ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP035

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最後の攻防

「ス、スゲエぜ。アイツ、杜都と同じくらいの距離を沈めちまっぞ!」
 黒浪さんが、ベンチで目を丸くした。

「だが彼のシュートは、威力もスピードも、それ程では無かったように見えたが」
「ええ、ですがアウトに回転がかかってました。それで取れなかったのでしょう」
「なる程、キーパーから逃げて行くボールか」

「そうだぜ、雪峰、柴芭。野洲田のヤツは昔っから、シュートにスクリュー回転がかかるクセがあってな。クセを直さず、そのまま得意技にしたんだ」
 紅華さんが、自分のコトのように自慢する。

「か、変った得意技だな」
「ま、本人は意図せずかかっちまう回転だから、決まるときは決まるって感じだがな」

「だが、これで同点だ。この試合、あるいは……」
「そうだぜ、監督。予想が外れたんじゃねぇか?」

「こんなハズじゃ、うう……」
 スコアボードを眺めながら、言葉を詰まらせるセルディオス監督。

「オッシャ、なんとか同点には持ち込んだぜ!」
 グランドではシュートを決めた野洲田さんが、ガッツポーズを作っていた。

「あと少しで止められたのに、クソ!」
「どうだかな。そんな貧弱なタックルじゃ、オレのスクリューシュートは止められんぜ」
 悔しがる旗さんに、余裕の表情で帰陣する野洲田さん。

「アナタこそ、マグロがどうとか言ってましたが、大したスピードではありませんね」
 最初に抜かれた湧矢さんも、悔しいのか吐き捨てる。

「そりゃな、マグロは昔は時速100キロで泳ぐなんて話もあったがよ。最近の研究じゃせいぜい7~8キロらしいぜ。ま、水の水圧を受ける海ん中じゃ、それでも凄いんだがな」
 冷静さを欠いた2人は気付かなかったが、それは鈍足ドリブルの言い訳に過ぎなかった。

「なんてこった、同点にされちまったじゃねえか!」
「意外に、決定的な仕事ができる選手が多いな」

「呑気なコト言ってんじゃねえぜ、九龍。この試合……」
「ああ。勝つのは、オレたち狩里矢だ」

 試合再開のホイッスルと同時に、狩里矢のツートップがドリブルとパスを織り交ぜながら、デッドエンド・ボーイズのゴールに向けて突進して来た。

 審判が、チラリと腕時計を確認する。
試合は90分を使い切り、ロスタイムへと入っていた。

「せっかく、野洲田が決めてくれたんだ!」
「ここさえ守りきれれば、同点で終えられる」
「何としても、通すな!」

 汰依さん、蘇禰さん、那胡さんの3人が、突破を許すまいと立ちはだかる。

「ケッ、雑魚が雁首揃えたところで、オレたちが止められっかよ!」
 ボールを持っていた新壬さんが加速し、汰依さんと蘇禰さんの間を抜く。

「そんなの読めてんだよ。ここだァ!」
 同僚2人が限定したコースに、タックルを仕掛ける那胡さん。

「そりゃ、こっちもな……」
 新壬さんは、後ろ脚で九龍さんにバックパスを出す。
次の瞬間、ボールを持たない新壬さんの脚を、那胡さんが刈り取った。

『ピーーーッ!』
 けたたましくホイッスルが鳴り、ファウルが宣告される。

「し、しまった……」
 那胡さんはイエローカードを提示され、項垂れた。

「PKにはならなかったが、絶好の位置だぜ」
 ペナルティエリアの左前で、新壬さんがボールをセットする。

「みんな壁を作れ。ここさえ護り抜けば、ヤツらの陰謀は完全に阻止される!」
「オーケー、旦那。キーパーはザルな海馬コーチだ。気合入れて護れ!」
 キャプテンマークを巻いた龍丸さんの指示に、野洲田さんが応えゴール前に壁が築かれる。

「ヤ、ヤベェ……脚が、震えて来たァ」
 海馬コーチの、セルライト塗(まみ)れの脚がブルブル震えた。

「キーパーは、あのヘッポコ親父だ。壁さえ越せば決まるぜ」
 新壬さんが、ゴールの右隅を狙って助走に入る。
そうはさせまいと、必至に飛ぶデッドエンド・ボーイズの構築した壁。

「亜紗梨、頼んだぞ」
「ああ、龍丸。ここは決めさせないよ」
 ゴールの右隅には、センターバックの一角である亜紗梨さんがカバーに入っていた。

「な~んてな。任せたぜ、忍塚」
 けれども新壬さんは、セットしたボールを蹴らずにそのまま走り抜ける。

「ケケ、本命は狙いはこっちよ!」
 残されたボールに、後半開始早々にロングシュートを決めた、忍塚さんが走り込んでいた。

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