ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP041

空飛ぶ波乗り(フライングサーファー)

「さて、オレのドリブルが、どこまで通用するかだな……」
 カイザさんの統率するディフェンスラインに、斬り込もうとする紅華さん。

「まだだ。まだ完全に、オレを抜き切ってはいない!」
 けれども後ろから追走していたハリアさんが、紅華さんの横に並んだ。
ショルダーチャージを軽く当て、紅華さんの体勢を崩そうとする。

「軽々しくタックルに来ないのは、褒めてやるよ。だけどな!」
 紅華さんは左脚でボールを止め、1ステップ進んで左脚の踵(かかと)でボールを後ろに蹴った。

「な、なんだとォ!?」
 予想外のプレイに焦る、ハリアさん。
ヒールキックのボールが、立ち上がったボクの前に転がって来る。

 カイザさんたち3枚のセンターバックの、壁はある……。
でも、ドライブシュートなら狙える距離だ。

 疲れ切っていたボクの身体は、無意識にシュート体制に入ろうとしていた。

「ダメだ、一馬。ドライブシュートは、早々決まるモノじゃない!」
 ベンチで叫ぶ、倉崎さん。
でもMIEのサポーターたちの声援で搔き消され、ボクの耳には届かなかった。

「御剣 一馬、お前にシュートは撃たせん!」
 後ろから迫って来たスッラさんが、右側からボクの前へと回り込み、シュートコースを切る。

 ダメだ……シュートコースに入られた。
このまま、ボールを奪われて……。

 その時、左サイドに走っている選手の姿が見えた。

「なにィ!」
 シュートを撃つと予測していたスッラさんが、目の前で意表を突かれた顔をしている。
ボクはいつの間にか、左サイドにパスを出していた。

「ナイススルーパスや、一馬。ホンマ、よう頑張ったで!」
 ハリアさんの居ない左サイドに居たのは、金刺さんだった。

「今のは、狙ったと思うね、倉崎?」
「どうでしょうね。恐らく、無意識だったと思います」
「でも結果的に、紅華と金刺がポジションチェンジしたカタチになったよ」

 あくまで、結果的にそうなっただけだ。
チームとして動き出して日が浅いボクたちだったが、それでも少しずつではあるものの互いの特徴を知り、お互いの個性を活かすプレイを、するようになっていた。

「ワイは桃色サンゴと違うて、パスの才能はあらヘンからな。中央に斬り込むで!」
 ピンク色の髪をした紅華さんを、桃色サンゴと呼ぶ金刺さん。

「まったくしゃあ無ェな、イソギンチャク!」
 今度は、中央に斬り込んでいた紅華さんがボールを受け、左サイドに展開した。

「クソッ! コイツらポジションチェンジで、ディフェンスを崩す気か!?」
 慌てて本来のポジションに戻る、右サイドバックのハリアさん。

「倉崎さんと一馬……お前の得意技だぜ」
 左のコーナーフラッグに向けドリブルしていた紅華さんが、クライフターンで切り返した。

「コ、コイツ!?」
 バランスを崩す、ハリアさん。

「オラよ、クロスってのは、こうやって上げるモンだぜ!」
 左利きの紅華さんが身体を捻(ひね)り、左脚のアウトでボールに回転を与えて蹴り上げる。

 MIEのゴールから遠ざかるように上がったボールは、大きな弧を描いてペナルティエリアの中央に到達した。

「マイナスのボールが角度を変え、ゴールに向かって……これは、オレを狙って来ているのかッ!?」
 リベロのカイザさんが、何時になく表情を強張らせる。

「へへ……カイザさん。アンタは、確かに優れたリベロさ。ラインコントロールも守備での駆け引きも、スゲェって素直に思うぜ。だが、身長だけはどうにも出来ない!」
 クロスを上げた紅華さんが、ほくそ笑んだ。

「紅華は、身長のミスマッチを狙ったね」
「ええ。金刺は、身長こそ有りませんが、その跳躍力は……」
 腕を組んで見守る、メタボ監督と倉崎さん。

 カイザさんの前で、金髪のドレッドヘアをはためかせた波乗り(サーファー)が、大きく宙に舞った。

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