ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP034

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お魚パワー

「な、オレのパスが、読まれていただと!?」
 九龍さんが落したボールに背後から飛び込んで、旗さんの前でカットする。

「スゲー。一馬のヤツ、ポストプレーを予測してやがったのか!?」
「ポストプレイは、最も予測し易いプレイの一つですからね」
「落とす相手との間に入って、カットすれば良いってか。なる程ねえ」

 柴芭さんの分析に、腕を組み納得する紅華さん。

「でも、奪ったところで、どうなるね。レギュラーは全員、体力の限界よ」
「攻撃に繋げられる選手は、いないと言うコトですか」
「イヤ、雪峰。後半から入った、汰依、蘇禰、那胡が居るぜ。アイツらなら……」

「紅華が 推薦するだけあって、確かに3人は良い選手よ。だけど、局面を打開できる選手、違うね」
 セルディオス監督も、相変わらず辛らつな現実を突きつける。

「こんなサイドライン際でボールを取ったところで、無駄ですよ。キミは一体どこへボールを、出すって言うんです?」
 旗さんが、直ぐに気持を切り換えてボールを奪いに来る。

 ……確かに、ボールを預ける先が無い。
着地した九龍さんも、体制を立て直しプレッシャーをかけて来る。
ど、どうしよう!?

「一馬、こっちだ!」
 ペナルティーアーク付近で、誰かが手を上げている。
ボクはそこに、パスを入れる他無かった。

「ナイス判断、一馬」
 ボールを受けたのは、3枚のセンターバックの一番右に配置されていた、野洲田(やすだ)さんだった。

「守備は任せたぜ、龍丸の旦那」
「ウム、ヤツらがどんな陰謀を廻らせていようと、止めて見せる」

「……っしゃ、いっちょぶちかましてやんぜ!」
 野洲田さんは、龍丸さんにバックラインを任せて、ドリブルを開始する。

「何なんだ、今度はまた違うセンターバックが、オーバーラップし始めましたよ。3枚全員が、リベロだとでも言うんですかァ?」
 愚痴を言いつつも旗さんは、再び切り換えて野洲田さんを後ろから追っていた。

「湯楽さん、ここはボクがアタックに行きます。後ろ、任せましたよ」
「了解。なるべく、自分でボール取ってね」

「解かってますって。後半から入った選手で、ボクだけまだ何も活躍してませんからね」
 やる気のない先輩に、そう宣言した湧矢さんが、野洲田さんの前に出て勢いを止めようとする。

「マグロって魚は、止まると死んじまうんだ。悪いが、ここで止まるワケには行かねェ!」
 何の躊躇も無く、突進する野洲田さん。

「うわ、ちょっとマジかよ!?」
 このままでは、正面衝突をしてしまうと判断した湧矢さんが、進路を開けつつもタックルを繰り出す。

「温いな。そんなタックルじゃ、マグロの勢いは止められんぜ」
「ぐわッ!?」
 タックルの脚ごと弾き飛ばし、直線的なドリブルを続ける野洲田さん。

「オラオラ、もっと魚喰え。骨を太くせんと、パワーが生まれんぜ」
 野洲田さんは、ドリブルの勢いのまま、湯楽さんにショルダーチャージを喰らわす。

「ぎゃあッ、痛いィ!?」
 これまで、何人ものドリブラーを止めて来た湯楽さんの壁が、簡単に突破される。

「な、なんだか、意外に脆いな。アイツには、オレですら止められたのによ」
 ベンチの紅華さんが、悔しさを滲ませた。

「あの湯楽と言う選手は、ファーストボランチにアタックに行かせ、かわしたコースを読み、長い脚(リーチ)でボールを刈り取るプレイを得意とする。どうやら接触(コンタクト)プレイは、それ程得意では無い様だな」

「マジかよ、雪峰!?」
「まさか、そんな弱点があったなんてなァ」
 2人のドリブル―は、顔を見合わせ感心する。

「どいつもこいつも、カルシウムが不足してんなァ」
 野洲田さんが、海遊するマグロの如き勢いのまま、脚を振り合上げる。

「やらせるかァ!」
 けれどもその背後には、旗さんが迫っていた。

「今度、ウチの食堂の魚定食、喰いに来な!」
 僅かに早く、シュートが放たれる。

 緩やかな弧を描いたシュートは、狩里矢のゴール右隅に吸い込まれた。

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