ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP019

リベロと呼ばれる男

 ボールを持っている、カイザさんへの圧力(プレス)。
選択が正しいか解らないケド、ボクはカイザさんに向かって走り出していた。

「フッ、オレに来るか。悪くない、決断だ」
 カイザさんも、そのままボクに向かってドリブルを続ける。

 だケド、それを続けてくれるか解らない状況だ。
カイザさんがパスに切り換え、右脚のアウトサイドでロングパスを出されたら、バルガさんに通ってしまう可能性が高い。

「こっちだ、カイザ!」
 ボランチのスッラさんが、少し下がってボールを要求した。

 ……マ、マズい。
このままじゃカイザさんの選択肢が、さらに増えてしまう。

「簡単に、やらせはしないさ」
 ボクが心配していると、雪峰さんがスッラさんに着いてくれた。

「だったら、オレが切り開いてやンぜ」
 ネロさんが、ボクたちの右サイドに向けて走り出す。
左サイドバックのトラヤさんと絡んで、得点機を生み出そうとしているのかも知れない。

「ココは、任せるであります」
 雪峰さんと並ぶもう1人のボランチの杜都さんが、ネロさんに身体を当てながら、カイザさんからのパスコースを消してくれていた。

 みんな、流石だ!
ボクは、1人で戦ってるんじゃない。
人前で喋れないせいで、ずっと1人だったケド、今はボクより優秀な仲間が居るんだ。

 ボクは、カイザさんとマッチアップした。
カイザさんもボクを抜き去る気らしく、サイドステップをしながらボールを足裏で転がしている。

「これで、お膳立ては揃った。2枚のボランチは中央を開け、キミさえ抜いてしまえばゴールまで障害は無い状況だ」
 カイザさんが、言った。

 センターバックとしては、小柄なカイザさん。
その分だけ、足元の技術(スキル)がある。
リベロと呼ばれるのも納得の攻撃的なドリブルで、ボクを左右に揺さぶった。

 だケド、紅華さんよりドリブルに切れがあるワケじゃない。
なんとか粘って、最低でもボールを出させないようにしないと……。
ボクは、紅華さんをスカウトに行ったときのコトを思い出しながら、必至に食らい付いた。

「なるホド、大したディフェンス力だ。キミたちの監督が、キミをウチのエースに張り付かせたのもうなずける。だが、キミはバルガのマークを外れた。監督の戦術変更か、独自の判断かは解らんがな」

 ボクの独断を、是とも非とも断定しないカイザさん。
不安になったボクに、1瞬の隙が生まれる。

「ここだ!」
 ボールを軸足に当て、ボクの体制を崩すカイザさん。
右にボールを持ち出すと、そのままロングボールを入れた。

「やっと、ボールが来やがったぜ!」
 ゴールに飢えた肉食獣(ストライカー)が、ペナルティエリア内で飛ぶ。

「ここは、身体を当ててブロックです!」
「競り合いで負けても、シュートには持って行かせない!」

 イタリア1部リーグでも活躍したバルガさんに、身体能力では劣るものの、ボクより背の高い柴芭さんと亜紗梨(あさり)さんもジャンプした。
ヘディングでは競り負けるものの、なんとかシュートには持って行かせないコトに成功する。

 バルガさんのヘディングは、マイナス方向に出された。

「カ、カズマ。マーク外しちゃ、ダメね!」
 ベンチから、セルディオス監督の声が飛ぶ。

「あ……」
 ボクがマークしていたハズのカイザさんは、もうボクの周りには居なかった。

「ナイスポストプレイだ、バルガ!」
 勢いよく落とされたボールに、カイザさんが走り込む。

「うわぁぁぁ!」
 海馬コーチが、メタボリックな身体を揺らしながら必至に前に出るが、カイザさんのシュートが股間を抜いた。

「よし、これで2点のリードだ」
 ズレたキャプテンマークを直しながら、高く指を突き上げるカイザさん。

 ペナルティエリアに入るかギリギリから放たれたシュートは、ボクたちデッドエンド・ボーイズの、ゴール中央に決まってしまった。

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