復活の儀式
「さあ、貴方も祝いなさい。マーズさまの復活をね!!」
花びらのツインテールは変則的な軌道を描いて、ゼーレシオンに迫り来る。
「な、なにを言っているんだ、マーズはも……グアッ!!?」
フラガラッハを弾かれたボクには、大きな盾で防ぐしかなかったが、それを見こされ背後から攻撃を受けてしまった。
「あっけないモノね。もうサヨナラなのかしら?」
片方のツインテールで、ゼーレシオンの盾を掴んでる左腕を縛り、もう1方のツインテールの先に付いた光るトゲで、トドメを刺そうとする。
「艦長……クソ、この女!!」
プリズナーのバル・クォーダが、巨大な鎌とランスを両端に付けた武器で、ツインテールの攻撃を払い除けてくれた。
「ジャマをしてくれるわね。でも、この『センナ・ケリグー』は、簡単には倒されなくてよ」
けれども、バル・コーダの鎌槍の攻撃の前にツインテールは自らバラバラとなり、無数の花びらとなって宙を舞う。
「さあ、花びらの攻撃を受けるがいいわ」
全ての花弁が光のトゲを発生させ、バル・クォーダを襲った。
「チッ、このサブスタンサー、変則的な動きをしやがる!」
危険を察知したプリズナーは、一早く後退して格納庫から逃れる。
それしか、センナ・ケリグーの攻撃をかわす方法が無かったからだ。
「中々に賢しいわね。それとも、ハイエナのような生存本能がそうさせたのかしら?」
花弁が美しく、カーネーション色のサブスタンサーの周りを舞う。
「ナキアさん、止めてくれ。どうして貴女と戦わなくちゃいけないんだ!」
ボクはフラガラッハを拾い、身構えた。
「決まっているじゃない、宇宙斗艦長。貴方はわたしが愛したマーズさまを死に追いやった、艦隊の指揮官なのよ。これ以上に戦う理由があるかしら?」
「だけど貴女のお腹には、マーズとの子が宿っているんだろ。これ以上戦えば……」
「心配いらないわ。マーズさまは復活される。このコにも、父親の勇壮な顔を見せてあげられるわ」
光のトゲを発生させた花弁は、全方位から一斉にゼーレシオンを襲う。
「ナ、ナキアさん……マーズのクローンでも、造る気か?」
「クローンですって。あんなモノは、ただの劣化コピーよ。見た目が似ているだけで、完全に別物だわ」
「それが解かっていながら、どうして!?」
フラガラッハで、何枚かの花弁は撃破したものの、攻撃の全てを防ぎきるコトは出来ず、ゼーレシオンは各部にダメージを負う。
「言ったでしょう。マーズさまは復活されるのよ。わたしを愛してくださった記憶のまま、わたしを抱いてくださった美しい身体のまま、完全に生きていた頃と同じ状態でね」
「マーズさんの身体は、完全に消滅してしまったんだぞ。そんなコトが……可能なワケが!?」
ナキア・ザクトゥの感情の高まりと共に、激しさを増す花弁の攻撃。
流石のゼーレシオンも、徐々に後退を余儀なくされた。
「可能なのよ、宇宙斗艦長。タルシス3山の地下牢に幽閉されたわたしに、ある女が言ったわ」
「ある……女?」
「この宇宙は、アナログかデジタルか……と」
「宇宙が、アナログかデジタル……一体、なんのコトだ!?」
ナキアが言っている言葉の意味が、理解できないボク。
「わたしにも、彼女の言葉の意味は解らなかった。でも、宇宙がデジタルであるのなら、マーズさまは復活できるのよ!!」
センナ・ケリグーの花弁が、一斉に攻撃をしてきた。
「ガアアッ!!」
ゼーレシオンの盾で防ぐが、格納庫外へと弾き飛ばされる。
「さあ、見るがいいわ。マーズさまが、復活なさる姿を!」
カーネーション色のサブスタンサーも、『ナキア・ザクトゥ』の機外へと踊り出た。
「な、なにを……言って……」
「見ろよ、宇宙斗艦長!!」
「どうした、なにがあった!?」
背後を振り返ったボクの瞳に映ったのは、時空を切り裂き現れた、漆黒の巨大な艦の姿だった。
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