ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第11章・09話

f:id:eitihinomoto:20190914042011p:plain

共鳴

『ギェエエエエーーーーー!!!』
 悲鳴とも聞こえる、醜い声を上げる深紅の魔王。

「そ、そんな……ガラ・ティアさんまで、魔王に……!?」
 吸盤の付いた真っ赤な脚が、四方八方に広がって街の建物に巻き付き、人々を締め上げる。
蟹の巨大ハサミを振り回し、舞人たちに攻撃を仕掛けて来た。

「舞人さん、絶望するのは後です」
「今は、対処法を考えるときだよ」
 リーフレアとリーセシルは、互いの杖をクロスさせて水の渦を創り上げる。

「水の精霊たち、力を貸して」
「水の牙(ウォーターファング)!」
 渦巻から無数の水の刃が飛び出して、魔王の吸盤付き触手を切断した。

「や、やった!」
 脚を奪われ、建物の上に崩れ落ちる魔王。
捕まっていた海の民も、解放され水の中へと泳ぎ去る。

「流石に、そこまで簡単じゃないみたい」
「脚が、再生されて行きます」
 双子司祭の指摘した通り、真っ赤な巨大触手は切断面から新しく生え替わっていた。

「ど、どうします。リーセシルさん、リーフレアさん」
「そ、そうだね。ガラ・ティアは既に、魔力の高い人間を魔王へと変える、サタナトスの剣によって斬られてたんだ」

「サタナトスに、また遅れを取ったって言うんですか!?」
「魔王となったガラ・ティアさんを救う、対処法はただ1つ……」
 リーフレアは、舞人を見つめた。

「ボクの……ジェネティキャリパー」
「そうです、舞人さん。サタナトスの、プート・サタナティスが人を魔王と換えるように、アナタの剣も魔王を少女の姿へと変えるのですから」

「だけど、そのせいでシャロリュークさんが……」
 蒼い髪の少年の脳裏に、赤毛の英雄と少女の面影が浮かぶ。
少女の姿となった赤毛の英雄は、還らなかった。

『ギュエエエェェェーーーーー!!』
 哀しみの叫びの声と共に、街を破壊し人々を襲う深紅の魔王。
美貌の女将軍の成れの果ては、市場に打ち捨てられた大量の魚介類を捕食し、巨大化する。

「アレはもう、ただの魔王だよ。自我を、完全に失っている」
「魔王となったシャロリューク様も、こうだったのですか?」
「はい……そうです」

 海底の街を破壊する魔王ガラ・ティアと共に、忘却の海底神殿を打ち壊した魔王アクト・ランディーグも、紫色の海龍の姿を巨大に変貌させていた。

「ね、姉さま、マズイです。早くここを対処して、バルガ王子たちの救援をしないと……」
「舞人くん、お願い。そうじゃなきゃ、わたしたちがガラ・ティアを、倒すしか無くなっちゃうよ!」
 双子司祭の願いに、仕方なく舞人も覚悟を決める。

「ジェネティキャリパーーーーー!!」
 漆黒のガラクタ剣を振り上げ、醜く変貌したガラ・ティアへと斬りかかった。

「グッ……うわ!?」
 けれども、深紅の魔王を中心に黒い波動が発生して、舞人は弾き飛ばされてしまう。

「ね、姉さま。こ、これはッ!?」
「わからない……けど、ガラ・ティアの中に、何か感じるよ」

「ククククク、流石に察しが良いじゃないか、リーセシル」
 妖しく、冷たい声がした。
それはリーセシルにとっては、王都での魔王との戦いの時に聞いた声だった。

「お前は……サタナトス!?」
「ね、姉さま!?」
 慌てて姉の元へ身を寄せる、リーフレア。

「随分と、遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ」
「それじゃあ、ガラ・ティアたちを魔王にしたのは!?」
「やはり、アナタの仕業なのですね!」

「キミたちこそあの時は、よくも魔王ザババを倒してくれたね。だけど今日は、あの時の男は居ないじゃないか?」
 街を覆うドームの天井から、無数に零れ落ちる海水の瀧を背に、金髪の天使が微笑む。

「サ、サタナトスーーーーッ!!」
 そこに舞人が、怒りに任せ斬りかかった。

「これはこれは、新たな英雄くんじゃないか」
 金髪の少年は、いとも簡単にそれをかわす。

「お前がパレアナを……シャロリュークさんをおおぉぉーーーーッ!!?」
 着地と同時に、再び斬りかかる舞人。

「冷静じゃないな。失望したよ」
 今度は、自らの剣で斬り結ぶコトを選択するサタナトス。

「な、なん……だッ!?」
「何ィ、け、剣が!?」

 舞人とサタナトス、2人の剣が激しく共鳴した。

 前へ   目次   次へ