ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第六章・EP049

f:id:eitihinomoto:20191113233812p:plain

アーリークロス

「やったぜ、蘇禰(そね)までゴールを決めやがった!」
 ベンチで、中学からの同僚のゴールを喜ぶ紅華さん。

「フッ、一馬のヤツもやるな。最初からシュートじゃなく、パスを狙っていたとは」
「そうっスね、倉崎さん。一馬も、よく蘇禰に出してくれたぜ」
「監督も言っていたが、蘇禰も優れた選手だ。与えられた仕事を、堅実にやり遂げるタイプだな」

「クッソォ~、オレもウカウカしてらんねぇぜ。アイツらに、ポジションを奪われちまう」
「オレさまなんて、さらにウカウカしてらんないよォ。ケガが長引いたら、どうしよう!」
 足を削られた黒浪さんが、不安を吐露する。

「こればかりは、お互いじっくりと治すしかないだろうな、黒浪」
「そ、そォですよね」
 車椅子の倉崎さんに言われると、黒浪さんも納得する他なかった。

「とりあえず、これで同点ね。サッカーの試合とは思えない、数字が並んでるケド」
 監督がため息と共に見た視線の先にある、8-8と書かれたスコアボード。

「ど、同点にされちゃった……お兄ちゃん……」
 剣道の面を被った少女は、試合の行方に表情を曇らせていた。

「クッソ。テメーがジャマしなきゃ、同点どころか突き放してたのによ」
 岡田さんが、後輩に向かって言葉を荒げる。

「それはお互い様ですよ、キャプテン」
 真っ赤な額も痛々しい千葉委員長は、一歩も引く様子もない。

「次の1点、どっちが獲るかだ。どのみち点を取らなきゃ、勝てんしな」
「同感です、オレは負けませんよ」
 2人のストライカーは、左右に分れて行った。

「オイ、鬼兎。テメーの相方はヘバッて使えねぇみてーだし、オレらで打開するぞ」
「ハ、ハイ」
 相手ボールで試合が再開され、仲邨 叛蒔朗のドリブルに、鬼兎さんが追従する。

「ここまで来て、抜かせるワケには行かないであります!」
 仲邨さんがフェイントを入れる前に、杜都さんの綺麗なタックルが炸裂した。

「クソ!」
 けれども仲邨さんは、僅かにボールを触って、タックルで奪われたボールの方向を変える。

「ナイスです、先パイ」
 零れ球に詰めた鬼兎さんが、大きく右に展開した。
ボールは、右サイドバックの藤田さんに出る。

「よっしゃ、ここはオレに任せな。さっきの失点の原因を作っちまったのは、オレだからな」
 フリーでボールを受けた藤田さんが、豪快なパワー任せのドリブルでサイドを駆け上がった。

「またオレたちが、止めてやる!」
「コイツはドリブルだけじゃなく、ロングパスで展開も出来るんだ」
「今度は、まずオレが行く!」

 汰依さん、蘇禰さん、那胡さんの3人が、サイドを突破しようとする藤田さんに包囲を狭める。
まず最初に仕掛けたのは、得点を決めた蘇禰さんだった。

「お前には、同点弾を決められちまった借りがあるぜ。ここは、強引に突破だ!」
「グワッ!?」
 勢いのままに突破を図る藤田さんに、吹き飛ばされる蘇禰さん。

「よし、ナイスプレイだ、蘇禰」
「ヤツのドリブルの勢いが、緩んだぞ」
 けれどもその間に、汰依さんと那胡さんが進路を塞ぐ。

「コ、コイツ、最初からオレのドリブルの勢いを、弱めるのが狙いだったのか!」
 蘇禰さんとのコンタクトプレイで、勢いを無くした藤田さんのドリブル。
一見、突破は不可能に見えた。

「藤田、こっちだ」
「お、おう!」
 藤田さんは、声の主にバックパスを出す。

「渡辺、走れ!」
 ボールを受けた鬼兎さんが、左サイドバックの渡辺さんに激を飛ばした。

「マ、マズいぞ。逆サイドに展開されたら……」
「ここは、なんとしても通させるな!」
 汰依さんと那胡さんが、ロングパスを出させまいと、鬼兎さんの横のラインを切りに行った。

「甘いな、渡辺は囮だ」
「な、なにィ!?」
「狙いは、ロングパスじゃないだと!」

 鬼兎さんは、渡辺さんにはパスを出さず、右サイドの藤田さんにパスを返した。

「あの鬼兎って選手、メチャクチャ上手いプレイね。自分にマークを集めて置いて、右サイドバックをフリーにしたよ」
「そうですね。これでガラ空きの右サイドが、藤田に突破されてしまう」

 倉崎さんが懸念した通り、ウチの左サイドを悠々とドリブルする藤田さんが、チラリと中を見る。

「逆サイドの選手には、オレが付く。中は頼んだぞ!」
 右のセンターバックに入っていた雪峰さんが、相手左サイドバックの渡辺さんをマークに出た。
確かに前のプレイでは、藤田さんは渡辺さんにパスを通している。

「オレのパスは、なにもサイドチェンジの為だけにあるんじゃ無ェぜ!!」
 けれども藤田さんが出したパスは、狡猾な2人のストライカーに向けた、『アーリークロス』だった。

 前へ   目次   次へ