ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP043

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鬼兎 鷹士(きと たかし)のスピード

「そんじゃ、いくぜ」
 ボランチの位置でバックパスを受け取った交代プレイヤーが、そのままドリブルを開始する。

 えっと、鬼兎 鷹士(きと たかし)さんだったよな。
ベンチに居たときにメンバー表を確認したケド、他に『キト』って呼べる名前無かったし。
ボクは、鬼兎さんの進路に立ちはだかった。

「お前、確か千葉のクラスメイトだったよな。千葉が、一緒にプレーできなくて残念がってたぜ」
 ハンサムな顔立ちのボランチが、ドリブルをしながら語りかけて来る。

 え、委員長が……そう言えばこの人も1年で、ボクと同級生なんだ。
「ついでに、お人良しだとも言ってたぜ」
 鬼兎さんが、ニヤッと笑った。

 ああッ!?
鬼兎さんは、ボクの前を抜くと見せて、素早いダブルタッチでボクの背後を抜き去る。

「また、面白い選手が出て来たね、倉崎」
「そうですね、監督。素早いダブルタッチと、一馬の背中を一瞬で抜けたスピード。動きの切れが、ハンパ無いプレーヤーですね」

「だけどさ。スピードなら、オレさまのが上だぜ!」
「ヤレヤレ、これだから駄犬は。アイツは、一瞬のスピードの切れで勝負するタイプだ。お前とは、スピードの質が異なるんだよ」

 ベンチで倉崎さんや、紅華さんたちが評していたコトなど露(つゆ)知らず、ボクは必死に鬼兎さんの背中を追っていた。

「さて、そろそろ仕掛けるか、彩谷」
 鬼兎さんは、グランドの中央を目視する。

「ここは、通さないであります!」
「そいつは、どうかな」
 鬼兎さんは、つま先でボールを浮かせた。

「な……これでは、スライディングが……」
「お前がスライディングタックルが得意なのは、ボールボーイをやりながら見ていた。これだけボールを浮かせれば、滑れまい!」

 ボールは、腰の辺りの高さにある。
杜都さんの得意なスライディングタックルでは高すぎ、ヘディングでも低すぎる位置だ。

「ここだ!」
「しまったで、ありますゥ!」
 鬼兎さんは、杜都さんの開いた脚の間にパスを通す。

「げにまっこと、鬼兎は恐か男が」
 パスは、グランド中央を走る彩谷さんに通った。

「ディフェンス2枚を、無力化しよったがじゃ」
 ボールボーイをしていたもう1人のボランチが、ゆるりとドリブルを始める。

「杜都たちは、1列前に上がってんだ。ボランチのオレらが、止めるぞ」
「やる気無ェドリブルだが、油断すんなよ。さっきはコイツ、杜都を抜いてんだ」
「解ってる。まずはオレが行くぜ!」

 交代で入った、汰依(たい)さん、蘇禰(そね)さん、那胡(なこ)さん。
まずは、那胡さんが仕掛けた。

「かかって来るじゃき」
 脚の裏でボールを引いて、那胡さんをかわす。

「次は、オレだ!」
 蘇禰さんが、彩谷さんの引いたボールを狙っていた。

「ノホホ、こりゃ勇ましい」
 彩谷さんは、ヒールで蘇禰さんの股を抜く。
けれどもボールは前に出ず、大きく右に転がっていた。

「よし、貰ったぜ」
 ボールが転がった先には、汰依さんが待ち構えている。

「彩谷、まったくお前は詰めが甘いんだよ」
「なにィ!?」
 汰依さんに収まるかと思われたボールは、鬼兎さんがカットしていた。

「今度こそ、仕事しろよ」
「わかっちょるき、任せときィて」
 鬼兎さんのパスを受ける、彩谷さん。

 デッドエンド・ボーイズの3人のボランチを、大きく引き離し右サイドを疾走していた。

「ワシがこのまま決めちゃるのも良かが、一応は先パイ方との勝負もかかっちょるきぃのォ」
 彩谷さんが、ペナルティエリアにアーリークロスを入れる。

「ナイスクロスだ、彩谷」
 左サイドから、ペナルティエリアを横切るように進入する、千葉委員長。

「よし、まずはハットトリックだ」
 クロスを、足先を面にして合わせ、ゴール左隅へと沈めた千葉 蹴策は、そのままペナルティエリアを抜けると、右サイドの彩谷さんとハイタッチをした。

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