ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第06章・19話

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疑念の査問会議

「アポロさん。時の魔女とは、一体何者なのでしょうか?」
 ボクは、率直な疑問をぶつけた。

「白々しい物言いだな、宇宙斗艦長。キミの艦は、時の魔女が創ったのだろう?」
「はい、MVSクロノ・カイロスとは、ボクが命名したモノですが、ボクはあの艦について殆ど何も知らないんです」

「フッ、下らん出まかせだ。それを信じろと?」
「流石に無理でしょうね。でもボクは、信じられるかどうかは関係なく真実を話します」

「ほう。では、伺いましょうか。宇宙斗艦長の言う、真実とやらを」
 メリクリウスは、アポロよりは中立寄りの立場だった。

「はい。まずボクは、知っての通り冷凍睡眠者(コールド・スリーパー)です。ある少女に誘われて、地球のとある街の山奥の坑道跡で、1000年の眠りに就きました」

「1000年前の人だなんて、驚いたわ。ロクに冷凍睡眠の技術も無い頃ではなくて?」
「セミラミスさんの言う通りです。だから、ボクを未来へと誘った女のコは、この時代へは辿り着けませんでした」

「可哀そうに……でも、貴方だけでも生きていられたのは、奇跡だわ」
「1000年後、ボクは火星の衛星フォボスの採掘プラントの地下深くで、目覚めました」

「宇宙斗艦長は、地球の山の中で眠っていたのでしょう。それがどうして、フォボスに?」
「ボクが寝ている間にカプセルが運ばれたのは確かでしょうが、どういった経緯でそうなったかまでは、残念ながら解りません」

「フムゥ、なる程……」
 ボクに質問をしたメリクリウスは、経緯を推察している感じだった。

「わたくしたちハルモニア女学院の生徒は、火星開拓の歴史を学ぶ為にフォボスへと赴き、そこでプラント事故に巻き込まれました」
 クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダは、後ろに座る3人の少女たちを見る。

「はい。プラントを見学していたわたし達を、いきなり大きな爆発が襲ったんです」
「プラントは一瞬で炎に包まれ、逃げ遅れたわたしたちは、避難小屋に入ったのですが……」
「大きな岩に押し潰され、死んじゃうかと思いましたァ」

「ボクが目覚めたのも、実はその時なんです。事故のあった現場から落下して来た、セノンと言う少女によって起こされました」

「宇宙斗艦長は、避難小屋に閉じ込められたわたくしたちを、必死の想いで救い出してくれたのですよ」
 クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダは、許嫁の顔に鋭い視線を送った。

「わたしとて、キミを助ける為にある男たちを派遣したのだが……どうやら、人選を間違えた様だ」
「ケッ、そいつァ悪かったな」
 脚を組み悪態を付く、プリズナー。

「だが、コトは単なる旧式のプラント事故では、収まらなかった。クーリア……キミたちは謎の艦によって拉致され、木星圏へと連れ去られてしまったのだからな」

「ボクも、拉致をされた1人です。当然ながら、その時のボクは艦長ではありませんでした」
「苦しい言い逃れでは無いか、宇宙斗艦長」
 アポロはあえて、ボクを艦長と呼んだ。

「ボクやクーリアたちは、ボクの60人の娘たちによって拉致されました。娘たちの話では、目的はボクを艦長にするコトだった様です。そしてボクは、艦の人工知能によって、艦長に任命されました」

「それも、可笑しな話じゃないですか。1000年間も目覚めずに眠っていたキミに、60人もの娘が居ると言うのもそうだし、その娘たちが時の魔女が建造した艦の乗組員(クルー)だったと言うのもね」

「娘たちを産んだのは、時の魔女ですからね。最も……」
「『創り出した』と言う意味なのは、解ってますよ」
 メルクリウスは、聡明さを発揮する。

「もし、貴方の言っているコトが真実ならば、貴方は過去に時の魔女と会っている。最も、貴方が眠っている状態の時でしょうが」

「下らん戯言だ。真実を言っているとは、到底思えない」
「アポロ、ボクにはそうは思えません。嘘を付くにしても、あまりに荒唐無稽な話じゃないですか?」
「1000年も昔の人間だ。嘘を付くレベルも、低いのであろう」

「いいえ、もっと注意深く観察するべきです」
「メリクリウス。お前はどうしてそこまで、古代人などに肩入れする?」

「決まってるでしょう。彼が、時の魔女の正体を知る為の『鍵』だからですよ」
 男は、金色の髪を掻き上げた。

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