「こ、これは一体ッ!?」
「うわああぁぁーーーッ!!?」
プート・サタナティスとジェネティキャリパー。
耳をつんざくハウリング音と共に、斬り結んだ2つの剣が互いに反発し、その主たちを弾き飛ばす。
「グッ……くッ!」
白と黒の六枚の翼を展開し、なんとか空中に押し留まるサタナトス。
「ガハァッ……うぐあぁッ!!」
対する舞人は、海底の街の地面に叩きつけられ、何度もバウンドして転がった。
「ね、姉さま。これは一体!?」
「解らない。でも2つの剣は、互いに真逆の性質を持った剣だから……」
「秘めたる力が、互いに反発し合ったと言うコトでしょうか」
リーセシルとリーフレアが考察を終える頃にやっと、耳障りなハウリング音は消える。
「フフフ。思わぬハプニングが起きてしまったが、これでキミたち2人を護る邪魔者は居なくなった」
双子司祭の前に降り立つ、サタナトス。
「そいつァ、どうだかなァ」
けれども、野太い声が金髪の少年の言葉を否定した。
「ん……キミは確か?」
サタナトスのヘイゼルの瞳に、異形の剣を肩に担いだ大男の姿が映る。
「もう。遅いよ、クーレマンス!」
「いつまで船倉で、寝てらしたのですか!?」
「悪ィな、リーセシルにリーフレア。どうも海ってのは苦手でよ」
巨漢は、サタナトスと双子司祭の間に割って入る。
「なんだ。覇王パーティーの1人ともあろう者が、船酔いで寝ていたとはお笑い種だねェ」
「だが陸地に脚が着いてりゃあ、こっちのモンよ」
異形の剣を構える、クーレマンス。
その剣先は大きく2つに裂け、内側には無数の牙が並んでいた。
「ニャ・ヤーゴの教会以来だな、サタナトス。こっちは、覇王パーティーの半分は揃ったぜ」
「呪文を詠唱する時間さえ、あれば……」
「わたし達だって、遅れを取るモノではありません」
「ククク、でも永遠に全員が揃うコトは、無くなってしまって残念だよ」
「お前はシャロの仇……と言いたいところだが、殺ったのは他のヤツらしいな」
「ああ、ボクの幼馴染みの男さ。彼には、別の剣の攻略を頼んであるから、ここには居ないケドね」
「つまりテメーの首さえ落とせば、全ては丸く収まるってワケだな」
「そう簡単に行くかな。ボクは海底都市で、既に海皇と7将軍を味方に付けているんだよ」
サタナトスが、宙に飛翔する。
その背後に、巨大な魔王と化したガラ・ティアと、アクト・ランディーグが姿を現した。
「ヘッ、オレさまが眠りこけてる間に、随分と大変なコトになってやがるな」
圧し潰そうと攻撃を仕掛けて来た、魔王ガラ・ティアの何本もの吸盤の脚を、クーレマンスは自慢の剣で喰い散らかす。
「大喰剣ヴォルガ・ネルガが、美味いって言ってるぜ!」
「そう言えばキミの剣は、随分と悪喰(あくじき)だったね」
「応よ。喰えるモンなら何だって、残さず喰っちまうぜ!」
今度は、突進して来る紫色の海龍の横腹を、剣でえぐり取った。
魔王アクト・ランディーグは、激しく悶え苦しむ。
「何だァ。魔王って割りには、歯ごたえの無いヤツらだな。シャロと倒した魔王共の方が、よほど歯応えがあったぜ」
クーレマンスは意図せずして、サタナトスの魔剣の欠点を指摘していた。
「フフフ。見た目に寄らず、良い感覚をしてるじゃないか。確かに、ボクの魔晶剣プート・サタナティスで生み出した魔王は、本来の力を持って居ない。でも、その欠点は既に解決済みさ」
「み、見て、クーレマンス!?」
「魔王たちが、苦しみ始めています!」
深紅と紫色の2体の魔王は、ドス黒いオーラに包まれながら見る見る縮んで行った。
「ア~ン。何が欠点が解決だ。魔王が、人間みてーに小さくなっちまったじゃねえか」
「気を付けて。魔王の魔力が……!?」
「どんどん大きくなって行きます!」
巨大な海龍や、大タコと蟹の化け物の姿だった2体の魔王は、身体が小さくなるのと反比例して、その魔力を大きく高めていた。
「サタナトス様。我らに強大な力を与えていただき、感謝いたします」
紫色の鱗に覆われた、長い海龍の首を持ったアクト・ランディーグが言った。
「う、美しい身体ですわ。これこそが、わたくしが求めていた理想の身体」
深紅の女将軍ガラ・ティアが、新しく生まれ変わった身体に満足している。
「さてと。狩り(ゲーム)の始まりだよ」
金髪の少年は、無邪気にほほ笑んだ。
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