ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP050

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ロスタイムの死闘

 ペナルティエリアの左右を、並走する2人のストライカー。

「よし、ナイスボールだ、藤田」
 右からのアーリークロスは、左を走る1年生ストライカーに向っていた。

「これで、決める!」
 トラップには行かず、直接ヘディングでゴールを狙おうとする、委員長。

「なにィ!?」
 ……だけど、やらせない!
ここで決められたら、ボクたちの負けが確定する。

 ボクは後ろから追いついて、ヘディングでクロスバーの上にクリアした。
既定の時間が過ぎ、試合はついにロスタイムに突入する。

「残念だったな。あのナマイキな1年は、手を抜く気は無いらしい」
「とうぜんですよ、岡田先パイ。アイツは、そんなコトをするヤツじゃありません」
 鍔迫り合いをする、千葉委員長と岡田さん。

「つづのォて(辛くて)しょうがなかが、こんが最後のプレイじゃき……」
 ボクのクリアによって、コーナーキックが与えられ、キッカーには彩谷さんが立った。

「オレが、ニアに入る。一馬は、ファーに入ってくれ。汰依(たい)は、オレのポジションを頼む」
 雪峰さんが近いサイド、ボクが遠いサイドのゴール内に直接に入って、海馬コーチをカバーする。

「千葉……決めてみせるがじゃ!」
 さっきまでへばっていた彩谷さんだったが、右脚でカーブをかけた完璧なボールが入って来る。

「クリアだ。陰謀にまみれた、このボールさえクリアできるならば……」
 センターバックの龍丸さんが、長身を活かしてジャンプするものの、届かない。
ボールは、ペナルティエリア中央に走り込む、千葉委員長に向かって落ちて行くかに見えた。

「貰った」
 けれども、龍丸さんの背後から人影がジャンプする。

「マズい、岡田だ!」
 車椅子から身を乗り出し、叫ぶ倉崎さん。

 指摘した通り、岡田さんが宙を舞い、ヘディングでコースを変えてシュートに持って行く。
ボールは千葉委員長を頭上を越えて、ゴール右上に吸い込まれようとしていた。

「なんだとッ!?」
「一馬、お前……」
 ボクは岡田さんのシュートを、ヘディングで阻止する。

 ……雪峰さん、流石だ。
ファー(遠いサイド)にボールが流れるトコも、予測してボクを入れたんだ。
ボールは、左センターバックの亜紗梨(あさり)さんが受け取った。

「ナイスだ、御剣くん。ここから、カウンターだ」
 亜紗梨さんは、そのままドリブルでボールを持ち出す。

「亜紗梨のヤツ、もうロスタイムだってのに、ずいぶんと大胆なプレイをしやがるぜ!」
 ベンチで、同僚のプレイに固唾を飲む紅華さん。
ピッチでは、審判が時計をチラチラと見ている。

「ここは、止める。そして、もう一回アーリークロスだ!」
 左サイドを駆け上がる亜紗梨さんに、藤田がさんが襲いかかる。

「ボクの役目は、ここまでだ。後は、頼んだぞ」
 詰められる前に、ボールは柴芭さんへと渡った。

「さて、どうしたモノでしょう。ゴールまでには、抜かなければならないプレーヤーが、3人は居る」
 ボランチの鬼兎さん、リベロの斎藤さん、キーパーの伊庭さんが、柴芭さんの前に立ちはだかった。

「今のボクに、どこまでの精度のシュートが撃てるか解りませんが、一か八か狙ってみましょう!」
 占い魔術師は、華麗なステップでボールを右に持ち出し、シュートを放った。

「ありゃ、柴芭のヤツ、おもいっきりゴールの枠を外してないか?」
「よく見ろ、クロ。アレは、フットサル大会のときに、アイツ自身が見せたシュートだ!」

 紅華さんが言った通り、ミドルレンジから放たれたシュートは、ゴールの右に外れたかと思いきや、左にスライドして急激に枠に入って来る。

「ウスッ!」
 伊庭さんが横っ飛びするものの、そのキーパーグローブの先をボールがすり抜けた。
弧を描き、ゴールネットに向かうシュート。

「柴芭のヤロウ、相変わらずとんでも無ェ、シュートスキルだぜ」
「あんなの、ぜってー取れないジャン。決まったな」
「イヤ、黒浪。シュートに精度が無い。ゴールポストだ」

 倉崎さんが言った通り、フルタイムを走り抜いた柴芭さんのシュートは精度を欠く。
ゴールポストに当たって跳ね返り、右の方へと転がって行った。

「よっしゃ、ワイのボールや!」
「そうはさせん!」
 ルーズボールに、金刺さんと鬼兎さんが詰める。

 2人の競り合いは、金刺さんが先にボールに触ったモノの、直ぐに鬼兎さんのスライディングタックルでクリアされた。

 審判が、笛をくわえ手を挙げようとしている。

 ボールが、ボクの方に……。
クリアボールは、ボクの前に転がって来た。

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