ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・32話

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大魔王の力

 海皇パーティーの目の前で、ドロリと溶け落ちる巨大なタマゴ。
 現れた巨大な腕が、バルガ王子を目掛けて振り下ろされた。

「お、王子ィィ!?」
 ホールの天井から吊り下げられていたタマゴを、解き放ったティルスが悲鳴のような声を上げる。
巨大な蒼い鱗に覆われた腕は、王子の居た場所の金属の床を破壊した。

「あんなんで、やられるかよ、ティルス」
 バルガ王子は、側近の少女の傍らに着地する。

「しっかし、王子。どうしやす。海皇さまは……」
「こりゃあ、とんでも無ェ化け物にされちまってるぜ」
 宮殿の吹き抜けホールに聳え立つ、蒼い巨体に驚愕する、ビュブロス、ベリュトスの漁師兄弟。

「7海将軍のヤツらが魔王にされてもうた時より、何倍も巨大やで」
 料理人見習いのアラドスの目にも、異形の大魔王の姿が映った。

 オレンジ色のヒレの付いた腕は4本あり、タコやイカのような吸盤の着いた触手が無数に、胸の辺りからマントを纏うように生えている。
頭から背中にかけても翼のようなヒレを持ち、手足の指の間には水かきがあった。

「オヤジ……こんな姿にされちまいやがって!」
 ティルスを抱え、大魔王と化したダグ・ア・ウォンの腕による連続攻撃をかわす、バルガ王子。

「王子、お気を付けください。双子の司祭さまから預かった宝珠が、余りの強大な魔力により砕けてしまいました。7海将軍たちが、それぞれの槍を媒介とし魔王にされたのに対し、海皇様は宝剣『トラシュ・クリューザー』を御身に宿しているモノと思われます」

「マジかよ、シドン。それじゃあ少なくともオヤジを1度は倒さねェと、トラシュ・クリューザーは取り出せないってコトか!?」

「お、王子。ダグ・ア・ウォンさまが!!」
 バルガ王子の腕に抱えられたティルスが、大魔王がなにかしようとしているのに気付く。

 4本の腕をX字に伸ばし、それぞれの腕に魔力を蓄積し始めた。
すると宮殿の金属で出来た床が、大きく揺れ始める。

「うおァ、こりゃあ地震だぜッ!?」
「クソ、立ってられねェ!」
 漁で鍛えた兄弟が立っていられないホドの激しい揺れが、深海の宮殿を襲った。

「なんや、上の方でもゴツい音がしよったで。こ、ここは、リヴァイアス海溝の真下に造られた街なんやろ。もし、上の水が押し寄せて来よったら……!?」

「そうだな、アラドス。我々は、一瞬にして水圧に押しつぶされるだろう。深海の魔法も、役には立つまい。リヴァイアス海溝の水圧に耐えられるのは、ダグ・ア・ウォン様だけなのだからな」
 四つん這いのアラドスに対し、浮遊魔法を自身にかけたシドンが、冷静に答える。

「オヤジをどうにかして、止めねェと。シドン、オレたちにも浮遊魔法をかけてくれ!」
「心得ました」
 海洋生物学者は、バルガ王子とティルスに、浮遊魔法をかけた。

「行くぞ、ティルス。まずはお前の氷の剣で、オヤジの動きを止めてくれ」
「了解です、王子。『コキュー・タロス』!!」
 蒼い肌に青緑色の髪をした少女が、氷の剣を振りかざす。

 床や天井を伝った氷が、大魔王の4本の腕を氷漬けにした。
けれども氷はひび割れ、ダグ・ア・ウォンが再び動き出そうとしている。

「『クリュー・サオル』!!!」
 王子が、黄金の長剣で上空から強力な一撃を放った。

「オヤジよ。しばらくの間、黄金となって眠れ!」
 眩い光が、大魔王を黄金像へと変化させる……かに思われた。
けれども王子の一撃は、渦を巻く巨大な4本の水柱によって阻まれる。

「な、なんだとォ!?」 
「王子、水柱で攻撃して来ます!」

 4本の水柱は、竜巻のように周囲の絵画や装飾品を巻き込みながら、海皇パーティーの6人を次々に飲み込んで行った。

 深海の宮殿は、地震によって徐々に浸水し始める。
やがて海の底へと、消えようとしていた。

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