神さまの背番号
「ええええええええーーッ!?」
ボクは思わず、大きな声で叫んでいた。
「オオ。珍しく一馬が、喋ったぞ」
「いつもクールな御剣隊員にしては、珍しいな」
「カズマって、ほとんど表情変えないモンな」
え……驚くとこ、そこ?
だって、ボクが10番なんだよ。
こんなボクがエースなんて、おかしいよね!
「それじゃあ、スタメン発表するね。ゴールキーパーは仕方ないから、海馬で行くよ」
「ういっス」
うわ、何事も無かったかのように、進行されちゃった!
「フォーメーションは、3-6-0ね」
ふえ!?
「なに言ってんだ、セルディオス監督!」
「そんなフォーメーション、聞いたコト無いぞ!?」
「それ以前に、1人足りないのですが?」
「まあ、落ち着くね。残念ながら、相手はかなりの格上ね。中盤を厚くしてボール取る、必要ね」
「ですが普通は、ディフェンスを厚くするべきなのでは?」
ボクもそう思うよ、雪峰さん。
「タブン、それじゃ止められないね。だから出来る限り高い位置、ボール奪うね」
「でも、ゼロトップってのは、引き分け狙いなのか?」
「違うよ、紅華。トップの位置全てが、広大なスペースね」
「アン、一体どう言うこった。解るか、龍丸?」
「ウム。どうやら誰かの、陰謀である可能性が高いな」
野洲田さんの言葉を受けた、龍丸さんが真顔で言い放った。
「まず注目すべきは、ゼロという数字。この数字にどんな意味が含まれているか、探らねばなるまい」
「オイオイ、また始まったぜ。龍丸の、なんでも陰謀論」
なんでも陰謀論って、なに!?
「ゼロとは、古代インドにて発見された数字と思っている人間も多いが、発祥はあのメソポタミアなのだ。メソポタミアと言えば、アヌとキが生み出したアヌンナキ。つまり……」
「な、なあ。この人、いきなりなに言い始めたんだ!?」
「気にすんな、クロ。付き合っても無駄だから、先進めてくれ」
紅華さんが、監督に目配せをする。
「そ、そうするよ。例えばブラジルが、ワールドカップで使ってたシステム、4-4-3ね」
「今度は1人、多い気がしますが?」
「マジックじゃねえんだからよ、柴芭。明らかに多いぜ」
「種明かしすると、3人のフォワードのポジションの内、右か左のどちらかに人を置かないね」
「それってただの、ツートップじゃんか?」
「イヤ、黒浪。ツートップは普通、中央に等間隔で並ぶ」
「簡単に言えば、センターフォワードと左フォワードか、センターフォワードと右フォワードのどちらかなのでしょうね」
「な、なるホド、随分と変った、フォーメーションだな」
「1970年は左を、1982年は右を開けてたね。1970年は、優勝してるよ」
「でも、どうやって勝てたんだ?」
「トスタンが開けたスペース、ペレがパス出して、ジャイルジーニョ決めたね」
「ペレって、あのペレか?」
「そう、サッカーの王さまペレね」
……1970年のワールドカップ、ペレはメキシコで神になったんだ。
「あえて開けっ放したスペース使こうて、ブラジルは優勝したんやな」
「つまりオレらドリブラーに、そのスペース使えってコトっスか?」
「そうね、紅華。フォワードの居ない、完全に開いたスペースね」
「にゃるホドォ、これは脚が鳴るぜ」
「オレさまの前に、広大なスペース……中々旨そうな、獲物じゃんか」
2人とも、メッチャ嬉しそうだ。
「メンバー発表、続けるよ。センターバックは、龍丸、野洲田、亜紗梨」
「ウム、陰謀の主犯格が見えたのだな」
「イヤ、その話もういいから」
「アハハ……了解で~す」
「中盤は6枚、ここでボール取って行くよ。トリプルボランチに、雪峰と杜都と柴芭」
「はい」
「肯定であります!」
「承りましょう」
「右のミッドフィルダーに黒浪、右に黒浪、中央に金刺ね」
「オーケー」
「オレさまのスピード、見せてやるぜ」
「ワイの初陣や。気張ったるでェ」
アレ、ボ、ボクは……?
「そう言や、1人足りないのはどうすんだよ」
「残ったのは、一馬だな」
「まさか、10人で戦う気やないやろな?」
「カズマは、特にポジションを制約しないね。自分の判断で、好きにプレーするよ」
い、いいの?
「なんだ、そう言う意味かよ」
「ですがポジションを固定しないとは、思い切った判断ですね」
紅華さんと、柴芭さんが言った。
「こればかりは、オーナーの判断よ」
「く、倉崎さんの?」
「確かに倉崎さんも、チームではポジションフリーに近いですが」
「一馬。お前は、ペレのポジションだ」
ボクの背中には、神さまと同じ番号が入っている。
「チームを勝利に、導いて来い!」
その言葉に、ボクは大きく頷いた。
前へ | 目次 | 次へ |