ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・08話

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美しさと醜さ

「頭が空っぽの骸骨如きが幾ら群れたところで、このガラ・ティアの珊瑚槍『エリュ・トゥラー』が防ぎ切れると思って?」

 深紅の女将軍のコーラルピンク色の槍が、黒き骸骨兵を破砕する。

「醜い骸骨など、泡を使わなくとも単純な打撃で十分倒せますわ」
 ガラ・ティアを取り囲んでいた20体ほどの骸骨兵は、次々に砕かれ大地に還った。

「マ、マズイよ。こんなにも早く、スパ・ルトイが倒されちゃうなんて」
「まだ、呪文の完成には時間が……!?」
 長い詠唱を必要とする高度な魔法を唱える双子姉妹を、護る兵士は既に存在しない。

「ウフフ、可愛らしい顔のコたちね。きっと招来は、美しい女性に成長するコトでしょう」
 無防備となったリーセシルとリーフレアに、じわじわと歩み寄るガラ・ティア。

「でも残念だケド、貴女たちにはここで死んで貰うわ。わたくしには、時間がありませんの!」
 珊瑚槍エリュ・トゥラーを構えて、一直線に双子司祭の身体を貫こうとする。

「2人は……殺らせない!」
 けれども女将軍の槍は、おかしなパーツがゴテゴテとくっついた剣によって阻まれた。

「アラ、坊や。まだ立ち上がれたの?」
 マゼンタ色の髪を掻き上げ、妖しい瞳で舞人を見つめるガラ・ティア。
「そのまま気を失っていれば、死なずに済んだかも知れないのに残念ね」

「ボクが、2人を護らなきゃいけない。もう、大切な人が死ぬのなんて、まっぴらだから!」
 ジェネティキャリパーを構え、双子司祭の前に立つ舞人。
幼馴染みの少女を失い、憧れの英雄もこの世を去った今、彼は覚悟を決めていた。

「勇ましい坊やだコト。でも、無謀な勇気ね」

「そうかも知れない。だけど、ガラ・ティアさんはどうして戦うんです。神殿が破壊され、国のみんなが大変な目に遭ってるんですよ。貴女は、この国の将軍なんでしょう?」

「わたくし達7将軍は、ダグ・ア・ウォン王にお仕えする身。ダグ・ア・ウォン王が魔王となられた今、我らもその尖兵となって戦うしかありませんの!」
 大量の泡を纏った槍で、舞人に突進するガラ・ティア。

「王さまが、魔王に……そんな!?」
「舞人くん!」
「気を付けて下さい!」

「ハッ……クッ!」
 リーセシルたちの叫びを聞き、寸でで剣を使って槍を止める蒼き髪の英雄。

「わたくしの槍は、その程度では止められなくてよ」
「グワアアアァァァーーーーッ!!」
 槍を止めても尚、大量の泡が身体に纏わり着き、バブルパルスの衝撃が舞人を襲う。

「さ、さあ、これで貴女たちを護る邪魔者は、居なくなりましたわ」
「残念だケドまだ、舞人くんは倒れて無いよ」

「……なッ!?」
 リーセシルの言葉に、後ろを振り返る女将軍。

「ボクはまだ……ここで倒れるワケには行かないんだ」
「ぼ、坊や。アナタは、ナゼそこまで……!?」

 その時、大きな爆音と共に、衝撃波が神殿の辺り一体を襲った。

「う、うわああ!」
「し、神殿に、怪物が現れたぞォ!?」
 遠くの方で、街の住人たちが騒いでいる。

 それは、バルガ王子の率いる海皇パーティーと刃を交えていた、アクト・ランディーグ将軍の変わり果てた姿だった。

「お、おぞましですわ。あの様な化け物など……!!」
 深紅の女将軍は、意表を突き舞人に襲い掛かる。

「ガハッ!」
 地面に叩き付けられ、何度もバウンドする舞人。

「貴女が、時間が無いと言った意味が、解りました」
「それは、こう言うコトだったんだね……」
 詠唱を続けながらも、哀しい瞳で女将軍を見る双子司祭。

「何を言っているの、小娘風情が」
 蒼い髪の少年を脚で踏みつけ、槍を胴に突き刺す構えのガラ・ティア。
舞人が見上げたその顔に美しさは無く、醜く歪んでいた。

「いい加減に、死んでしまいなさい。坊や……グフッ!」
 舞人に槍を突き立てようとした女将軍が、胸を押さえて苦しみ始める。

「ど、どうしたんです……ガラ・ティアさん!?」
「み、見ないで……」
「え?」

「ギャアァ……こ、こんな姿……イヤァ!」
 舞人が呆気に取られていると、女将軍の腹部が大きく膨らみ始めた。

「お願い、見な……ブゴォ!?」
 象徴だった深紅の鎧が弾け飛び、水着が裂け、身体のあらゆる部位が肥大化する。
美しい顔は、膨張した身体に飲み込まれ、腰から吸盤が無数に付いた脚が伸びた。

「ガラ……ティアさん?」
 青褪める少年の目に映ったのは、タコの様な真っ赤な無数の脚と、蟹の様な巨大ハサミを持った、醜悪な魔王の姿だった。

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