ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第06章・23話

f:id:eitihinomoto:20190804105805p:plain

宇宙を駆ける剣闘士

「アポロよ。そこでオレの力を、しっかりと見て置くんだな。我がマルステクター社が新たに開発した、新型のコンバット・バトルテクター『グェラ・ディオー』の統率された戦術をな」

 自らの旗艦へと移ったマーズは、全6個艦隊に向けて指令を発した。
カメラの付いた偵察用アーキテクターが、格納庫の中に多数が収まった新型コンバット・バトルテクターを映し出す。

「マーズめ。密かに新型の機体を完成させていたのか」
「そのようですね、アポロ。どうやら彼の目的は、新型コンバット・バトルテクターの性能アピールにある様です」

 マーズが『グェラ・ディオー』と呼んだ機体は、古代ローマの剣闘士が装備していた鎧兜を思わせるデザインで、武器や盾も含めて異なる形状のタイプが何種類か存在している様子だった。

「そう言えば最近は、木星圏のグリーク・インフレイム社、トロイア・クラッシック社に圧されて、マルステクター社のアーキテクターの採用率は、墜ちていたモノね」

「彼にとっては、起死回生の一手と言ったところでしょうか。ヤレヤレ」
 セミラミスの言葉を受け、肩を竦めるメリクリウス。

「まずは先行部隊として、ムル・ミィーロン隊を発艦させよ」
 リゾート地のロッジの大きなガラス戸に、今度は魚を模した形状の兜を被った機体が映し出される。
右手に短剣を持ち、左手には巨大な四角い盾を装備していた。

「この期に及んで、接近戦でも挑む気ですか。近づく前に撃ち落とされますよ」
「心配には及ばんよ。ムル・ミィーロンの盾は、並みの戦艦の対宙砲火すら防ぎ切る性能だからな」

 自信に満ちたマーズの号令と共に、次々に宇宙空間へと飛び出していく魚型の剣闘士。

「さて、次のアトラ・イックも接近戦向けの機体だ。だがムル・ミィーロンとは戦い方が異なり、防ぐコトよりも避けるコトに重きを置いた、軽量な装備となっている」

 マーズの、軍需装備品の解説が始まると同時に、異なる艦の格納庫にカメラが切り替わる。
丸い小さな盾に湾曲した刀を持った機体が、宇宙へと発艦して行った。

「アポロさん、出来ればボクたちは戦いたくなどありません。今からでも、矛を収めるコトは出来ないでしょうか?」

「事ここに及んで、だな。既に戦いは始まっている。不本意ではあるが、宇宙斗艦長。キミとその部下を拘束させて貰う」

「それは……クーリアも含まれているってコトですか?」
「無論だ。彼女だけ、特別扱いするコトは出来ん」

 アポロの合図と共に、ロッジにアサルトライフルを装備した、ネイビーブルーのロングコートのアーキテクター部隊が現れる。
それは宇宙豪華客船セミラミスに到着して、最初にボクたちを出迎えた部隊だった。

「まずはこの部屋で、大人しく戦況を見守っていて貰おうか、宇宙斗艦長」
 無数の銃口がボクに向けられる中、それを拒否すればどうなるかは想像に難くない。

「サディー・タルス隊、発艦せよ。この機体は中距離狙撃型だ。狙撃体制を安定させるために、四つ脚となっている」
 弓状の武器を装備したケンタウロス型の機体が、宇宙に飛び立って行った。

 軍神(マーズ)によって、兵器のマーケティングの場と化した戦場。
最初に発艦したムル・ミィーロン隊が、ボクの艦隊の左翼と接触した。
それまで前哨戦に過ぎなかった戦闘は、一気に本格的な戦争へと発展する。

 ヴェル、頼むから上手く生き延びてくれ。
出来る限り、被害を出したくない。
ボクは心の中で、そう祈るしか無かった。

「ククク。まずはムル・ミィーロンが取り付いて、先鋒の艦隊を沈めてくれるわ」
 マーズの合図と共に、自慢の四角い盾を防御手段として、蒼い色の艦が並ぶ艦隊に突っ込むムル・ミィーロン隊。

「な!?」
 ムル・ミィーロンの1機が、対宙射撃の直撃を受けて蒸発した。

「何をしている。しっかりと盾を構えろ。主砲を喰らったのならともかく、対宙射撃程度は持ちこたえるハズだ!」
 真っ赤な髪を掻き乱し、荒ぶる軍神。

 けれども、ペンテシレイアさんに率いられた蒼い艦隊の対宙射撃は、的確にムル・ミィーロンの動きを捉え、自慢の盾もろとも破壊していった。

 前へ   目次   次へ