甦りし仲間
「こ、これは……魔王たちが、黄金に変わっただどッ!?」
目の前で黄金像にされてしまった3体の魔王に、動揺を隠せない魔王アクト・ランディーグ。
「お袋が、命懸けで引き出してくれた力だ。この黄金剣『クリュー・サオル』は、魔物であろうがどんな生物をも黄金にするぜ」
王子の構える金色の剣は細い刀身で、束には太陽を思わせる装飾がなされている。
柄には巨大なエメラルドが、光り輝いていた。
「メディチ、ペル、ソーマの3人を、瞬時に沈黙させてしまうとは。サタナトス様に報告せねば……」
背を向け、崩壊する海底都市から堕ち延びようとする、紫色の海龍の将軍。
「待てよ、アトラ。その前にテメーには、聞きて置きたいコトがある。親父はどうした。海皇ダグ・ア・ウォンは、このカル・タギアに居るのか?」
「魔王として生まれ変わった我に、答える義務などない。いずれ解るコトだが、その時はバルガ王子……アナタの顔も絶望に歪むであろう」
そう吐き捨てるとアラトは、崩れた泡のドームから流れ落ちる瀧に紛れて姿を消した。
「お……王子……」
「じょ、女王陛下は……ご無事か?」
すると神殿の瓦礫に埋もれ、命の火を消したかに思われた海王パーティーの面々が、意識を取り戻す。
「お、お前ら。生きていたのか!?」
王子は慌てて瓦礫を跳ね除け、埋まった仲間たちを助け出した。
「なあ、ベリュトス。オレたちゃ確か、深海の宝珠を襲う7将軍たちと戦っていて……」
「いきなりデカい怪物に変身されて、倒されたハズだよな、兄貴?」
いかつい顔を見合わせ不思議がる、ビュブロスとベリュトスの漁師兄弟。
「せやで。ワイら、魔王に潰されて死んだんかと思っとったわ」
「たぶん、死んだんだと思います……」
「は? ナニ言うとるんや、ティルス。ワイらこうして、生きとるやないか?」
王子の側近である少女の、言葉の意味が解らない腕利き料理人。
「最期にお袋が、お前らを助けてくれたんだと思うぜ……」
バルガ王子は、メンバーに背を向け深海の宝珠を見上げる。
「で、では、女王陛下はすでに!?」
「ああ、逝っちまったよ、シドン。オレに、新たな力を授けてな……」
若き海洋生物学者は、王子の背中が泣いているように感じた。
「我らを救うために、女王は命まで失ってしまわれた。今、我らに出来るコトは、ありますか?」
「とりあえず、地上から来た客人を助けねえとだな。この国の民は海ン中でも生きられるが、地上人ともなるとそうも行くまい」
「客人を見殺しにしたとあっては、海の民の名折れだからな」
「それで7海将軍(シーフォース)は、あと何人残ってるんスか?」
「3体は、そこで金の塊になってやがる。あと4体だ」
漁師兄弟の問いに、王子は剣を3体の魔王へと向ける。
「メディチ・ラーネウスさま、ペル・シアさま、ソーマ・リオさまが、金の像に!?」
「では、王子の剣に宿った能力とは、もしや……」
「そうだぜ、シドン。お袋は、オレに黄金の力を遺してくれたんだ」
王子と海皇パーティーのメンバーは目を閉じ、亡き女王に哀悼の意を示した。
「サタナトス……親父や7海将軍を魔王にし、お袋を死に追いやったキサマを、オレは絶対に許さねェ」
崩壊した海底神殿にて、海に消えようとする故郷に誓いを立てる、王子。
~時間は、少し遡る~
クーレマンス、リーセシル、リーフレアの3人の覇王パーティーは、街の市場の中心でガラ・ティアと戦っていた。
「クソ、泡の攻撃ってのが、こうも厄介だとはな。いくらヴォルガ・ネルガで喰らったところで、無限に湧き上がって来やがる」
全身筋肉の巨漢は、大喰剣で泡を全て飲み込もうとするも、泡の生まれるスピードの方が早かった。
「わたくしの泡の恐ろしさが、ようやく解ったかしら。さあ、泡の激流でシェイクされなさい!」
ガラ・ティアの珊瑚色の槍が生み出す泡の渦が、クーレマンスを飲み込んだ。
「ブガアッ!!!」
バブルパルスの膨張と圧縮が、強靭な筋肉鎧をも突き抜けてダメージを与える。
「ク、クーレマンスさんが、劣勢だ。こんなときに、ボクは何も出来ないのか!」
因幡 舞人は岩場に隠れながら、機能しなくなった自らの剣を見ながら嘆いた。
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