ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第8章・23話

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王都の激闘6

 リーフレアの魔法力場構築によって、巨大な壁が魔王の巨体を閉じ込める。
そこにリーセシルの召喚した流星が、瀧のように天空から降り注いだ。

「フッ、流石だな。これでは魔王とて、一溜りもあるまい?」
 雪影は、魔王が消え去りガラ空きになったサタナトスに向かって、跳躍する。

「それはどうかな。ボクは、時空を切り裂けるんだ」
「再び、次元の狭間へと逃げようというのか……そうはさせん」
 白夜丸が輝き、時間の流れが遅くなる。

「そのクビ、貰った」
 黒楼丸が、サタナトスの真っ白な首を飛ばしたかに見えた。

「ククク、誰が逃げるなんて言ったかな?」
 けれども漆黒の刀は、すんでのところで止められている。

「な、なんだと?」
 黒楼丸を止めたのは、獅子のレリーフされた剣だった。

「そ、そんな……」
「あ、あの腕は……魔王の!?」
 強力魔法を放った双子姉妹の顔が、驚きの表情に変わる。

「既にあらゆる場所で、時空を切り裂いていたというのか?」
 剣は、空間から現れた腕に握られている。

「わ、わたし達の魔法を、回避したっての?」
「で、でもどうやって、魔王の巨体を……」

「簡単な話さ。別に魔王だからって、巨大である必要はどこにも無いんだよ」
 腕から先も出現した、魔王の身体。
それは、雪影より多少大きい程度のサイズにまで、小さく縮んでいた。

「なる程な。身体を縮ませて次元の狭間を通り……」
「アイツらの魔法を、回避したと言うワケか」

 獅子や鷲との戦いを終えたネリーニャとルビーニャが、いつの間にか雪影の後ろに立っている。

「大きさってのは、都市や城を破壊するのには役立つケドさ。キミみたいな剣士を相手にする場合、返って不利になったりもするからね」
 サタナトスを守護するように、人間サイズの魔王ザババ・ギルス・エメテウルサグが立ちはだかった。

「小さくなったところで、我が剣の錆びとなる未来に変わりは無い」
 雪影は、魔王ザババに高速の斬撃を、次々に加える。

「そいつはどうかな?」
 魔王の六本の腕に握られた獅子と鷲の剣は、それをことごとく跳ね返した。

「ザババは、古代の戦いの神でもあるんだ。キミの二本の剣じゃ、いずれ防ぎきれなくなるよ」
「クッ……!」
 サタナトスの言葉は現実となり、実際に押され始める雪影。

「だらしの無いヤツめ。なれば我らが力を貸そう」
「剣の数が増えれば、何の問題もあるまい」
 ネリーニャとルビーニャが、雪影の加勢に入ろうとする。

「必要ない。この雪影、見くびってもらっては困る」
 白紫色の髪の剣士は、魔王の剣を弾いた勢いを利用し距離を取った。

「なんのつもりだい、納刀なんかして。まさかボクに、降参するワケじゃないだろ?」
 何かを感じたのか、サタナトスは時空の狭間に身を隠す。
……と、同時に、魔王ザババが六本の腕で、刀を納めた雪影を急襲した。

「無論、そんなつもりは無い。我が奥義、とくと見るがいい」
 剣士の眼が、鋭く輝く。

「開闢(かいびゃく)の斬光!!!」
 雪影の腰に下げられた二本の鞘から、白き刀身の剣と黒き刀身の剣が解き放たれた。

「なッ……にィ!?」
 白夜丸からは眩い閃光が、黒楼丸からは漆黒の暗闇が広がり、やがてそれらは交じり合う。

『グオオオオォォォォーーーーーーーーーーーッ!!?』
 一つとなった光と闇のエネルギーは、魔王の斬撃を全て反射しその体を貫いた。

「クソ、間に合わな……!?」
 背後にいたサタナトスも、時空の狭間を閉じるのが一瞬だけ遅れ、身体の半身を喪失する。

「ヤツは逃れたか……」
 剣士の視線の先には、金髪の少年の姿は無く、荒廃した王都の姿が映っていた。

「どうやら、あちらも終わった様だぞ」
 街の外では、オレンジ色の軍装のオフェーリア軍が、魔物の大軍を壊滅させる。

「我らが呼び出した死者の群れも、ほぼ灰塵と化したようだしな」
 垂れこめた雲が晴れ夕日が差し込むと、生き残ったアンデットたちも、再び天へと召されて行った。

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