ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP045

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反乱計画の全貌

 右サイドバックの藤田さんから、大きく左に展開されたボールは、曖経大名興高校サッカー部の左サイドバックの足元にピタリと収まる。

「オイオイ、相手チームの右サイドバック、簡単に逆サイドまでボールを通しちまったぞ!」
 ベンチに下がって、試合を見守っていた黒浪さんが言った。

「確かに、かなりのキック力ね。オランダ人なんかは簡単にやってのけるケド、日本人となるとプロでもできるプレーヤー少ないね」
 セルディオス監督が、腕を組んでボヤきながら感心する。

「だけど監督。肝心の左サイドバックがどうかだぜ。前半の左には、あの厳つい野郎が入っていたが、今はボールボーイやってたヤツに交代してんだ」

「でもね、紅華。さっきはボールボーイやってた2人にやられてるよ」
「そして軽くサイドチェンジを決めたのも、ボールボーイをやっていた1人だ」
「まあ……そうなんスけどね」

 監督どころか倉崎さんにまで反論され、ふてくされた顔でグランドを見つめる紅華さん。
その視線の先で、軽快に左サイドを疾走する左サイドバックの姿があった。

「やっと、オレの見せ場かよ。ボールボーイってのは、行かんせん退屈でな。鈍った身体のウォーミングがてらに、カッ飛ばしてくぜ!」
 日焼けしたスキンヘッドのその選手は、やはり直進的なドリブルで左のサイドを駆け上がる。

「しまった!」
「マ、マズいぞ!」
「戻れェ!」

 トリプルボランチの汰依さん、蘇禰さん、那胡さんの3人は、右サイドバックの藤田さんに集中してしまった為に、追いつけない。
勢いに乗ったスキンヘッドの左サイドバックは、サイドから進路を変えペナルティエリアに侵入した。

「これ以上、攻めさせるワケには行かない。ここで、止める」
 ボクのせいで右のセンターバックに入っていた雪峰さんが、その選手の前に立ちはだかった。

「ヌルいわ。そんなヒョロついた身体で、中学時代に鬼兎と2枚看板を張ってたオレの突進が、止められるかよ!」
 勢いのままに、突破を図るスキンヘッドの選手。

「クッ、しまった!」
 激しいコンタクトプレイに、突破を許してしまう雪峰さん。

「オラァ、これで2点差じゃァ!」
 スキンヘッドの選手の左脚から、キャノン砲のような凄まじいシュートが飛び出した。

 キーパーの海馬コーチは、一歩も動けない。
タブン、今回のシュートは並大抵のキーパーじゃ、反応すら難しいと思う。

「……なッ!?」
 大きな、金属音が鳴り響く。
ペナルティエリアの左から放たれた弾丸シュートは、右のゴールポストを激しく揺らし、跳ね返ってゴール中央へと転がっていた。

「よっしゃ、助かったぜ!」
「海馬コーチなんかより、遥かに頼りになるぜ、ゴールポスト!」

 ベンチで喜ぶ、黒浪さんと紅華さん。
けれどもそれは、束の間のぬか喜びとなってしまう。

「詰めが甘いぜ。これで、2点差だ」
 ボールにいち早く反応したのは、岡田さんだった。
跳ね返ったボールを足先に軽く当て、左サイドへと流し込む。

 ボールは、ボクたちをあざ笑うかのように、ゴール左隅へと吸い込まれていた。

「ス、スマン、千葉。調子の乗り過ぎちまった」
 ナゼだか謝る、スキンヘッドの選手。

「イヤ、お前のプレーはベストの選択だったぞ、渡辺」
「じゃけんど、これで岡田先パイもハットトリックぜよ」
「ウム、残り時間を考えると、取れてもあと1~2点が限度だろう」

 千葉委員長の周りに、彩谷さんと鬼兎さんが集まって来て言った。

「……ったく、なんなんだ、お前ら。さっきまでボールボーイやってたヤツらが、なんでこんなに活躍できんだ、コア?」
 点を決めた岡田先パイが、怪訝(けげん)そうな顔で1年生の輪に乱入する。

「それは、かなり前から計画していたからですよ、岡田先パイ」
「ああ? 確か鬼兎とか言ったな。まさか千葉の計画は!?」

「はい、発案者はオレです」
 岡田先パイと睨み合う、鬼兎さん。

「ちなみに根回しは、ワシじゃきに」
 彩谷さんも、ヘラヘラと笑っている。

「なんだとォ……随分とふざけたマネ、してくれるじゃねェか」
 ヘビを彷彿祖させる瞳が、1年生たちの顔を舐めるように映して行った。

「オレたちは、全国狙ってるんです。だけど、先パイたちみたいなサッカー続けてたら、絶対に全国になんか行けない!」
 けれども千葉委員長は、1歩も引かなかった。

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