ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP013

膠着状態(こうちゃくじょうたい)

 柴芭さんの、右へと展開したパスはカットされ、スッラさんの足元に納まっている。

「焦る必要は、無い。確実にパスを繋ぐぞ」
 ゆっくりとしたドリブルで、ボールを持ち上がるスッラさん。

「悪かったな、スッラ。助かったぜ」
 ボールを失ったトラヤさんが、礼を言いながら本来の左サイドのポジションへと戻って行った。
その間にも、一瞬だけ乱れたフルミネスパーダMIEの守備陣形が整えられて行く。

「このヘンが、スッラと柴芭の実戦経験の違いね。柴芭もボランチとして、素晴らしい才能を持った選手だケド、まだまだ場数が足りないよ」
 ボクたちのベンチでは、セルディオス監督がまた、求められても無い解説をしていた。

 瞬時にチームを安定させた、スッラさん。
前線には、チュニジア人ストライカーが虎視眈々(こしたんたん)とゴールを狙っているし、最終ラインを統率するハズのカイザさんも上がったままだ。

「みんな、油断するな。ボールを奪われた後の速攻は、無くなった。各自、自分のマークを徹底だ」
 デッドエンド・ボーイズのキャプテンであり、トリプルボランチの1角でもある雪峰さんが、チームメイトに指示を飛ばす。

「トラヤ、任せたぞ」
 左サイドに戻ったトラヤさんに、パスを入れるスッラさん。

「サンキューだぜ、スッラ。攻撃なら、任せな」
 元はフォワードだった、トラヤさん。
サイドバックにコンバートされてもその攻撃性は変わらず、果敢に左サイドを駆け上がる。

「相手は、センターが分厚い分、サイドはガラ空きやな。これなら、余裕でクロスが上げられるぜ」
 トラヤさんが、左サイドから中央にクロスを放り込んだ。

「確かにサイドが弱点ではあるが、高さではウチの方が上だ。ヘディングで、負けるなよ!」
 センターバックを統率する、龍丸さんが気合を入れる。

「任せな。今度は、ちゃんと競り勝つぜ」
 ボールは、右のセンターバックの野洲田(やすだ)さんが、ヘディングでクリアした。

「オッと、読み通りだ」
 右サイドに流れたクリアボールに、ネロさんが反応する。
ボールに触れると、すぐさま低いスルーパスを、ペナルティエリアに入れた。

「させない!」
 バルガさんの足元に入る直前で、スルーパスをカットする柴芭さん。

「先ホドは、ボクのせいでピンチを招いてしまいましたからね。今度は、カットさせませんよ」
 体勢を整えた柴芭さんが、左サイドに弧を描くロングパスを入れる。
今度はボールがカットされるコトは無く、パスは紅華さんの足元に通った。

「流石は、占いマジシャン。大した、テクニックだぜ」
 紅華さんが、ボールを持って左サイドを駆け上がろうとした、瞬間。

「こちらも、お前にドリブルを許す気など無いのだよ」
「な、だんだとォ!?」
 いとも簡単に、紅華さんがボールを奪われる。

「コーナーでは、判断ミスをしてしまったからな。守備では、貢献させて貰う」
 ボールを奪ったのは、右サイドバックのハリアさんだ。

 左サイドバックのトラヤさんが、超攻撃的なサイドバックであるのに対し、鉄壁の守備力を誇るサイドバックのハリアさん。

「スッラ!」
 ボールを奪った右脚とは逆の左脚で、パスを中央に入れた。

「右で奪って、左ですぐさまパスを入れられる。両利きの、イイところね」
 ベンチで感心する、セルディオス監督。

「もう1度、組み立て直すぞ」
 膠着状態(こうちゃくじょうたい)が続く中、ボールを保持したまま、前線の戦況を伺うスッラさん。

「ス、スッラさん……」
 相方のボランチのネロさんが、視線で注意を促した。

「なんだ、お前は?」
 スッラさんの前に立ちはだかったのは、ボクだった。

「カズマ!? バルガのマーク、外しちゃダメよ!」
 ベンチから、セルディオス監督の慌て声が聞こえる。

「このオレから、ボールを奪う気か?」
 スッラさんの問いかけに、ボクは小さく頷(うなず)いた。

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