ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP046

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カウンターVSカウンター

「まあ、良いさ。テメーらのサッカーが、正しいとしてだ……」
 千葉委員長に、にじり寄って行く岡田 亥蔵。

「サッカーに正しいかどうかなんざ、関係無ェってコトを教えてやるぜ!」
 曖経大名興高校サッカー部のキャプテンは、後輩のストライカー目掛けて思い切り頭を振った。

「グアアアッ!」
 顔面に頭突きを喰らって、デコボコのグランドに倒れ込む千葉 蹴策。

「ち、千葉。大丈夫か!?」
「オンシ、なにかましとんき!?」
 藤田さんと彩谷さんが、倒れた委員長を助け起こす。

「お、お兄ちゃん!?」
 ウチのベンチで、剣道のお面の少女が悲鳴のような声を上げた。
助け起こされた千葉委員長の額からは、真っ赤な血が流れ、紫色のユニホームも赤く染まっている。

「ああ、ワリィ。オレの進路に、たまたまテメーが居やがったんでな」
 岡田 亥蔵は、千葉委員長ら1年生に背を向けたまま、ボクの横を通り過ぎてホームコートへと戻って行った。

「……!!?」
 ボクは、背筋が凍る思いと言うのを感じる。
何故ならば、すれ違った男の額からも、大量の血が流れ出ていたからだ。

『ピ―――ッ!』
 8―6と、サッカーの試合とは思えない数字が刻まれた、スコアボード。
試合が再開され、柴芭さんが今度はボクにボールを渡した。

 どうする……なんて、迷ってる時間はない。
残された時間で、最低2点は取らなきゃ同点にすらならないんだ。

 ボクは、ドリブルを開始する。
ホームチームの曖経大名興高校サッカー部が、ショートパスをあまり使わない理由。
このジャガイモ畑みたいなピッチじゃ、パスの精度が落ちるからだ。

「ここは、通さん!」
「ここで止めちゃるき」
 鬼兎さんと彩谷さんのダブルボランチが、ボクの進路を塞ぐ。

 まずは、彩谷さんをスピードでかわす!
ボクは即座に、頭で思い描いたプレーを実行に移した。

「おわ、あっぽろけェ!」
 意味は解らないが、驚いてるみたいだ。
ボクは次に、鬼兎さんを抜こうとした瞬間。

「げにまっこと、さどい(すばしっこい)お人よ。じゃけんど……」
 緩急でかわしたと思っていた彩谷さんの足が、後ろからボールをつついた。

「あ!?」
 ボールはボクの足元から離れ、鬼兎さんの方へと転がって行ってしまう。

「ナイスだ、彩谷」
 鬼兎さんはボールをトラップすると、直ぐに右サイドへと展開してしまう。
右サイドには、藤田さんが待ち構えていた。

 うわ、マズい。
また、カウンターだ!

「よし、もう1点取れば、完全にウチの勝ちだ」
 パワフルなドリブルで、藤田さんが右サイドを駆け上がる。
そこに、汰依さん、蘇禰さん、那胡さんの3人が詰めた。

「今度こそ、お前を通さない」
「汰依、2人で挟むぞ!」
 1人のディフェンスで突破を許した相手に、今度は2人がかりで止めに入る。

「何人来ようが、結果は同じだ!」
 汰依さんと蘇禰さんを引きずるように、強引に突破する藤田さん。

「お2人とも、ナイスファイトであります!」
「なにィ!?」
 すると、杜都さんが得意のタックルで、藤田さんからボールを奪った。

「杜都、こっちだ!」
「おう!」
 杜都さんから、蘇禰さんにパスが出る。

「金刺、あとは頼んだぞ」
「よっしゃ、任せとき!」
 サーファードリブラーは、ボールを受け取ると金髪ドレッドを靡かせ、ドリブルを開始した。

「ゴール前、走りますよ、御剣くん!」
 柴芭さんの指示に、コクリと頷く。
柴芭さんはニアに、ボクはファーサイドに走り出した。

「鬼兎は8番に付け。オレは、10番を押さえる」
 リベロの斎藤 夜駆朗が、的確な指示を飛ばす。

 このとき、ボクは柴芭さんの考えがなんとなく読めたし、向こうもボクのプレー意図を読んでくれたのだろう。
ボクたちは、互いに進路をクロスさせる。

「な、なんだと!?」
「進路をクロスさせて、走り込むポジションを変えやがった!」
 ほんの一瞬、斎藤さんと鬼兎さんのマークがルーズになった。

「後は頼むで。決めたれや!」
 右サイドバックが居なくなった左サイドを突破し、金刺さんが高めのクロスを上げる。

「よし、見事なボールです。これを、決めれば……」
 ボクに替わってファーサイドに走り込んだ、柴芭さん。

 占い魔術師が、優雅に宙を舞った。

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