、魔王の傷ついた身体は疲弊し、限界を迎えつつあった。

「止むを得まい。ここは、引くとしよう」
 バクウ・プラナティスで、時空を切り裂くケイオス・ブラッド。

「逃がすワケが、無いだろッ!」
「己惚(うぬぼ)れるな!」
 突進する舞人に、魔王は裂けた時空の刃をお見舞いした。

「……クッ!!?」
 寸でで身体を後ろに折り曲げ、時空の刃(ディメンション・ブレード)をかわす、舞人。
時空の刃はそのまま後ろの壁に当たり、大きな時空の裂け目を生み出した。

「ヤツの気配が、遠ざかって行く。もはや、追いつけはすまい」
 ミノ・テリオス将軍が言った。

「わ、わかるんですか……」
「ヤツの身体には、小さな鏡の欠片が無数に埋め込まれた。近づけば、探知はできるさ」
 悔しさを隠せない舞人に、冷静に答える雷光の3将が筆頭。

「冷静なんですね。ボクは、アナタみたいには居られない……」
「わたしだって、キミと同じだよ。冷静さを、装(よそお)っているだけさ」

「え?」
 予想外の将軍の言葉に、我に返る舞人。

「わたしはキミに接触する前に、アステ・リアに接触を試みた。彼女が居るハズの部屋の、鏡にね」

「アステ・リア……ミノ・アステ将軍のコトですよね」
 舞人たちが闘技場で戦った、麗しの女将軍。
闘技場に詰めかけた男たちの、羨望(せんぼう)の眼差しを1身に浴びる、美貌の持ち主だった。

「昨日までの呼び名は、そうだ。名を失った彼女は、キミも知っての通りわたしの妻となり、副官となるハズだった。だが、彼女は部屋には居なかった……」

「ど、どうしてですか?」
「正確なコトは、部屋に行ってみないコトには解らない」
 血の滴(したた)るわき腹を抑えつつ、立ち上がるミノ・テリオス。

「だが部屋には、誰かと争った形跡があり、ベッドのシーツが血まみれで床に落ちていた……」
「……ま、まさか、サタナトスのヤツが!」
 肩を貸した舞人が、ハッとした顔をした。

「サタナトス……キミに警戒しろと、忠告されていた者の名だったね」
 将軍の鏡の剣が、新たな鏡を生み出す。
鏡を抜けた2人は、1瞬でミノ・テリオスとアステ・リアが、1夜を共にした部屋に辿り着いた。

「アステ……リア。やはり……キミは……」
 床に落ちていた真っ赤なシーツを拾い上げ、泣き崩れる将軍。

 ワイン色に凝固しつつあった血だまりには、真っ白な髪の毛が散らばっている。

「サ、サタナトス……キサマはぁあぁぁァァアッ―――――!!!」
 舞人は無意識に、ジェネティキャリパーをおもいきり床に叩きつけていた。

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