ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP026

躍動(やくどう)する才能

「マズいぜ、イヤなトコ飛んでやがる!」
 紅華さんが、叫んだ。

 トラヤさんが左からカットインして放ったシュートは、少しループ気味にカーブがかかっていて、デッドエンド・ボーイズのゴールの左上隅に向かって行く。

「せっかく御剣くんが、1点を返してくれたのに……ここで入れさせはしない!」
 左センターバックの、亜紗梨(あさり)さんがジャンプして対処しようとした。

「甘いな、日本人。ヘディングの、手本を見せてやるぜ!」
 亜紗梨さんの前で、チェニジア人ストライカーのバルガ・ファン・ヴァールさんが、屈強な身体をバネにして、亜紗梨さんより頭1つ分高く跳ぶ。

「クッ……うわッ!」
 空中で身体が接触し、吹き飛ばされる亜紗梨さん。
バルガさんは強烈なヘディングを、ゴールの左下に向け叩き付けた。

「ま、間に合わねェ……おッとッとォ!?」
 海馬コーチが自身の左腕側に飛んで、ヘディングシュートを止めようとするも、不摂生(ふせっせい)が祟(あった)ったのか、途中で足がもつれて転んでしまった。

「あ痛てッ!」
 地面に叩き付けられる、肥満体。
けれども偶然にも、伸ばした左腕にシュートが当たって、ボールを弾き飛ばした。

「ナ、ナイスセーブ……なのか?」
 首を傾(かし)げる、紅華さん。

「奇跡(みらくる)が起きた。よもや、裏で陰謀が渦巻いているのではあるまいな?」
 すかさずルーズボールをクリアする、龍丸さん。

 このボール……ボクへの?
 長身センターバックとしては、高いパス制度を持っている龍丸さんのクリアボールは、ボクに向かってのロングパスだった。

「御剣 一馬。お前にボールは、渡すかよ!」
 ネロさんがボクの前に出て、龍丸さんのパスをカットする。

「この試合、オレはお前に仕事をさせ無ェ。そして、圧倒的な力の差を見せつけてやる!」
 ネロさんが、そのままボールを持ってビルドアップした。

「ここは、自分に任せるであります!」
 杜都さんが、得意のタックルでボール奪取を試みる。

「ヘッ、甘いっての!」
 ネロさんはチップキック気味に、つま先でボールを浮かせてかわした。

「随分と、舐められたモノですね」
 中盤に戻っていた柴芭さんが、浮いたボールを奪い取る。

「し、しまッた!」
 慌てるネロさんだが、体勢が崩れてボールを追うのが遅れた。

「さて、ボクもボク自身の技術(スキル)がどこまで通用するか、試してみましょう」
 今度は柴芭さんが、ボールを持ち上がって、フルミネスパーダMIE側のコートに侵入する。

 替わりにボクは、中盤に残って守備のケアをするコトにした。

「まったくネロのヤツ、相手は御剣 一馬だけじゃ無いんだぞ」
 文句を垂れつつ、柴芭さんの進路を塞ぐスッラさん。

「こんなのは、どうでしょう?」
 ボールを両脚の中心に置いて、相手を誘う柴芭さん。

「マシューズ・トリックか? 随分と、古典的なスキルだな」
 スッラさんは挑発に乗らず、飛び込もうとしなかった。

「そうですか。では次のマジックです」
 足裏でボールを引き、ヒールキックで後ろへパスを送る柴芭さん。

「ナイス判断だ、柴芭」
 ボールを受けたのは、雪峰さんだった。
デッドエンド・ボーイズのキャプテンは、ボールを右へと展開する。

「うおォ! ナイスパスだぜ、キャプテン!」
 ボールは、上がり気味だった相手左サイドバックの、トラヤさんの後ろのスペースに転がった。

「クッソ、守備はまだ苦手なんだよ!」
 慌てて戻って、必至にボールを追うトラヤさん。

「ノロいぜ。オレさまのスピードに、追いつけるかっての!」
 黒浪さんが、ギアを上げて加速してボールを追うと、トラヤさんとの距離がグングンと開いた。

「な、なんだ、アイツ。とんでも無ェ、スピードだぞ!?」
 ボクの隣で、ネロさんが驚いている。

「この黒狼サマのスピードには、何人たりとも追いつけねぇ!」
 高速サーキットが併設されたスタジアムで、トップスピードでボールに追いつき、スピードを落とさずにドリブルする、黒浪さん。

「ヤレヤレ、あのスピードで裏から飛び出されたら、オフサイドトラップにかけようが無いな」
 カイザさんは、ラインコントロールからのオフサイドトラップを諦(あきら)め、黒浪さんを追った。

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