ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP044

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藤田 彪季(ふじた たけき)

「オイオイオイオイ、お前らなんで、そんなにやれてるんだよ!?」
 ボクたちが言うべき台詞を、ナゼか相手チームの仲邨さんが言った。

 ゴールを決めたのは千葉委員長だったが、そこまでボールを繋いだのはさっきの交代で入って来た2人のプレーヤーで、それまでの彼らはボールボーイとしてグランドを取り囲んでいたからだ。

「お前ら2人とも、練習じゃゼンゼン目立ってなかったじゃねェか。とくにチリチリ頭、オメーのやる気の無さは、ウチの部1番だって評判だぞ!」

「仲邨先パイは、けんまい(細かい)のォ。練習はシンドイきに、あんくらい普通じゃか。のォ、千葉。おんしも、そう思うじゃろ?」

「サボったコトを、堂々と当たり前のように言うなよ、彩谷。そこは、先パイが正しい」
「……チャア。おんしも、厳しか~」
 根が真面目な委員長は、彩谷さんの主張に同意しなかった。

「オイ、千葉。コイツらの名前は?」
「クセ毛の方が、 彩谷 桜蒔朗(さいたに おうじろう)。背の高い方が、鬼兎 鷹士(きと たかし)。才能はまあ、見ての通りです」

「見ての通りじゃ無ェよ、まったく。コイツらが出てりゃ、桃井が潰れるコトも無かっただろうが!」
「仲邨先パイ、なに言ゥちょるがや。ワシらが最初から出よったら、今頃のう(具合)が悪のうてそこらで転がっちょるきに」

「オイ、お前……鬼兎だったか、訳せ」
「要するに練習不足の我々に、1試合持つ体力があるワケがないと……」

「マジで、堂々と威張ってんじゃ無ェよだな。いいか、せめてこの試合くらいは持たせろ!」
 顔を真っ赤にした仲邨さんは、1年生の集団から離れて行った。

「また、1点ビハインドですか。スミマセン、相手を侮ってました」
 柴芭さんが言った通り、スコアボードには7-6の数字が並んでいる。

「交代したんは、ボールボーイやってたヤツらや。油断するなっちゅう方が、無茶やで」
「自分は少し、守備寄りにポジショニングするであります」
「ええ、そうして貰えますか。攻撃は、ボクと金刺くん、御剣くんでなんとかしますから」

 十何度目だかのホイッスルが鳴り、センターサークルから柴芭さんが左サイドにボールをはたく。

「確かに真ん中には、厄介なヤツらが入りよったが、サイドの弱点はそのまんまや!」
 金髪のドレッドヘアを揺らしながら、軽快にライン際をドリブルする金刺さん。

「甘いな……」
「な、なんやてェ!?」
 けれどもサーファードリブラーは、あっさりとボールを奪われる。

 そう言えば、さっきの交代で入ったのは4人だった。
金刺さんからボールを奪った、相手の右サイドバックも交代していたんだ。

「オレは、彩谷や鬼兎みてェなテクニックは無いが、パワーならオレが上だぜ!」
 ボールを奪った選手は、力強いドリブルでライン際を持ちあがる。

「藤田、こっちじゃき!」
 彩谷さんが、ボールを貰いに近づいた。

 うわあ、マズイ!?
ボクは慌てて、間に入ってパスコースを潰す。
けれども藤田と呼ばれた選手は、パスを出さずにサイドを突き進んだ。

「このまま突破なんて、させるかよ!」
「オレたちで、止めるぜ!」
「まずは、勢いを消してやる!」

 さっきの交代で入った、汰依さん、蘇禰さん、那胡さんの3人。
今度は、汰依さんがプレスをかける。

「その程度のプレッシャーで、この藤田 彪季(ふじた たけき)が止められると思うな!」
「ぐわぁ!?」
 激しいコンタクトプレイで汰依さんを吹き飛ばし、躊躇なく強引な突破を図る藤田さん。

 すでにセンターラインを越え、オーバーラップする右サイドバック。
ペナルティエリアでは、2人の狡猾なストライカーが動き始めていた。

「これ以上、やらせるかよ!」
「ここで、止める!」
 蘇禰さん、那胡さんの2枚で、藤田さんの前方の進路を塞ぐ。

「ならば、こうだ」
 藤田さんはボールを止めると、そのまま大きく右脚を振りかぶった。
直線的な軌道のボールが、右サイドから放たれる。

「こ、これは、センタリングじゃなく、サイドチェンジでありますか!?」
 頭上を通り過ぎるボールを、見送るしか無い杜都さん。

 ボールの行き先には、左サイドバックが走り込んでいた。

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