ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・61話

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共闘する王子たち

「まったく、なに考えてやがる。テメーこそ、さっさと飛び込めば命は助かっただろうに」
 兄は、肌の色も髪の色も違う弟に言った。

「合理的に考えれば、そうなんでしょうがね。今回の災いをもたらしたのは、このボクだ」
 ギスコーネが、氷の剣『コキュー・タロス』に冷気を集中させる。

「サタナトスの悪意を知りながら、兄上の座を奪いたい一心で、ヤツを招き入れてしまった。ボクには大した魔力も無かったから、魔王にはされなかったが、父上と7海将軍をこの手で……」

「ま、オレらは自分の意志で、サタナトスさまの軍門に降ったんだがよ」
「まさかお兄ちゃんに絆(ほだ)されて会心しちゃうなんて、とんだ甘ちゃんっしょ」
「坊やなんだなァ」

「ああ、ボクは坊やだ。それが、嫌というホド解ったよ」
 漆黒の鎧を纏った男は、剣を天に向け掲げた。

「な……にィ、これは!?」
「あ、足が地面に貼り付いて……どうなってるッしょ!?」
「こ、凍り付いてるんだな!」

「ボクの剣は、空気中の水分さえ凍り付かせる能力がある。ましてや、海から上がったばかりのこの街は、地面の至るところに水溜りが残っているからね」
 ギスコーネは、ダークグリーンの長髪をユラユラと揺らしながら3体の魔王に近づく。

「へッ、それがどうした。甘ちゃんにしてはやる様だが、足なんて切り離してしまえば……」
「今のアタシらは、魔王ってコトを忘れてるっしょ!」
「ア、アデ?」

「どうした、脚を切り離すのだろう。さっさと、やってみたらどうだ?」
 灰色の肌をした男は、冷静な眼差しでかつての部下を観察していた。

「どういう……コトだ。足が……切り離せないだと!?」
「それどころか……身体が動かないっしょ!」
「な、なんでェ?」

「人の身体の多くは、水分で出来ている。海底都市に生まれた、海洋民族であるお前らは、その比率はより多いんだ。コキュー・タロスの氷は、お前たちの身体の内部まで浸食している」

「クソがァ。蒼流槍『ジブラ・ティア』、オレさまの身体を嚙み砕け!」
 細かい牙が無数に生えた槍が、蒼き海龍の身体や長い尾までをも噛み砕く。

「メディチ・ラーネウス……一体なにを!?」

「動かない身体だって、こうすりゃ動くのよ。覚悟しな!」
 蒼流槍を中心に、噛み砕かれたメディチ・ラーネウスの肉片が集まり、巨大なウツボのようになってギスコーネを襲った。

「グワアァァァァーーーーッ!」
 無数の牙にわき腹をえぐられ、吹き飛ぶギスコーネ。

「スマートじゃ無いっしょ、ラーネウス。身体丸ごと砕かなくたって、こうすれば済むっしょ」
 黄玉の魔王ペル・シアは、脚の裏から鋭く長い棘を生やし、ハイヒールのようにして地面から距離を取っていた。

「でも、ちょっぴり焦ったっしょ。破黄槍『バス・ラス』で、お仕置きっしょ!」
 針山の槍の無数のトゲが、ギスコーネに向け放たれる。

「ヤレヤレ、コイツらもまだ本気は見せて無ェみてぇだな」
 バルガ王子が、吹き飛んだ弟の前に立った。
トゲは黄金へと変化し、重さによって地面に落ちる。

「当たり前だろうが。オレらの力は、まだまだこんなモンじゃ無ェぜ」
「獲物には逃げられたみたいだしィ、アンタら2人くらい殺らないと立場ないっしょ!」

「へへ、アイツら、ちゃんと逃げられたか。最低限の目標は、達成だぜ」
 その頃、シドンやベリュトスは、スプラが展開した触手の槍の巨大パラソルで、ゆっくりと海に向かって落下していた。

「立てよ、ギスコーネ。お前の部下が、襲って来やがる」
「元部下ですよ、兄上。こんなコトになろうとは、思ってもいませんでしたがね」

 海底都市カル・タギアに生まれ育った2人の王子は、黄金と氷のそれぞれの剣を手に、2体の魔王に向って飛び掛かる。

「オデ、普段からあんまし動かないし、このままでもいいだか」
 橙玉の魔王ソーマ・リオは、呑気の闘いの様子を見守った。

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