ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第06章・29話

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太陽系の長

 人類が誕生して以来いかなる大国が覇を唱えようと、その政治の中心は常に地球だった。

 けれどもボクが眠っている1000年の間にその常識は崩れ去り、今や政治の中心は火星のオリュンポス山に築かれた巨大都市群アクロポリスに聳える、アテーナー・パルテノス・タワーとなっていた。

「ここは太陽系最大の意思決定機関、ディー・コンセンテスの中枢でしてね。太陽系に置ける様々な地域の代表が居住し、話し合いによって人類全体の意思を決定しているのですよ」
 隣を歩くメリクリウスさんが、改めて組織の説明をしてくれる。

「確か光の速度であっても、太陽系に散らばった人類同士が通信するには、遅すぎるんでしたよね」
「ええ、仰る通りです。光通信であっても、木星辺りの企業国家と通話するのに、こちらが話した最初の一言が相手に届くまで、30分もかかってしまいますからね」

 ボクは、アテーナー・パルテノス・タワーに足を踏み入れた。
パルレノン神殿を想起させる外面と同様に、内部のデザインも大理石の石柱が並び、床も白い大理石が敷き詰められている。

「ここが中枢とされた要因は、他にもあります。現時点での人類の支配地域は主に、金星圏から土星圏までと言ったところですが、メインは火星圏と木星圏、そしてその間の広大な小惑星群なのです」

「なる程。それらの地域との行き来に便利なのは、地球では無くむしろ火星なんですね」
 内部は1階から10階辺りまでが吹き抜けとなっており、受付らしき場所をスルーして通り過ぎると、目の前に巨大な女神像が現れた。

「この女神像……やはり地球のパルテノン神殿と同様、アテナなのですか?」
「ええ、そうです。ローマ神話では、ミネルヴァ。まるでこの火星が、自分たち地球人の物だと言わんばかりの光景でしょ?」

 ボクは、吹き抜けに聳える女神像を見上げた。
本物と違って、かなり近未来的なアレンジが施されている像は、黙して何も語らない。

「では、会議に参加される艦長とクーヴァルヴァリアさん、それに護衛の方々以外はここまでとさせていただきます」

「え~、そんあァ!」
 栗毛の少女が、不満を顔いっぱいに表現した。

「コラコラ、セノン。仕方ないだろ。アタシら一般市民が、タワーに入れただけでも凄いコトだぜ」
「まさに奇跡……」
「テロとか色んな対策で厳重に警備されてるから、近寄るコトも出来ないからね」

 ボクたちは女神像の前で、セノンや真央をたちと別れエレベーターに乗る。
護衛として付いて来たのは、豪華宇宙客船セミラミスのときと同じメンバーだった。

「タワーの最上階が、ディー・コンセンテスの会議が開かれる場所です」
「そこに、太陽系の色んな場所の代表が、集って意思を決定する……と?」

「オリュンポスの12神にちなんで、12人の代表が集い話し合いをします。最も今は、11人になってしまいましたがね」

「ス、スミマセン」
 その1人を宇宙の塵にしてしまった艦隊の長であるボクは、言葉に困って謝った。

「いえいえ、お気になさらずに。あれはマーズが、勝手に暴走し戦端を開いたのがいけないんです。艦長はただ、それに対処されただけですからね」

 短い会話を交わしてるうちに、エレベーターは3000メートルのタワーを登り切り、最上階へと達している。

「どうぞこちらへ」
 メリクリウスさんの合図と共に、会議場であろ場所の真っ白な両開きのドアが開かれる。

「ここが今の……世界の中心なのか」
 ボクは緊張しながらも、足を踏み入れた。

 部屋の中には、黄金に輝く12の荘厳な椅子が円形に並び、それぞれに主が座っている。
中央には巨大な円卓が存在し、その上部はスクリーンになっていた。

 その1つの太陽の装飾が施された椅子には、アポロが座っている。

「ようこそ、お越し下さいましたね。群雲 宇宙斗艦長」
 1人の女性が立ち上がって、ボクに言った。

「わたくしは、ミネルヴァ。太陽系全ての人類の長です」

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