ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第06章・28話

f:id:eitihinomoto:20190804105805p:plain

人類の叡智

 MVSクロノ・カイロスが、火星へと降下する。
艦橋から見える赤い大地に巨大な山が現れ、徐々に大きさを増し間近に迫った。

「アレが、オリュンポス山か。やはり、太陽系の惑星最大の山ってだけあって、凄い大きさだな」
 ボクはその余りの大きさに、圧倒される。
富士山は元より、エベレストすらも余裕で凌駕する高さと大きさだから、当然と言えば当然だ。

「だけど山全体が、基地みたいになってるな。山のあちこちに街が在るし、かなりの人が住んでそうだ」
 MVSクロノ・カイロスが、着陸態勢に入る。
点在する街からは光が漏れ、この時代の人々が暮らしているのだと感じさせられた。

「山裾(やますそ)に広がる街は、アクロポリスって呼ばれていて、一般の人間が大勢住んでるぜ」
「火口を囲む様に、12の区画に切り分けられていて……」
「それぞれの街には、光道12星座の名前が割り振られてるんだ」

 真央、ヴァルナ、ハウメアが、オリュンポス山の知識をボクに伝える。

「確かオリュンポス山の火口って、富士山がすっぽり収まる大きさだったよな」
 ボクたちを乗せた巨大な宇宙船が、その火口の上にランディングギアを降ろした。

「ええ。元々の山頂には、長径80キロ、深さ3・2キロに及ぶ火口がありましたからね。そこをアクロポリス宇宙港に改造したのですよ。現在のオリュンポス山の火口は、ドッグやら倉庫やら様々な施設がたくさん詰まっています」

「そうなんですか、メリクリウスさん。地球じゃ火山を基地になんて考えられないケド、地殻活動か停まっている火星じゃ、それも可能なのか」
「まあそうです。驚きましたか?」

「この時代で目覚めてからは、驚くコトばかりですよ。でも21世紀のボクは、まさか火星のオリュンポス山を本当に自分の目で見れるなんて、これっぽっちも思ってなかった」

 宇宙服を着たボクは再び、ブリッジをヴェルに預け艦を降りる。
降り立ったアクロポリス宇宙港は、標高20,000メートル以上の高所であり、空を見上げても真っ暗な闇に星が輝く宇宙が見えた。

「おじいちゃん、チョット待ってください。また置いてけぼりなんで、イヤだよ」
 ピンク色の可愛らしい宇宙服の女のコが、駆けて来る。

「セノンだけ抜け駆けなんて、ズルいぞ!」
「火星に降りるの、久しぶり……」
「会議の間にアクロポリスで観光なんて、ダメかな?」

「真央たちまで……仕方ないな。メリクリウスさん、構いませんか?」
「ええ。ですが会議への参加は、ご遠慮願いたい」
 困ったモノだと、いった顔のメリクリウス。

 するとボクたちの前に、観光バスみたいな大型車が止まった。

「お乗りください、宇宙斗艦長。他の皆さまも、どうぞ」
「はい。それじゃみんな、行こう」

 結局のところ、ハルモニア女学院の女生徒たちは、クーリアとその取り巻きも含めて全員参加となる。
大型車の中は、遠足か社会見学に向かうバスを彷彿とさせた。

「宇宙斗艦長。正面に見えて来たのが、アテーナー・パルテノス・タワーです」
 艦隊戦が勃発した直後というのもあって、離発着する宇宙船も無いアクロポリス宇宙港。
その中央部に、ひと際巨大な塔が聳え立っている。

「アレが……今の太陽系の、中心の建物……」
 アクロポリスの丘に建つパルテノン神殿を、幾層にも積み上げた様なデザインの巨大タワー。

「3000メートルもある、巨大な塔なんですがね。建てた場所が場所だけに、あまり巨大とは思われていないみたいです」
「比較するのがオリュンポス山じゃ、そうなってしまうんですね」

「人類の叡智ってヤツぁ、そんなモンかも知れませんね。深淵なる宇宙に比べれば、このオリュンポス山ですら、ミクロの塵にも満たないでしょうに」

 メリクリウスさんの吐露に、ボクは言葉を返さず宇宙を見上げた。

「黒乃……キミがこの景色を見れていたら、なんと言っただろうか?」

 ボクたちを乗せた大型車は、巨大なタワーへと吸い込まれて行った。

 前へ   目次   次へ