ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP048

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革命家の試練

「アイツ、味方にボール預けて、味方からボール奪ったぞ!?」
 足を負傷しベンチに下がった、黒浪さんが言った。

 あまりにも、奇妙なプレイ。
サッカーの試合では、ほぼ見かけるコトのないアクションに、ボクたちに隙が生まれる。

「ほいたら、行くがじゃ!」
 彩谷さんが、ドリブルを開始する。
それは今までの、やる気の無いドリブルでは無かった。

「ア、アイツ、あんなスピードも出せるのかよ!?」
 ボクの隣で、味方であるハズの仲邨さんが驚いている。

「マ、マズイであります!?」
「こ、ここは、戻らなくてはなりません!」
 前がかり気味だった、杜都さんと柴芭さんが、慌てて帰陣する体制に入る。

 けれども彩谷さんは、すでにペナルティエリアの正面にまで来ていた。

「千葉、オンシがまっこと真の革命ば望んどるなら、ほいたらワシャ全力出したるんじゃがの」
 彩谷さんは足先で、ボールの下を蹴る。
チップキック……目の前のセンターバック、龍丸さんの頭上をフワリと越した。

「彩谷……これは、オレへの試練か!」
 千葉委員長が、落ちて来るボールに跳び込む。

「イーブンなボールとは、田舎者のクセに洒落たマネするじゃねェか」
 同時に、岡田さんも同じボールを狙っていた。
岡田さんの真っ赤な額と、千葉委員長の真っ赤な額が、同時にボールに触る。

「グオォ!?」
 2人の同時シュートは、大した威力にはならずに海馬コーチのふくよかな腹に、収まった。

「見てよ、倉崎。海馬が、ボール取ったよ。こりゃ、明日は隕石の雨ね」
「まあ真正面でしたから、流石に取れるでしょう」
「でも、どちらかが先に触っていたら、決められていたね」

 ベンチでの悪評など露知らず、海馬コーチはボールをスローイングする。
けれども大した距離は飛ばず、ボールはペナルティエリアを少し出た辺りに落ちた。

「海馬も、痩せてた頃から、スローイングは評価されてたね」
 セルディオス監督が、細い目を細める。

「やはり、これも陰謀か。コーチが易々とキャッチするなど、なにか裏があるのだな」
 ボールは、龍丸さんの足元に収まっていた。
長身のリベロは、ブツクサとなにやら呟きながら、ドリブルを開始する。

「それに彩谷と言ったか。ヤツの背後には、ロスチャイルドの匂いを感じるぞ!」
 龍丸さんは、サッカーとはなんの関係も無いコトを口走りながら、ジャガイモ畑のようなピッチを蒸気機関車のように突き進む。

「マズイぞ、彩谷、戻って来い!」
「ワシャ、のう(具合)が悪のうた。動けんとー」
 鬼兎さんが催促するも、彩谷さんは棒立ちのまま動かない。

「桃井の気持ちがわかるぜ、まったく!」
 ワンボランチとなってしまった鬼兎さんが、必死に進路を塞ごうとした。

「やはりな。キサマが、影の黒幕か」
「なにを、ワケの解らないコトを……」
 けれども龍丸さんの突進のスピードが速く、進路を塞ぐ前に突破を許してしまう。

 相手のペナルティエリアが近くなり、左右を確認する龍丸さん。
左の金刺さんには藤田さんが、柴芭さんには渡辺さんがマークに付いていた。

「左右には、出させない。ここは、オレが止める!」
 曖経大名興高校サッカー部の最終ラインを指揮する、斎藤 夜駆朗が立ちはだかる。

「なにを止める。もう、手遅れだと言うコトが、解らんのか?」
「な、なんだと。コ、コイツ、ボールを持って無い!?」

 そう、龍丸さんはボールを、置き去りにしていた。
そしてボールは、ボクの目の前にあった。

 ここは、決める!
ボクは足を振り上げ、シュート体制に入った。

「伊庭、ここは絶対に止めろォ!」
「ウス!」
 ゴール中央で、身構える伊庭さん。

 ボクの右脚が、ボールの芯の右側を捕らえる。
回転のかかったボールは、ペナルティエリアの中央から左へとスライドし、逸れて行った。

「か、一馬のヤツ、シュートミスかよ。力み過ぎだぜ」
「イヤ、よく見ろよ、クロ。あれは、シュートじゃなくパスだ」
 紅華さんが言った通り、ボクはパスを狙っていた。

 ゴールの左側に逸れたボールに、蘇禰(そね)さんが飛び込む。
頭に軽く当てたボールは、ゴール左隅に吸い込まれていた。

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