ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第11章・19話

f:id:eitihinomoto:20190914042011p:plain

魔王VS獣人

「オレの藍裂槍『クリ・シュナ』で、喰い散らかして、引き千切って、切り刻んでやる」
 魔王ベク・ガルの、鋭利な歯の並んだ槍が呼び寄せた、無数のサメの顎が舞人に襲い掛かった。

「グハッ……がああああぁぁぁッ!!?」
 腕や脚に噛みついたサメの顎が、大量の出血をもたらす。

「アレ、まだ死んで無いみたいだよ。意外にしぶといねェ」
 半透明なレインコートの様な鎧を着た少女が、瀕死の舞人に近づいた。

「じゃあ、ボクの緑触槍『アス・ワン』で、ジワジワと絞め殺してあげるよ」
 魔王スプラ・トゥリーの槍の先端が、漁師の投網の様に広がって舞人を包み込む。

「グウゥ……ウグ……ガボッ!!?」
「苦しい? ねえ、苦しいのかな。とっても良い表情だよ」
 息ができないくて藻掻き苦しむ舞人を、恍惚(こうこつ)の表情で見つめるスプラ。

「舞人ォ、やっぱオレが2体は相手しねェと、厳しいよな!」
「そうは行きませんわ。アナタの相手は、このガラ・ティアなのですよ」
 舞人の元に向かおうとするクーレマンスの前に、紅玉の魔王が立ちはだかった。

「そこを通しやがれ、『ヴォルガ・ネルガ』!!」
「させないと、言っているでしょう。『エリュ・トゥラー』!!」
 クーレマンス自慢の大喰剣も、無限に泡を生むエリュ・トゥラーとは相性が悪く、救援に向えない。

「オイ、コイツまだ生きてやがっぞ」
「そうだね、おかしいな。普通の人間なら、とっくに死んじゃってるのに」
 アス・ワンによって絞められつつも、まだ意識のある舞人。

 ……ジェ、ジェネティキャリパー。
魔王を女のコにする能力は失われてるケド、まだボクの身体を強化する能力は残ってるみたいだ……。

「いい加減、ケリつけるぞ、スプラ」
「そだね。じゃあ、一旦アス・ワンを解除して……うわッ!?」

 その時、二体の魔王を異形の武器が襲った。
咄嗟に回避した魔王の居た場所に、突き刺さる円盤状の小型の盾。
結果として舞人は、スプラの槍の触手から解放される。

「ゴホッ、ゴホッ……この盾……もしかして……」
 舞人は、盾に見覚えがあった。

「おうよ、蒼髪の勇者」
「この盾は、お前ンところの商品だったヤツだ」
「中々に面白い武器だぞ、気に入った」

 3枚の盾は、チェーンによって主の元へと還る。
そこには、3人の獣人娘が立っていた。

「ヤホッカ、ミオッカ、イナッカ。来てくれたんだ」
 3人は、舞人やリーセシルたち双子司祭の旅に強引に同行し、海底都市カル・タギアに来てからは一早く商売のため下船している。

「まあ、タマタマなんだケドな」
「街がこんなになって、商売どころじゃなくなっちゃってさ」
「んで、コイツらやっぱ敵なのか?」

「お前ら確か、船に強引に乗り込んで来た獣人娘だな。そいつらは、サタナトスの剣で魔王にされた、七海将軍(シーフォース)のヤツらだぜ」
 ガラ・ティアと対峙していたクーレマンスが、情報を伝えた。

「アッ、船酔いのオッチャンだ!」
「もう大丈夫なのか?」
「船は街の人を乗せれるだけ乗せて、脱出させちゃったかんな」

「そいつはナイスな判断だぜ。悪いがお前ら、そこの蒼い髪の兄ちゃんに加勢してやってくれ」

「了解。ま、こんなのも想定してたしな」
「理由は解んないケド、コイツらやっつければ良いんだろ」
「獣人のスピードと攻撃力、見せてやる」

 鎖付きシールドを構え、2体の魔王と対峙する3人の獣人娘たち。

「何かと思えば、獣人風情か」
「キミたち獣人が、魔王と戦えるとでも思ってんの?」

「ムッカ~。獣人ナメんな。うりゃッ!」
 大きなヨーヨーの様な盾を投げる、ヤホッカ。

「丸盾に刃が付いてる程度の武器など、当たるハズも……なにッ!?」
 魔王ベク・ガルに向って投げられた盾に、ミオッカが飛び乗り盾を放った。

「ぐわッ!!」
 激しく回転する刃の盾は、ベクの右脇腹をえぐり取る。

「まったく、何やってんだか。油断し過ぎだよ」
 スプラが、緑触槍『アス・ワン』の触手を展開して、ミオッカを捕らえようとした。
けれどもヤホッカの盾に乗っていた彼女は、盾が主の元に戻ると同時に遠ざかる。

「変な動きをするヤツらだね。でもボクの触手からは、逃げられないよ」
「そんなら、斬っちゃえ!」
 ヤホッカたちを追撃する無数の触手を、イナッカの盾が切断した。

 前へ   目次   次へ