ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP047

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思わぬ得点者

「ここは任せろ、なんとか追い付いて見せる!」
 ポジションチェンジにより、一瞬だけ引き離せた斎藤さんが、凄まじい勢いで戻っていた。
柴芭さんが跳ぶよりも遅れて、斎藤さんがジャンプする。

「クッ……」
 競り勝った柴芭さんだったが、ヘディングでのシュートコースを限定されてしまう。
伊庭さんを抜けないと判断した柴芭さんは、ポストプレー気味にマイナス方向にボールを落とした。

 ナイス判断だ、柴芭さん。
そこには、ボクが走り込んでいた。
ペナルティエリア真正面……ボクが決め……!?

「させるかよ。ここさえ凌ぎ切れば、完全にオレたちの勝利だ。だが、この試合の勝利よりも、大事なモノがかかってるんでな」
 ボクの背後から、鬼兎さんが迫っていた。

 だけど、ボクの方が早い!
ここは……シュートだ!
ボクは思い切って、シュートを放った。

「ウス!」
 短い気合の言葉と共に、ブラックシャドウ(黒蜘蛛)とあだ名されたキーパーの長い腕が伸びる。

「よし、ナイスだ、伊庭!」
 ボクのシュートは、伊庭さんの手を弾き、クロスバーに当たって大きく跳ね返った。
晴れた空から落ちて来るボールは、鬼兎さんの胸元に納まる。

 ……前に、ボクが触る!
胸トラップをしようとしていた鬼兎さんの横から、頭を出してボールを横に弾いた。

「ナイスだ、一馬!」
 ボールを受けた汰依さんが、無人のゴールにボールを流し込んだ。

「マ、マジかよ。汰依のヤツ、ゴールを決めやがった!?」
 ベンチに下がった紅華さんが、中学時代からの同僚のゴールに驚いている。

「なに驚てるね、紅華。彼は地味だケド、サッカーをよく知ってるプレーヤーよ?」
「ま、まあそうなんスけどね。昔のアイツなら、ボランチのポジションを離れるコトは無かった。中学時代から、かなり実力を上げて来やがったな」

「フゥ~ム、これは評価を改める必要があるかも知れないね」
「汰依の評価っスか?」
「違うね。彼らを育てた、コーチの方よ」

 セルディオス監督の視線は、自分と同じような腹のキーパーを見ていた。

「チッ、また1点差にされちまったじゃねェか」
 岡田さんが、真っ赤な額を水筒に入った水で洗い流しながら、同じ行動を取る千葉委員長に向かって文句を言った。

「アイツらは、優れた選手です。ですが、一馬も……」
「ああ、あのクソ生意気な1年か。確かにこの試合、顔色1つ変えずに淡々とプレーをしてやがる」

「アイツとも、同じチームでプレイしたかったんですがね」
「うっせーよ。入部届け叩きつけるヤツなんざ、入れられるかってんだ」
 髪型を整え、コートへと戻って行く、曖経大名興高校サッカー部のキャプテン。

「オレも、良かったと思ってますよ。アイツと戦えるってのも、悪くは無いですから」
 ウチのクラスの委員長も、先パイの後を追った。

「オイ、彩谷。この試合、中盤はオレとお前が何とかするぞ」
「行かんちゃぁ鬼兎、なに言ゆうがや。ワシはこん試合、だらしゅうて……」
「グダグダ言ってないで、行くぞ!」

 8-7となった試合は、彩谷さんと鬼兎さんがセンターサークルに立ち、試合を始めた。
その左右に位置した岡田さんと千葉委員長が、ゴールに向かって走り始める。

「さて、どないする。あの彩谷っちゅうヤツ、ごっつぅドリブルが……」
「あ、御剣くん!?」
 金刺さんと柴芭さんが、驚いている。

 ボクはいち早く、彩谷さんにマークに着いた。
恐らくこの試合、キーマンとなるのは彩谷さんだ。

「ちゃあ。ワシャ、手に合わんわ。ホレ、鬼兎」
 彩谷さんは、ボクを突破もせずあっさりと横パスを出す。

「そう言うコトでしたら、彼のマークはボクが引き受け持ちましょう」
 パスを受けた鬼兎さんの前には、柴芭さんが立ちはだかった。


「クッ……足元で受けては、コイツを抜くのは厳しいか」
 柴芭さんを前に、微動だにできない鬼兎さん。
そのボールが、いきなり誰かに奪われる。

「な、なんだすって!?」
「お、お前は……」
 競り合うハズだったボールが無くなり、唖然とする柴芭さんと鬼兎さん。

「ワシャ、ごくどう(怠け者)なんじゃがのォ」
 ボールを奪ったのは、彩谷さんだった。

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