ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・11話

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沈黙する剣

「オイ、どう言うこった。この魔王共は、デカかった頃より強いってのか?」
 自分の脳の理解力を超えたクーレマンスは、双子司祭に正解を聞く。

「そうだよ。何かを依り代にして、魔力を安定的に増幅させてるみたい」
「姉さま、多分あの武器です。2人が持っている武器が、増幅器になっているんです」

「ヤレヤレ、直ぐに見抜いてくれるなよ。だがまあ、正解さ」
 観念したかのように両手を挙げ、おどけてみせるサタナトス。

「彼ら7将軍は、この世界の7つの海の力を象徴した槍を、海皇より与えられているんだ。それぞれの海の力が凝縮し生み出された槍は、彼ら海の民を魔王とするのに、最適の依り代なのだよ」

「ご高説、感謝すんぜ。結局のところ槍さえ破壊すりゃあ、弱くはなるんだろ?」
 クーレマンスは、魔王の脚を喰い散らかした大剣を振るって、紫色の魔王へと斬りかかった。

「残念だが我が槍は、簡単には砕けぬ」
 海龍の首を持った魔王アクト・ランディーグは、深紅に輝く切っ先を持った黄金の槍を、一閃する。

「ガハッ!?」
 右の脇腹から鮮血が吹き出し、片膝を着くクーレマンス。

「我が金剛槍『オロ・カルコン』は、アト・ラ・ティカ海の力を凝縮している。決して砕けぬ、金剛の硬度を持った槍よ」

「海ヘビ風情が、随分と粋がってくれるじゃねえか」
「クク……我は、7つの海を支配する海龍族のエリートである。知性の低い人間風情が、何を熱くなっておる?」

「誰が知性が低いだ、コラァ!!?」
 怒りに任せて、ヴォルガ・ネルガを叩き込むクーレマンス。
魔王アクト・ランディーグが槍を振ると、大男は胸に横一文字の傷を付けられ地面にひれ伏した。

「魔王の言葉に乗せられ過ぎだよ、バカなんだから!」
「あの槍は硬さもですが、切れ味も凄まじいモノがあります。迂闊に飛び込んだら、筋肉の鎧など一溜りもありませんよ」

「可愛らしいお嬢さんたち。まずは、ご自分たちの心配をなさったら?」
「なッ!?」
「しまっ……きゃああッ!?」

 無数の泡の渦が、リーセシルとリーフレアを襲う。
2人は収縮を繰り返す泡に飲まれ、大きなダメージを被った。

「貴女たちも今は小娘ですが、将来は美しい女性へと成長するコトでしょう。ただし、生きていられればの話ですケドね」
 泡に塗れた双子司祭に、止めをさそうと突進する魔王ガラ・ティア。

「やらせるモンかぁーーー!」
 コーラルピンク色の槍を止めたのは、蒼い髪の少年の漆黒の剣だった。

「アラ、坊や。まだ生きていたのね」
「ガ、ガラ・ティアさんこそ、その姿……元に戻れたんですか!?」
 気を失っていて、2人の魔王が小さくなった経緯を知らない舞人。

「そうだったわね。坊やたちはわたくしの、あのような姿を見てしまったのです。生かして還すワケには、行かなくなりましたわ」
 腹が肥大化し、タコと蟹を合わせた様な醜い姿へと変化していた、ガラ・ティア。

「ここで、死んでしまいなさい!」
 美を貴ぶ彼女にとって、それは耐えがたい屈辱に他ならなかった。

「舞人さん、見た目に騙されないで!」
「ガラ・ティアは、巨大だった時より遥かに強力な、魔王になっているよ」
 双子司祭が、互いに回復魔法を唱えつつ、舞人に情報を伝える。

「な、なんだって。それじゃぁ!?」
「ウフフ。今のわたくしは、完全に生まれ変わったのよ。美しく相手を葬る、美の魔王としてね」
 再び巨大な泡の渦を纏う、コーラルピンクの槍。

「ジェネティキャリパーーーーーー!!」
 舞人は、収縮する泡に覆われつつも、右腕だけで漆黒のガラクタ剣を振るった。

「クッ……ギヤアァァ!?」
 咄嗟にかわすコトも出来ずに、剣激を喰らうガラ・ティア。
彼女の豊満な身体が、後ろに大きくのけ反る。

「チッ、しまった。ヤツの剣は、魔王を少女に変えてしまう……」
 苦虫を噛み潰したような顔をする、サタナトス。

「や、やったね、舞人くん」
「これで魔王を1人、少女の姿に……」
 けれども双子司祭は、直ぐに異変に気付く。

「よくも、わたくしの美しい顔に、傷を付けてくれましたわね」
 ジェネティキャリパーの一撃を喰らってからも、ガラ・ティアの様子に変化は無かった。

「そ、そんな。どうして!?」
「可愛い坊やと思って手加減してあげたのに、もう許しませんわ!」
 唖然とする舞人に、深紅の女将軍は珊瑚槍エリュ・トゥラーを一閃する。

「ガハァッ!?」
 泡の破壊力は以前にも増して強力になり、舞人の身体を引き裂いた。

「ど、どう言うコトでしょうか、リーセシル姉さま!?」
「わ、解らないわ。でも、もしかして……」
 双子の姉が、推理を途中で中断する。

「残念だったね。今度は、キミたちが魔王となる番だよ」
 2人の前には、金髪の少年が剣を構え立っていた。

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