ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第08章・12話

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3姉妹との再会

「どうか、安らかにお眠り下さい。ミネルヴァさん……」
 僅かな期間とは言え、共に地球に降り死線を潜り抜けた、クワトロテールの女性に思いをはせる。

「……ん?」
 セノーテの深淵に消えたミネルヴァさんの髪飾りが、一瞬だけ光ったような気がした。

「どうしたんですか、おじいちゃん?」
「イヤ、なんでもないよ」
 ボクは、セノンに背を向けていた。

「有難うございます、宇宙斗艦長。ミネルヴァも、地球に僅かばかりに残された美しい水に眠れて、喜んでいるコトでしょう」
 太陽系最大の意思決定機関に属していた男が、ボクに礼を言う。

 ディー・コンセンテスに置いて、ミネルヴァは組織の筆頭(トップ)であり、地球の意志を組織に反映させるために、200年もの間働いて来た。
仕事を終えたミネルヴァに対する、尊敬と遺愛を込めた言葉だった。

「ええ。ですが本当にミネルヴァさんが望んでいたのは、本来の青い空と海、緑の木々に覆われた、美しい地球だったのではないでしょうか」

「今の地球には、望むべくもありません。ですが彼女の遺志として、それは目指して行かなければならない課題でしょう」

「ま、今や火星だって空気もあって、川が流れて人が住める場所になってんだ」
 火星圏生まれの、真央が言った。

「地球だって、そのウチなんとかなるかも……」
「アタシのルーツであるハワイだって、そのウチ海の中から顔を出すかもね」
 ヴァルナとハウメアも、楽観論を唱える。

「気楽な嬢ちゃんたちだぜ。だが地球を元に戻すんなら、それくれえの気構えの方がイイのかもな」
 ドス・サントスは、豪快に笑った。

「ところで、ドス・サントスさん。ボクたちの力を、借りたいとのコトでしたが?」
「ああ。実は、セノーテ候補地の1つに、敵対的なアーキテクターの部隊が進入してよ。占領されちまってんだ。ウチのサブスタンサーの部隊を、向かわせたんだが……」

「ギャハハ、あえなく返り討ちってか?」
「いい加減になさい、プリズナー。それより、部隊の生き残りは居るのですか?」

「ああ。37機の前衛部隊は全滅したが、後衛バックアップの9機だけは早めに戦線を離脱して、なんとか帰還できた。パイロットに、会ってみるかい?」
「はい。敵の戦力がどんなモノかは、知って置きたいですからね」

「もっともだ。付いて来な」
 ドス・サントスの背中を追って、セノーテの吹き抜けの縦穴に廻らされたスロープを登る。
竪穴の壁に掘られた住居や店を通り過ぎ、それらと似たような施設に入った。

「ここはサブスタンサーのパイロットたちの、詰所だったところだ。今は、ご覧の有り様だがよ」
 部屋は静寂に包まれ、パイロットたちが使っていたであろう、ロッカーだけが並んでいる。

「奥に、生き残ったヤツらが眠っている。全員女だからよ。悪いが、先に見てきてくれ」
 ドス・サントスが、セノンや真央に向けて言った。

「わ、わかりました」
「艦長、覗くんじゃねぇぞ」
「の、覗くかよ、真央!」

 4人の少女は、救護室と思われる部屋へと入って行き、しばらく経って出て来る。
了解を取って部屋に入ると、中にはカプセル型のベットがいくつも並んでいた。

「なッ……ショチケ、マクイ、チピリ!?」
 部屋に居たパイロットは全員が少女たちで、ベットに寝たり上半身を起こしたりしている。
夢に出て来たショチケ、マクイ、チピリの3姉妹と、3人ずつがそっくりな顔や肌の色をしていた。

「ど、どうしたんですか、おじいちゃん?」
「また幻覚でも、見てんじゃねェのか?」

「あ……イ、イヤ。どうやら、幻覚では無いみたいだ」
 9人の少女たちは、ショチケ、マクイ、チピリに似た顔立ちではあるものの、よく見ればけっこう3姉妹とは違っていたし、髪型も全員が編んだ髪をクワトロテールにしている。

「貴方が、群雲 宇宙斗だね?」
 ショチケに似た、3人のウチの1人が言った。

「ボクを、知っているのか?」
「イヤ、まだ伝えてねェんだがよ。どうして知ってんだ?」
 困惑する、ドス・サントス。

「母の名前を、知っていたからさ。アタシの母の名前は、ショチケ」
 ダークブラウンの肌に、茶色とピンク色の髪を編み込んだクワトロテールの少女は、紫色の瞳にボクを映していた。

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