ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP014

命令違反

 ボクは、監督の指示を無視した。

 本来であればボクは、MIEのセンターフォワードのバルガさんにピタリと貼り付いて、マンマークをしなければならない。
それが、セルディオス監督からの試合前のオーダーであり、ボクもそれに従うつもりだった。

「カズマ……」
 ベンチで、監督が怒っているのが目に浮かぶ。
でも、もう後戻りはできない。

「お前のマークは、バルガだと思ったが?」
 ボールをキープしながら、ボクに話しかけて来るスッラさん。

 バルガ・ファン・ヴァールさんは、イタリアリーグでも活躍した、世界でもトップクラスのゴールスコアラーだ。
とうぜん、フリーにして良い選手じゃない。

 でも、ペナルティエリア内には柴芭さんが戻っていたし、左のセンターバックの亜紗梨(あさり)さんだって居る。
バルガさんのマークは、サッカーIQの高い2人が引き継いでくれると信じていた。

「なるホド、チームメイトを信頼しているか。だが監督の戦術を、無視して良いモノでは無い」
 スッラさんは、ドリブルでボクのマークを外しにかかる。

 ボランチとしては、高いドルブルスキルを誇るスッラさん。
だけど、紅華さんや柴芭さんに比べれば、まだまだ落ちる。

「クッ……オレのドリブルに、付いて来るとはな……」
 中々、ボクを振り切れないスッラさん。

「へッ、一馬はオレのドリブルすら、止めてたんだぜ。その程度のスキルで、外せると思うなよ」
 紅華さんが、ボクを褒めてくれていたが、ボクは知る由(よし)も無い。

「なんだァ、ボールが出て来ねェ!」
 前線で苛立つ、バルガさん。

「フッ、ウチの指揮者(コンダクター)は、スッラだ。あの10番は、ボールの出どころを潰しに来たワケか」
 前線に上がっていたカイザさんも、呟いていた。

「スッラさん、なにやってんスか。そんなヤツ、さっさと外しちゃって下さいよ」
 先輩に無礼な口を利きながらも、後ろに下がってパスコースを確保しようとするネロさん。

「うるせえな、黙って見てろ!」
 うわぁ、スッラさんって怒ると怖い!
一瞬、たじろぐボク。

「オラ、ココだ!」
 ショルダーチャージで、ボクのバランスを崩した後、ロングボールを入れようとするスッラさん。

 狙い通りだ。
スッラさんと言えど、ロングボールを入れるには体勢を整えないと行けない。

「なにィ!?」
 スッラさんの足元から僅かに離れたボールを、ボクはスライディング気味に奪い取った。

「ナイスだ、一馬。裏に出せ!」
 紅華さんが、左サイドで呼んでいる。

「させるかよ!」
 後ろに下がっていたネロさんが、パスコースを消しに来た。

 ……間に合えッ!
 ボクは、スライディングから起き上がる前に、ボールを左サイドに入れる。

「クソッ!」
 ネロさんがスライディングをして、必至に脚を伸ばすものの届かなかった。

「ヨシ、裏抜け成功だぜ!」
 鉄壁の守備を誇るハリアさんを置き去りにして、ボールを受け取る紅華さん。

 左サイドからペナルティエリア側に絞って、ドリブルをする。
中央には金刺さん、ファー(遠い)サイドに黒浪さんも詰めている。

「こんなチャンス、もう無ェかもな。ゼッテー、決めてやる!」
 左のアウトサイドで、カーブをかけたシュートを放つ紅華さん。
キーパーの右手側を狙う、意表を突いたシュートだ。

 けれどもキーパーは、右足を伸ばしてシュートに反応する。
そのままボールは、MIEのタッチラインを割った。

「クッソッ! ウチのメタボキーパーとは、大違いだぜ」
 ゴール裏に転がったボールを自ら拾い、コーナーキックを蹴ろうとする紅華さん。
するとそこに、相手キーパーが近寄って来た。

「悪いが、マイボールだ。ボールを、渡してくれないか?」
 キーパーグローブを伸ばし、ボールを要求するアグスさん。

「ハッ、なに言ってやがる。オレのシュートがお前の脚に当たって、ボールがタッチライン割ったんだろ。どう見たって、マイボールだぜ」
 紅華さんは自信満々で言い放つが、審判もコーナーに近寄って来る。

「その前のプレイだよ、キミ。オフサイドだ」
 紅華さんに向かって注意を促(うなが)す、主審。

「な、なんだとォ!?」
 紅華さんが、線審(ラインズマン)を確認すると、高らかに旗(フラッグ)が挙がっていた。

 前へ   目次   次へ