ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・60話

次元迷宮(ラビ・リンス)

「ヤレヤレ、どう言うコトだよ。これだけの距離を走っているのに、ミノ・リス王の間には一向に着く兆(きざ)しすら無いじゃないか」

 迷宮(ラビ・リンス)を走る金髪の少年が、隣を走るティ・ゼーウスに文句を言った。

「偉そうに、ミノ・リス王を部下にするなんて言って置いて、そのザマかよ。まかさ、なんの準備もして無かったとはな」
 アッシュブロンドの長髪の少年が、文句をサタナトスに投げ返す。

「心外だな、準備ならしていたさ。時空を越えられる剣を持ったヤツが居て、ソイツと合流する予定だったと言っただろ」

「ソイツは今、どこをほっつき歩いてんだよ」
「さあね。そう言うお前こそ、なんの準備もして来なかったんじゃないか?」

「それなりの準備は、して来たさ。1度、止まってくれ」
「アン、なんだい」
 サタナトスは立ち止まって、後ろを振り返った。

「この大迷宮は、立体的な構造になっている。最上層は天井もなく、回廊が剥き出しになっているから、まだ何とかなったんだがな」

「まったく……これホドまでに厄介な迷宮を、一体誰が作ったんだい?」
「天才建築家にして偉大なる発明家、ダエィ・ダルスさ」
 ティ・ゼーウスは質問に答えながら、自らの剣を具現化させる。

「オレの剣、ハート・ブレイカーはな。刀身である腸や臓物を、糸のように伸ばせるのさ。こうやって、血管みたいにな」

 ティ・ゼーウスの持つ真っ赤な剣は、刀身に動脈が脈打ち、鍔(つば)は心臓のように鼓動している。
剣の先から赤い糸のような血管が伸び、迷宮の暗闇の奥へと続いていた。

「なるホド。これで帰り道に迷うコトは、無いってワケね」
「オレも、そう考えていたんだがな」
「なにか問題でも、あったのか?」

「問題は2つ在ってな。1つは、伸ばせる血管の長さが、ソロソロ限界なんだわ。期せずして、補給を行えたのは幸運だったが、それでもな」
「ああ、女将軍の腹ワタか。確かに、刀身がかなり短くなってる」

「もう1つは、この地下迷宮に足を踏み入れてから、1度も血管同士が交わったコトがない」
「それはおかしいな。ボクらはけっこう、十字路や三叉路を通って来たハズだ。迷宮がとてつも無く広大か、それとも……」

「ああ。恐らく地下層はもっと複雑で、次元が不規則に連なっているんだ」
「どうして、それが解かる?」

「血管は独自に伸びるし、オレは伸びた血管の配置を、ある程度は把握ができる。今、オレの脳裏に映る血管のカタチは、まるで複雑に絡み合った糸さ」

 迷宮の石畳の床に、赤い粘菌のように張り付いた血管は、ドクドクと小さく脈打っている。
ティ・ゼーウスは目を閉じ、血管から伝わる情報を探っている様だった。

「これがラビ・リンス帝国の誇る、次元迷宮ってコトか。正直、舐めてたよ」
 足を投げ出し、床に座り込むサタナトス。

「だが、糸口くらいは掴めたぜ」
「ホントか?」

「ハートブレイカーの血管が、この迷宮に置いて明らかに造りが異なる部屋を見つけた」
「便利な血管だな。その部屋には、王が将軍のどちらかが居るんだろ?」
「残念ながら、行ってみないコトにはわからん」

「仕方ない。他に選択肢も無い様だし、行ってみよう」
 金髪の少年は、重い腰を上げる。
2人の少年は、血管が示した部屋までの道を進んだ。

「ココが、お前の剣が示した部屋か。まるで、牢獄じゃないか」
 サタナトスが、端正なマスクを歪める。

 部屋は、赤茶けた錆(さび)に覆われた鉄格子が前面にあって、左右の石の柱には松明(たいまつ)が灯っていた。
牢の中は薄暗く、激しく汚れていて、耐えがたい悪臭を放っている。

「そう言われてもな。血管では、細部の様子まではわからないんだ」
「オイ、見ろよ。誰か、囚われてるぞ」

「こんな地下牢にか。仮に捕らわれていたとしても、とっくに死んで白骨になってるだろ」
「イヤ、生きてる!」
 サタナトスは、両手で無理やり鉄格子をこじ開ける。

「お前、見かけに寄らすスゴい力だな」
「そんなコトより、コイツは誰だ?」
 魔晶剣プート・サタナティスが、紫色の光を放ち、牢に繋がれた人物を照らし出した。

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