ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第06章・58話

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復活の魔女

 戦神マー・ウォルスの灼熱の腕によって、焼かれたハズのクーヴァルヴァリア。
けれども彼女はいつの間にか、漆黒のローブの女によって救い出されていた。

「オイ、ナキア。どう言うこった。マー・ウォルスの腕には、煤(すす)すら残って無ェぞ!?」
 マーズが、撃墜されたナキア・ザクトゥに詰問する。

「マ、マーズさま。その女こそが、マーズさまを甦らせた張本人なのです」
 頭部を失ったセンナ・ケリグーが、赤いサブスタンサーの背中に回り込み、隠れながら言った。

「……だが、どういうコトだ。あの女は、味方じゃ無かったのか!?」
「わかりません、マーズさま。どうしてあの女が、わたしの妹を……クーリアを助けたのか!?」
 人質を失った2体のサブスタンサーは、恋人同士のように機体を寄せ合う。

「こ、この女……まさか!?」
 髑髏のフェイスをしたサブスタンサーから聞こえる、プリズナーの声が僅かに震えていた。

「ああ。恐らくは……『時の魔女』だ」
 ゼーレシオンやバル・クォーダが身構える前で、漆黒のローブを頭までスッポリと被った女が、カルデシア財団のご令嬢を抱え宙に浮かんでいる。

「最も、アレが本体である確証は、何処にもありませんがね。それに『女』かどうか……人間なのかすらも、定かではありません」
 メリクリウスさんらしい見解が、水色のサブスタンサーから聞えた。

『ククク……お前らしい穿った見解だな、メリクリウスよ。確かにわたしは、時の魔女であり、時の魔女では無い存在……』
 漆黒のローブを纏った女が、機械的な声を発する。

「コ、コイツ、喋れるのかよ!?」
 アドレナリンの分泌度合いを高める、プリズナー。

「まるで、謎かけ論ですね。まさしく、『時の魔女」の名にふさわしいと言ったところでしょうか」
 水色のサブスタンサー『テオ・フラストゥー』が、12機の部下を従え身構える。

「余裕かましてる場合かよ。お前らは昔、コイツに手も足も出なかったんだろ?」
「ええ、そうでした。彼女は、我々人類の英知を超えた存在……」

「時の魔女は時空を切り裂き、援軍を呼ぶ恐れがある。全力を持って、排除せねばなるまい」
 黄金のサブスタンサー『アー・ポリュオン』を駆って、アポロが白い艦から戦場へと駆け付けた。

『アポロか……久しいな、小僧。100年ぶりと言ったところか?』
「フッ、確かにあの時のわたしは、サブスタンサーのエースパイロットとして浮かれ上がった小僧であった。だが、時は人を成長させる」

『わたしを前に、時を語るとは笑止よ。時の魔女は、時と空間を支配する』
 漆黒のローブが、火星の上空を吹き荒れる気流で、激しくはためいた。

「ク、クーリアの焼かれた手足が、スゴいスピードで再生されていってる!?」
 時の魔女が抱くクーリアの身体の細部まで、識別するコトが可能なゼーレシオンの高性能なカメラアイは、ボクの脳裏に驚愕の映像を浮かび上がらせる。

「こ、これが『時の魔女』の、能力なのか!?」
 焼かれた衣服はそのままだったが、炭化してしまった身体は、元の白く美しい肌を取り戻していた。

「あ、貴女はどうして、妹を助けようとするのです。冷たい地下牢で、子を産み死を待つだけだったわたしは、貴女に救われた。貴女は、わたし達の味方では無かったのですか!?」
 タルシス3山基地の地下牢で、自分を救ってくれた恩人に真意をただすナキア。

『ククク……この娘には、わたしの依り代となってもらう』
 魔女はそう告げると、ローブの中にあったであろう女性的な身体が消え去る。

『お前たちには約束通り、この太陽系をくれてやろう』
 漆黒のローブは、クーリアの身体の上に落ちた。

……と同時に、真珠色の髪にピンク色のクワトロテールをした少女が、カッと目を見開く。

「ク、クーリア!?」
 宙に浮かんだままのクーリアは、ボクたちの目の前で焼けて煤けた衣服を完全に脱ぎ捨てると、漆黒のローブを身に纏った。

「宇宙斗艦長……」
「い、意識が戻ったのか、クーリア。ボクが解かるか?」

「ええ、もちろんです。お慕い申し上げる、男性(ヒト)なのですから……」
 クワトロテールの少女の目が、赤く光る。

「宇宙斗艦長。共にこの宇宙を、統べましょう……」
 クーリアは、真っ赤に輝く妖しい瞳で、ボクを見つめた。

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